デットーリの居ぬ間に

昨日、イギリスのアスコット競馬場ではシャーガー・カップという騎手対抗戦が行われましたが、あれはレースとしては条件戦。当ブログでは詳細は扱いませんので、知りたい方は日本のスポーツ紙でも見て下さい。 
それとは別に、ヘイドック・パーク競馬場とニューマーケット競馬場でGⅢが一鞍づつ行われていますので、そちらのレポートです。

ヘイドック・パークで行われたのはローズ・オブ・ランカスター・ステークス Rose Of Lancaster S (GⅢ、3歳上、1マイル2ハロン95ヤード)。good to firm の馬場に5頭が出走してきました。
前走4頭立てのサセックス・ステークスでフランケル Frankel の3着に入り入着賞金を手にしたガブリアル Gabrial が出走してきましたが、9対4の2番人気。これを抑えて1番人気(15対8)に支持されたのは、フランケルと同じチームのジェット・アウェイ Jet Away 、5月には後にプリンセス・オブ・ウェールズ勝馬となるフィオレンテ Fiolente を破った実績の方が上と評価されたようです。

レースはランソム・ノート Ransom Note が逃げ、3番人気(3対1)ゴドルフィンのハンターズ・ライト Hunter’s Light が2番手。ジェット・アウェイが3番手で進みガブリアル4番手と淡々とした流れ。逃げ馬が後退し、先頭に立ったハンターズ・ライトを1・2番人気の馬が追いましたが脅かすまでには至らず、ハンターズ・ライトがジェット・アウェイに2馬身差を付けて優勝。更に4馬身差でガブリアルがここでも3着。
ハンターズ・ライトはサイード・ビン・スロール厩舎の管理馬で、本来なら主戦のデットーリが騎乗する所でしたが、デットーリは冒頭に書いたシャーガー・カップに選出されているためアスコットで騎乗。ここはシルヴェストル・デ・スーザにお鉢が回っていました。リステッドに3勝の実績がある4歳馬で、このパターン・レース優勝でランクを一つ上げたことになります。

続いてはニューマーケットのスイート・ソレラ・ステークス Sweet Solera S (GⅢ、2歳牝、7ハロン)。来年のクラシックを目指す2歳牝馬の一戦。8頭の出走馬中、無敗馬が4頭と中々にレヴェルの高そうな印象です。馬場はこちらも good to firm 。
人気も無敗馬に集中し、11対8の1番人気は1戦1勝のセルティファイ Certify 、2番人気(2対1)に2戦2勝スカイ・ランターン Sky Lantern 、3番人気(8対1)が1戦1勝レヤーダー Reyaadah と続きます。

レースはサヴァンナ・ラ・マー Savanna La Mar が先手を取り、スタートが余り良くなかったセルティファイは中団の5番手。しかし抜け出してからは強かったセルティファイ、2着のスカイ・ランターンに1馬身差を付けていました。この2頭から2馬身4分の3差遅れて3着にレヤーダー、全く人気順の通りの決着です。好素質馬が揃っていた証でもありましょう。
これで2戦無敗としたセルティファイ、ヘイドック・パーク同様ゴドルフィンの持ち馬で、こちらはマームド・アル・ザローニ厩舎。こちらもデットーリではなくミケール・バルザロナが騎乗していました。どうも最近のゴドルフィン、デットーリ騎手では中々成績が上がりませんが、不在中に若手が活躍してG戦ダブルを達成したのは皮肉でしょうか。

そのゴドルフィン、スイート・ソレラはこれで4連覇達成(スロール厩舎の連覇にザローニ厩舎の連覇が続き)。セルティファイはここニューマーケットの6ハロン戦でデビュー勝ちした馬で、この後は距離が1マイルに伸びるメイ・ヒル・ステークス(GⅡ、9月14日)に向かう予定です。そのメイ・ヒルも目下ゴドルフィンが連覇中。セルティファイの1000ギニーのオッズは(20対1から)14対1に上がりました。

