ラ・ポム・ダムール、ポモヌを連覇

昨日はイギリスとフランスでG戦が2鞍づつ行われました。GⅡが一鞍で残りはGⅢ、全ては日曜日の決戦、ジャック・ル・マロワ賞のプレリュードと言って良いでしょう。

先に英国から、先ずはヘイドック競馬場ローズ・オブ・ランカスター・ステークス Rose Of Lancaster S (GⅢ、3歳上、1マイル2ハロン95ヤード)。good to firm 、所により good の馬場。2頭取り消しがあり8頭立て。
注目は何と言ってもサー・マイケル・スタウト厩舎のテレスコープ Telescope 。当日記には初登場ですが、スタウト厩舎のダービー候補として噂に上っていた馬で、ダービー出走は叶わなかったものの未だ3戦目の前走(レスターの条件戦、3頭立てながら)で24馬身差の圧勝を演じたばかり。4対9の断然1番人気に推されていました。

レースはエリア・フィフティー・ワン Area Fifty One が逃げ、テレスコープも好位を追走していましたが、行き脚が良かったのは3番人気(15対2)デヴィッド・リヴィングストン David Livingston の方。テレスコープを寄せ付けず、本命馬に1馬身差を付ける逆転劇です。出遅れながらも後半追い込んだ2番人気(6対1)ノーブル・ミッション Noble Mission が頭差まで追い詰めての3着。
失望のテレスコープ陣営ですが、騎乗したライアン・ムーアによれば、この日はいつもの気力が無く、気分はオフだったとか。未だ成長途上の馬で、来年に掛けることで切り替えた様子。それでも凱旋門賞のオッズは25対1と、各ブックメーカーは見放していません。

一方マイク・デ・コック厩舎、超多忙のジョニー・ムルタが騎乗したデヴィッド・リヴィングストンは、3歳までエイダン・オブライエンが管理していた馬。2歳時にはベレスフォード・ステークス(GⅡ)を制した馬で、新厩舎に移ってからは4戦目での初勝利。前走サンダウンのリステッド戦では4着でした。

次にニューマーケット競馬場のスイート・ソレラ・ステークス Sweet Solera S (GⅢ、2歳牝、7ハロン)。馬場は good to firm 、1頭が取り消してこちらも8頭立て。未勝利ながら、前走ロイヤル・アスコットのリステッド戦(チェシャム・ステークス)で3着の実績が買われたイーティマル Ihtimal が11対4の1番人気。マイナーな競馬場で勝った馬より、ロイヤル・アスコットで走った馬の方が格上と見做される実例の一つでもあります。

その実例、見事に実績としても証明されました。逃げるアドワ― Adhwaa を捉え、出遅れながらも追い込んだ2番人気(3対1)ミッドナイト・エンジェル Midnite Angel に2馬身4分の3差を付ける楽勝。半馬身差3着にも3番人気(7対2)のウェディング・リング Wedding Ring が入って順当な結果です。
イーティマルは、このレースに強いゴドルフィンの持ち馬で、サイード・ビン・スロール厩舎、ウイリアム・ビュイック騎乗。3着のウエディング・リングもゴドルフィンで、こちらはアップル―ビー厩舎、スペンサーが騎乗していました。これが初勝利であると同時にG戦初制覇。1000ギニーに25対1のオッズが出されています。

ここでフランスに飛びましょう。good のドーヴィル競馬場から、最初はポモヌ賞 Prix de Pomone (GⅡ、3歳上牝、2500メートル)。感動的なドラマが産まれています。10頭立ての1番人気は、ファーブル厩舎で社台が所有するピリカ Pirika 。3走前にデドーヴィル賞(GⅢ)に勝ち、前走サン=クルー大賞典では6着だった5歳馬です。

逃げたのは3歳馬のシャルネッタ Chalnetta 。予想外の粘りで観客を沸かせましたが、追い込んだのは出遅れ気味の本命ピリカではなく、3番人気(9対2)のラ・ポム・ダムール La Pomme d’Amour 。シャルネッタを4分の3馬身差し切っていました。更に半馬身差で英国(ルカ・クマニ厩舎)のエミレイツ・クイーン Emirates Queen が続き、ピリカは5着敗退。
ラ・ポム・ダムールも、本命馬ピリカと同じアンドレ・ファーブル厩舎。本命にはピエール=シャルル・ブードーが騎乗していましたが、勝馬に乗っていたのはフラヴィアン・プラット騎手。この5歳馬、去年のこのレースにも勝っており連覇達成(去年はマクシム・グィヨン騎乗)となりましたが、オーナーのギー・リード氏は先の7月に亡くなったばかり。陣営にとってこれ以上無い餞になりました。

最後はゴントー=ビロン賞 Prix Gontaut-Biron (GⅢ、4歳上、2000メートル)。7頭が出走してきましたが、注目は7歳せん馬のシリュス・デ・ゼーグル Cirrus des Aigles 。去年はフランケル Frankel に次ぐ第2位の実力馬と評されましたが、今期は前走キングジョージも含めて2連敗。ここはGⅢに格を落とし、勝利の味を思い出させるための出走で、9対10の1番人気は当然のこと。

しかし4番手を進んだ大本命、最後は確実に脚を伸ばしたものの4番人気(83対10)の伏兵プティ・シュヴァリエ Petit Chevalier を頭差捉え切れず、またも勝利はお預けとなりました。1馬身4分の1差でスモーキング・サン Smoking Sun が3着。
敗れたシリュス・デ・ゼーグル、それでもチャンピオン・ステークスのオッズは14対1と絶望的なものではありません。一昨年勝ったチャンピオンに行くか、去年制したドラー賞に向かうか、陣営にはアイルランド遠征のプランも挙がっているようですが、狙いはあくまでも秋のGⅠ。負けたとは言え、着実に調子を上げてきているようです。

さて先行して先手を取ったプティ・シュヴァリエは、ドイツのウイリアム・モンギル William Mongil 厩舎の5歳馬で、マクシム・グィヨン騎乗。前々走コンピエーニュ競馬場のリステッド戦に勝ち、前走はドイツのGⅢで3着、これがG戦初勝利となります。
初勝利はモンギル師にとっても同様で、去年まではドイツで騎手として第一線を歩んできた人。確か今年44歳で、故ウェルナー・バルトロメイ調教師を引き継いだばかり。ドイツのG戦には詳しくないので判りませんが、少なくともフランスのG戦は師にとって初めての快挙となりましょう。このあとはドイツ屈指のGⅠ戦であるバーデン大賞典を目指すとのことでした。

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