2012ヨーク・イボア開催3日目

ヨーク3日目のメインもGⅠ戦ですが、その前にGⅡとGⅢから。馬場は前日に雨が降ったため軟化、全体に good は日本なら稍重という表現に相当するでしょう。レースの映像を見ていると、もっと重いような印象を受けます。

ジムクラック・ステークス Gimcrack S (GⅡ、2歳、6ハロン)は8頭立て。グローリアス・グッドウッドでリッチモンド・ステークス(GⅡ)を制したへヴィー・メタル Heavy Metal が出走してきましたが、ペナルティーの3ポンドが嫌われて8対1の5番人気。1番人気(9対4)に支持されたのは、モールコム・ステークス(GⅢ)で2着したモラウィージ Morawij 、1ハロン伸びる距離も克服できるだろうという評価です。

未勝利馬ながら前走ジュライ・ステークス(GⅡ)で2着、へヴィー・メタルにも先着した3番人気(5対1)のルイシャム Lewisham がスタートをミスして後方からの競馬。エクストン・ホール Euxton Hall が逃げましたが、2・3番手を追走した4番人気(6対1)のブレイン Blaine とへヴィー・メタルが並んで抜け出しての叩き合い。最後はブレインがへヴィー・メタルを頭差抑えていました。1馬身差で3着にキー・ヴェーディ Cay Verde 。本命モラウィージはペースに付いて行けないような感じでドン尻8着に敗退し、2番人気(9対2)パール・アクレイム Pearl Acclaim は5着、3番人気のルイシャムも7着と上位人気馬は総崩れとなりました。

勝馬を管理するケヴィン・ライアンは地元ヨークシャーを本拠にする調教師で、このレースは2005年のアマデウス・ヴォルフ Amadeus Wolf に続く2勝目。フィリップ・メイキンが騎乗していました。ブレインは7月に同じヨークの6ハロンの新馬戦に勝ったばかりの馬で、6対1の4番人気。これで2戦無敗となりますが、今期はもう1戦して来シーズンに備える計画とか。
一方、3ポンド重い負担重量を背負って頭差2着のへヴィー・メタルは既にこれが7戦目。勝馬との差を懸命に詰めようとしましたが、馬場がグッドウッドほど乾いていないのと斤量差が影響したのでしょう。この過程でムチを過剰使用したジョー・ファニング騎手は、9月7日と9日の2日間の騎乗停止処分を受けています。

続いてストレンソール・ステークス Strensall S (GⅢ、3歳上、1マイル208ヤード)。1頭取り消して7頭が出走し、セシル厩舎でこの所G戦で堅実な成績を残しているスティピュレイト Stipulate が2対1の1番人気に支持されていました。

レースはファリー Fury が逃げ、ベアフット・レディー Barefoot Lady 、クエスチョニング Questioning が3番手で直線へ。馬群は大きく横に広がり、最後方に待機した2番人気(4対1)のドバイ・プリンス Dubai Prince が最もスタンドに近い側に進路を取って抜け出し、3番人気(5対1)サイド・グランス Side Glance に1馬身4分の1差を付ける快勝です。首差3着に去年の2着馬タザハム Tazahum の順。本命スティピュレイトは6着敗退。

ゴドルフィン所有、マームド・アル・ザローニ厩舎のドバイ・プリンスは2・3歳時にはクラシック候補と期待されていた存在でしたが、度々の故障で本来の能力を出せなかった馬。騎乗したランフランコ・デットーリはこのレースと相性が良く、これが何と8勝目と最多勝利騎手記録を更新しました。
中々焦点の定まらないドバイ・プリンスでしたが、この9ハロン辺りの距離がベストのようです。今秋のドラー賞を目指すことになるでしょう。

そして開催3つ目のGⅠ戦、2歳馬にも出走資格のある短距離のナンソープ・ステークス Nunthorpe S (GⅠ、2歳上、5ハロン)。2歳馬の出走はありませんでしたが、1頭取り消して19頭が顔を揃えました。キングズ・スタンド2着のベイテッド・ブレス Bated Breath とキング・ジョージ・ステークスを制した豪州馬オルタンシア Ortensia が7対2で1番人気を分け合っています。

コース一杯に広がったスタート、スタンドから最も遠い1番枠スタートから飛び出したハミッシュ・マゴナガル Hamish McGonagall が1頭だけ外を通って先頭に立ちます。後続馬も次々と仕掛ける中、外目に進路を移したスピリット・クォーツ Spirit Quartz がハミッシュ・マゴナガルに馬体を寄せていきます。しかしハミッシュ・マゴナガルの更に外(スタンドから遠いラチ沿い)を衝いて、前半は後方に置かれていた人気の一角オルタンシアがスルスルと脚を伸ばし、ゴール板では首差スピリット・クォーツを差し切っていました。両側から挟まれるように交わされたハミッシュ・マゴナガルが1馬身4分の1差で3着。更に1馬身4分の1で先行したヒュミドール Humidor 4着、首差でビヨンド・ディザイア Beyond Desire 5着。ベイテッド・ブレスも追い上げましたが6着まで。
終わって見れば、前走グッドウッドのキング・ジョージ・ステークスと同じ1・2着でした。キング・ジョージでは1馬身4分の1差だった着差は、今回は頭差。前走はGⅡのためオルタンシアがスピリット・クォーツより4ポンド重い負担重量を背負っていましたが、今回はGⅠのため性別によってオルタンシアが3ポンド軽い斤量。これを考えても、オルタンシアは固い馬場の方がスピードが活きると見て良さそうですね。

キング・ジョージでも紹介したように、オルタンシアはオーストラリアのポール・マサーラ師が管理する7歳馬。これが英国での4戦目で、ここ3戦はウイリアム・ビュイックが騎乗しています。固い馬場を得意とする同馬、マサーラ師は、今回は前日の雨で馬場が渋ったためチャンスは無いと諦めていたほど。馬自身が英国の競馬に順応してきていることもあるのでしょう。陣営は、9月8日のベットフレッド・スプリント・カップ(ヘイドック競馬場)にも意欲を表明しました。

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