デュトワ指揮ロイヤル・フィルのフレンチ・ナイト

昨日のプロムスは、首席指揮者シャルル・デュトワ率いるロイヤル・フィルの受持ち。フランス風の洒落た音楽を聴かせてくれました。

≪Prom 43≫
ディーリアス/パリ
サン=サーンス/ピアノ協奏曲第2番
     ~休憩~
チャイコフスキー/交響曲第5番
 管弦楽/ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団
 指揮/シャルル・デュトワ
 ピアノ/ベンジャミン・グロヴナー

デュトワ御大もN響時代は随分と斬新なプログラムを組む人と言う感じでしたが、プロムスではむしろ保守的という印象です。もちろん他とのバランスなんですが・・・。

冒頭のディーリアスは勿論生誕150年の一環で、プロムスでも30年近く出ていなかった曲目だそうです。デュトワのディーリアスというのが新鮮な感じがしました。
題名もそうですが、カスタネットやタンバリンも登場し、むしろドビュッシーやラヴェルを連想する譜面ですね。デュトワの感性とも良くマッチしてました。
何故か、練習番号27の手前で中継が中断する個所があります。コンサートマスターのダンカン・リデルの美しいソロが活躍する途中。

サン=サーンスのソロを弾いたグロヴナー君は、二十歳になったばかり。去年のファースト・ナイトでプロムス・デービューした(リストの第2協奏曲)期待の若手です。11歳でBBCの最優秀ヤング・ミュージシャンに選ばれて話題になったピアニスト。
最近の人は皆そうですが、この人は特に指が良く回ります。サン=サーンスはピッタリで、その再来かと思うほど。
アンコールがありました。サン=サーンスの有名な「白鳥」。レオポルド・ゴドフスキーが編曲したものの由。

チャイコフスキーもロシア臭さとは無縁で、実に良く流れる音楽でした。
珍しくこのコンサートは楽章間の拍手は一切無し。これがあるのとないのと、聴衆はどういう基準で対応しているのか今一良く判りません。

     *****

なお、この日はロイヤル・フィルのコンサートの後に ≪Prom 44≫ としてロンドン・シンフォニエッタによる現代作品の演奏会もありました。夜10時15分から1時間15分ほどのミニ・コンサート。
この種のものは普通はパスするのですが、リゲティ、ベリオ、クセナキスなどの作品の最後にケージの4分33秒が予定されているのを見て一部を聴いてみました。
コメンテイターが司会進行するスタイルで、ルイ・アンドリーセンの作品では作曲者自身がステージ上で解説も。

今年はジョン・ケージの生誕100年にも当たっていますので、プロムスでもケージの様々な音楽が取り上げられます。17日の金曜日にも≪Prom 47≫としてケージ特集があり、こちらには日本からもピアニストの高橋あき、作曲家の小杉武久も参加することになっていますから、現代音楽ファンは必聴でしょう。

で、件の4分33秒ですが、ラジオ・プレーヤーでは1時間21分ぐらいから始まります。
私は1960年代の初めにNHK・FMの海外の音楽で柴田南雄氏解説で放送されたのを聴いた覚えがありますが、今回は随分と会場も大人しいものでした。古典になった、というか慣れたんでしょう。

大分以前にヤマハで楽譜を見たことがありますが、全部で3楽章。種明かしすると、第1楽章「tacet」、第2楽章「tacet」、第3楽章「tacet」で、3つの楽章を足し算すると4分33秒になるワケ。
初演はピアノだったと思いますが、今回は室内オーケストラ版での演奏です。演奏前にチューングもあり、指揮者が登場してキューを出すようです。2か所って言ってましたから、恐らく楽章の切れ目でしょう。司会によれば small, smaller, smallest なんだとか。終われば拍手も喝采も起きます。

今年はケージ生誕100年を記念して、この曲の様々なヴァージョンとドキュメントを一冊にまとめたものが出版されました(ペータース社)。興味のある方はこれを入手、じっくりとスコアを参照しながら聴かれることをお勧めします。なぁ~んちゃって、ね。
これも今日から1週間の間は聴けますので、よろしかったらどうぞ。

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