メルボルンへのステップ
昨日のニューバリー競馬場、毎年この時期伝統のG戦が2鞍行われました。馬場も good to firm にまで回復し、固い馬場を待っていた馬も少なくないでしょう。
ジェフリー・フリーア・ステークス Geoffrey Freer S (GⅢ、3歳上、1マイル5ハロン61ヤード)は、この競馬場でジョン・ポーター・ステークスに勝ったハリス・トゥイード Harris Tweed が2ポンドのペナルティーを嫌ってか取り消し、6頭立てで行われました。
去年のセントレジャー馬マスケッド・マーヴェル Masked Marvel が出走してきましたが、クラシック以来勝鞍が無く、ここでは3対1の3番人気まで。これを抑えて5対4の1番人気に支持されたのは、G戦の勝鞍は無いものの5歳になって3連勝と成長著しいマウント・アソス Mount Athos でした。
レースはマスケッド・マーヴェルのペースメーカー(ゴスデン厩舎)で、出走馬中唯一の3歳馬ダートフォード Dartford がペースを作り、マスケッド・マーヴェルは2番手。マウント・アソスは後ろから2つ目の5番手で待機します。
長い直線に入ったところでマスケッド・マーヴェルが先頭に立ちますが、脚色は冴えずリードは一時的。スタートで出遅れたブラウン・パンサー Brown Panther が外から交わして先頭を奪いましたが、本命マウント・アソスが末脚鋭くこれを捉え、ゴールではブラウン・パンサーに3馬身4分の1差を付けて期待に応えました。4馬身差で最後方から進んだゴドルフィンのモーダン Modun が3着。マスケッド・マーヴェルは4着に沈んでいます。
ルカ・クマニ厩舎、ライアン・ムーア騎乗のマウント・アソスは、今期ハンデ戦、リステッド戦に続いて3戦負けなし。クマニ師は積極的に海外にチャレンジする調教師で、目標はもちろんメルボルン・カップでしょう。この勝利でオッズは10対1となりました。
続いてはハンガーフォード・ステークス Hungerford S (GⅡ、3歳上、7ハロン)、去年はあのエクスセレブレーション Excelebration が制したレースですね。。セシル厩舎がチャチャマイデー Chachamaidee を取り消したため9頭立て。前走もここニューバリーでハックウッド・ステークス(GⅢ、6ハロン)に勝っているゴドルフィンのソウル Soul が2対1の1番人気に支持されていました。前々走はダイヤモンド・ジュビリー(GⅠ)でブラック・キャヴィア Black Caviar の4着ですから、相手関係からも期待されて当然でしょう。GⅡに3勝しているストロング・スート Strong Suit が待ち望んでいた固い馬場を得て9対4と差の無い2番人気。
レースは、出走馬中唯一の3歳馬で最低人気(25対1)のレーサル・フォース Lethal Force がダッシュ良く飛び出して他馬との差を広げながら先頭。有力各馬は牽制しながらこれを追走します。ところが最後の100ヤードを切っても逃げ馬の脚色は鈍らず、漸くストロング・スートに騎乗するライアン・ムーア騎手が懸命に差を詰めたものの首差レーサル・フォースを捉え切れませんでした。1馬身半差で4番人気(9対1)のアランザ Alanza が3着、ソウルは6着と期待を裏切っています。ムーア騎手は惜しくもG戦ダブルならず。
レース前は下馬評にも上がらなかったレーサル・フォースは、クライヴ・コックス師の管理馬で、アダム・カービー騎乗。アスコットではジャージー・ステークス(GⅢ)で4着でしたが、前走はヘイドック競馬場の一般戦で2着と目立った戦績は残していません。今回初めて装着したブリンカーが奏功したとしか考えようがないでしょう。
コックス師は2009年のペルシャザールズ・ギフト Belthazaar’s Gift に次いでハンガーフォード2勝目。またカービー騎手は、去年のエクスセレブレーション(未だボッティ厩舎でした)に続く連覇で2度目の優勝となります。
さて土曜日はドーヴィル競馬場でもG戦が一鞍組まれていました。カルヴァドス賞 Prix Calvados (GⅢ、2歳牝、1400メートル)。フランスの馬場は good 、12頭が出走してきましたが、5頭は英国からの遠征です。
その遠征組、マーク・ジョンストン厩舎のディサーナブル Discernable は前走ドーヴィルのリステッド戦に勝った2勝馬、そのリステッド戦は去年の勝馬エルーシヴ・ケイト Elusive Kate も勝っていることから期待が集まりましたが、19対5の2番人気。僅かの差で1番人気(33対10)には、ドーヴィルの新馬戦に勝ったばかりのモーニング・フロスト Morning Frost が支持されていました。
レースはスタンドに近い側のラチ沿いにディサーナブルが逃げましたが、中程で一杯になりズルズルと順位を下げ、結局はドン尻争いで入線してしまいます。また本命モーニング・フロストも後方待機から外に出しましたが伸びず、8着と惨敗。更に3番人気(13対2)のウエッジ・トラスト Wedge Trust もスタート悪く9着と波乱。
最後は4頭が横一線で並ぶ大混戦で、優勝は8番人気(168対10)のパー・アロング Purr Along 。2着は短首差で後方から追い込んだセーラ・ルシール Sara Lucille (8対1)と、先行抜け出しのプレミエ・ステップス Premier Steps (14対1)が同着。頭差で中団から伸びたシティー・イメージ City Image (172対5)が4着という結果でした。
パー・アロングは英国遠征組の1頭で、ウイリアム・ミュイール厩舎。ミュイール師にとってはドーヴィル競馬場での初勝利となります。
勝馬はウルヴァーハンプトンの新馬戦に勝った後、サンダウンのリステッド戦で3着、これが3戦目でした。サンダウンでは2度に亘って他馬と接触する不利があり、本来の力を発揮できなかった由。イギリスでの2戦は主戦のマーチン・ダイヤーが騎乗してきましたが、この日ダイヤー騎手はニューバリーでの騎乗のためドーヴィルではウンベルト・リスポリに乗り替わっています。リスポリにとってはフランスのG戦初勝利となりましたが、ミュイール師は“先頭に立つのが早過ぎる。じっくり待てばもっと楽に勝っていたはず”と騎乗には苦言も呈していました。
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