さて今月のフランスは、毎週末にドーヴィル競馬場でG戦が組まれています。今週も土・日で4鞍が予定されていますが、昨日は good の馬場にGⅡとGⅢが行われました。

先にスタートしたポモヌ賞 Prix de Pomone (GⅡ、3歳上牝、2500メートル)。9頭が出走し、23対10の1番人気には3歳のダルカラ Dalkala が選ばれていました。クレオパトラ賞(GⅢ)に勝って挑戦した仏オークスでは5着だった馬です。

レースは英国(ロジャー・ヴァリアン厩舎)から遠征したシメリング・サーフ Shimmering Surf が快調に飛ばし、2番手を追走した本命ダルカラを振り切りましたが、4番手に待機していた2番人気(43対10)のラ・ポム・ダムール La Pomme d’Amour の末脚が切れ、シメリング・サーフに2馬身差を付けて優勝。ダルカラは半馬身届かず3着に終わりました。
勝馬を管理するアンドレ・ファーブル師はこのレース何と12勝目、最多調教師記録をまた一つ伸ばしました。騎乗したマキシム・グィヨン騎手は初勝利。ポム・ダムールはG戦初勝利、去年3歳時にここドーヴィルでミネルヴァ賞(GⅢ)に出走して6着以来のG挑戦でした。

一方2着のシメリング・サーフ、前走ランカシャー・オークス(GⅢ)ではあのグレート・ヘヴンズ Great Heavens の2着していた馬で、決して大厩舎とは言えないヴァリアン師にとっては実り多き遠征だったと言えるでしょう。

今日最後のレポートはゴントー=ビロン賞 Prix Gontaut-Biron (GⅢ、4歳上、2000メートル)。GⅢながら去年はシリュス・デ・ゼーグル Cirrus Des Aigles が圧勝したレースですね。7頭が出走してきました。
4対5の1番人気に支持されたマクシオス Maxios は、2歳時にトーマス・ブライアン賞(GⅡ)に勝った馬で、前走シャンティー賞(GⅡ)で2着と復調が窺えるニアルコス・ファミリーの馬です。

レースは4番人気(99対10)の逃げ馬ドン・ボスコ Don Bosco が先手を奪い、マクシオスは2番手に付けます。いつもは最後で後続に捉まるドン・ボスコ、この日は逃げ足衰えず、最後方から追い込む2番人気(5対1)の英国馬サガモア Sagamore (ハギー・モリソン厩舎)を4分の3馬身抑えて逃げ切ってしまいました。更に1馬身4分の1差で3番人気(9対1)のサガ・ドリーム Saga Dream が3着、マクシオスは2番手追走も5着敗退。

デヴィッド・スマガ厩舎、グレゴリー・ブノア騎乗のドン・ボスコは、前走ヴィシー大賞典(GⅢ)でも逃げて3着に捉まっていた5歳馬。一般的な興味は、オーナーが伝説的俳優オマール・アル・シャリフ氏であることでしょう。エジプト出身のアラブ人、「アラビアのロレンス」や「ドクトル・ジバゴ」で有名な映画スターですが、こういう一面もあるのですね。もちろん愛馬のG戦制覇に大喜び。

最後にシャーガー・カップについて一言。これは世界の騎手を4チームに分けて総合成績を競うゲーム。英・愛チーム、ヨーロッパ大陸チーム、女性騎手チーム、その他の世界チームという何とも大雑把な振り分け。
今回はその他世界チームの圧勝で、構成メンバーはアメリカのアーロン・グライダー、香港のマシュー・チャドウィック、日本の武豊の3人で、グライダーとチャドウィックが1勝づつを上げての金メダルだったようです。もちろん武も入着で点数を稼いだ由。
ヨーロッパ・チームのデットーリ、ここでも仲間のクリスチャン・デムーロにフライング・ディスマウントのお株を奪われてしまったみたい。ま、競馬はあくまで馬あってのスポーツですから、ジョッキーの腕だけでは如何ともし難い面があります。それが競馬の面白い所でもありましょう。

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