プロムスのベートーヴェン・ツィクルス4

バレンボイム/ウェスト=イースタン・ディヴァン管のベートーヴェン・ツィクルス第4夜です。
その前に他愛もないこと。このオケ、無理に日本語訳すれば西東詩編オーケストラということになります。字を見ずに音だけ聞くと「さいとうしへん・オーケストラ」ということになって、何となく「さいとうきねん・オーケストラ」と間違いそう。ま、単なるおやじギャグですけど・・・。
ベートーヴェン+ベートーヴェン、2世紀を隔てた革新的音楽の組み合わせ第4弾は、

≪Prom 13≫
ベートーヴェン/交響曲第8番
ブーレーズ/Anthemes 2
     ~休憩~
ベートーヴェン/交響曲第7番
 管弦楽/ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団
 指揮/ダニエル・バレンボイム
 ヴァイオリン/マイケル・バレンボイム
 電子音/IRCAM

ブーレーズの第5作目は、アンセーム・アンを発展させたアンセーム・ドゥーで、今回がプロムス初演。
第2夜で聴いたクラリネットと電子音のディアローグと同様、ヴァイオリン・ソロのナマ演奏に、これを録音して電子処理した音をスピーカーから出して混ぜ合わせる趣向の作品です。西東詩編管のコンマス、マイケル・バレンボイムと、IRCAMの技術者ジルベール・ノウノとジェレミー・アンローの共同作業。

全体は20分ほど、大きく6部分から構成され、全体は通して演奏される単一楽章。ブーレーズが子供時代に体験した詩編の歌唱がイメージの源になっているそうで、冒頭などはグレゴリアンのストローフ形式を模しているのだとか。
第2部のピチカート、第3部のグリッサンドなど聴いていて構成も判り易く書かれています。第6部が全体の半分を占める大部。
これだけ纏めてブーレーズを聴いてくると、何となく馴染めるようになってくるから不思議じゃありませんか。最後の締め括りにナマのヴァイオリンがガキッ、と音を止めるところも格好良く聴こえてきましたね。

最初に演奏された第8番。第1楽章コーダの第95小節にティンパニを加筆していたのでアレッ、と思いました。繰り返しの際も同じでしたから、間違いではなく意図的な処置でしょう。バレンボイムには珍しいこと。

第7番は楽章間に休みを置かず、全体を一つの作品として一気に演奏したのは驚き。客席は咳払いも身動きも出来ず音楽に集中することになります。
バレンボイムは多分これがやりたかったんでしょうね。第9を残したツィクルスの締め括りに集中力を高めて頂点に持って行く。ここで気分を開放し、二日間の冷却期間を置いて第9を歌い上げるという手法でしょう。言葉は不適切かもしれないけれど、実に計算高い音楽家です、バレンボイムは。
第3楽章第1スケルツォでは、普通はやらない後半のリピートを実行する癖に、トリオの反復は一切やらない。

結果、客席は大変な盛り上がりでした。

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