スコットランドの音楽家たち

前回は北アイルランドの音楽、演奏家たちのプロムスでしたが、8月5日はスコットランドの音楽、演奏家たちのコンサートでした。

≪Prom 31≫
ジェームス・マクミラン/Fanfare Upon One Note (ロンドン初演)
ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲
ブルッフ/スコットランド幻想曲
     ~休憩~
R.シュトラウス/交響詩「ドン・ファン」
テーア・マスグレイヴ/ネス湖~スコットランドからの絵葉書(BBC委嘱、世界初演)
レスピーギ/交響詩「ローマの松」
 管弦楽/BBCスコティッシュ交響楽団、スコットランド・ナショナル・ユース管弦楽団
 指揮/ドナルド・ランニクルス
 ヴァイオリン/ニコラ・ベネデッティ

Prom 27 で登場したBBCスコティッシュ交響楽団が、一日置いて首席指揮者ランニクルスと共に再登板。今回はスコットランドのユース・オケとの共演です。北アイルランド・チームと同じ趣向。
スコットランド・ナショナル・ユース管は1979年創設。分担はブルッフがユース管、シュトラウスとマスグレイヴの新作をBBCスコティッシュ響が夫々単独で演奏し、他は両オケの合同演奏でした。

ランニクルスはエディンバラ出身ですから、彼もまたスコティッシュ。ヴァイオリン・ソロのベネデッティは日本でも聴けましたが、これまたスコットランド出身の美人ヴァイオリニストですね。ブルッフを弾くには最適の人かも。彼女自身、このユース・オケの卒業生でもあります。ここから巣立った音楽家では他に、五輪の開会式でソロを披露した耳の不自由な打楽器奏者デーム・イヴリン・グレイニーも世界的にソロ活動をしています。日本でも妙技を披露してくれたのは記憶に新しい所。

ロイヤル・ボックスには皇室からも臨席されていたようで、先ずは国家演奏で開始されます。
冒頭で演奏されたのはロンドン・オリンピックのファンファーレで、今年3月にグラスゴウで行われたカウントダウン・コンサートで初披露されたもの。これがロンドン初演だそうです。マクミランはスコットランド南西部のエアシャー出身の作曲家。作品のタイトル「Upon one note」とは、ヘンリー・パーセルの「1つの音形の上の5声のファンタジア」からアイディアを得たそうな。3分ほどの短いもの。

二つ目はワーグナー指揮者として名高いランニクルスの名刺代わりの一曲。
ブルッフの作品はスコットランド民謡を用いたもので、ヴァイオリン・ソロの他にハープも大活躍。残念ながらハープはマイクから遠い位置にセッティングされているようで、この放送では良く聴こえません。

当然ながらアンコール。ベネデッティは“ここの聴衆は世界一”(大拍手と歓声)と讃え、弾き出したのはケルト民族の魂を代表するウィリー・ハンターのメロディー「Leaving Lerwick Harbour」。2本のヴァイオリンが絡む美しいメロディーで、共演したのはユース・オケのリーダー、ダニエル・レイニー。
何とも感動的な一品で、音楽に魂を揺すぶられたい方には最高のプレゼントでしょう。ハンターについてはこちらを↓

http://en.wikipedia.org/wiki/Willie_Hunter

後半のシュトラウス、グロッケンシュピールがほとんど聴こえないのは仕方ないでしょうか。

初演された委嘱作の作曲家テーア・マスグレイヴ Thea Musgrave もエディンバラ出身。1928年生まれで、今年の5月27日に84歳の誕生日を迎えた女流作曲家。教鞭をとっていたアメリカで現在の旦那さん(指揮者だそうです)と結婚し、ニューヨーク在住。もちろん今回のためにアルバートホールに臨席していました。
作品はスコットランドの有名な湖に住むと噂されるネッシーを音で描いたもので、真に判り易い10分ほどの作品。
冒頭の変ホ調はネス湖の湖底、ネッシーはチューバのソロ、太陽はイ長調で表され、濃い霧(弦のクラスター)の間からネッシーが湖面に姿を現します。何処からかスコットランド民謡が聴こえ、太陽が沈むと同時にネッシーも湖底へ。月が昇り、ネス湖は何事もなかったように静寂に包まれるのでした、ちゃんチャン、という音楽。当然ながらネッシーが大活躍し、恰もチューバ小協奏曲と言う雰囲気です。

最後は合同演奏のレスピーギ。これも音楽絵葉書という意味で、初演作と共通しているのでしょう。

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