史上初、同着のトラヴァース

8月最終週のアメリカは東のサラトガ、西のデル・マーの二つのメインコースが舞台。土曜日の昨日はサラトガでGⅠ3鞍を含むG戦4レースが注目の的でした。

先ずはサラトガ競馬場から。ボールストン・スパ・ハンデキャップ Ballston Spa H (芝GⅡ、3歳上牝、8.5ハロン)。firm の馬場、メイン・コースに変更があった時だけに出走予定の1頭が取り消して8頭立て。今期5戦して3勝全てがG戦のザゴラ Zagora が3対2の1番人気に支持されていました。
これが今期初戦となるGⅠホースのサマー・ソワレー Summer Soiree (5対1、4番人気)が逃げましたが、前半は後方を進んだザゴラが一気に差を詰め、直線で鮮やかに抜けると、これも追い込む2番人気(7対2)のハングリー・アイランド Hungry Island に1馬身半差を付けて人気に応えました。3馬身4分の3差で逃げたサマー・ソワレーが3着、次回に期待でしょう。
チャド・ブラウン厩舎、ラモン・ドミンゲス騎乗のザゴラは、前走ダイアナ・ステークス(芝GⅠ)で既に引退したウインター・メモリーズ Winter Memories の3着。今年はギャロレット・ステークス(芝GⅢ)、エンデヴァー・ステークス(芝GⅢ)、ヒルスボロー・ステークス(芝GⅢ)に続く4つ目のG戦勝利。サラトガの固い馬場を得意とする馬で、勝時計1分39秒07はコース・レコードというオマケ付でした。

これからGⅠが続きますが、第1弾は第87回テスト・ステークス Test S (GⅠ、3歳牝、7ハロン)。メインコースは fast 、10頭が出走してきました。イーヴンの1番人気は、同じく1番人気で臨んだマザー・グース・ステークス(GⅠ)で5着どん尻に沈んで以来の競馬となるコンテスティッド Contested
レースはジプシー・ロビン Gipsy Robin 、続いてウラプール Ullapool がハイペースで飛ばす流れ。スタートで安目を売ったコンテスティッドは速い流れを読んで慌てず3番手に上がり、最終コーナーでは外を回って抜け出すと、一旦2番手に下げたジプシー・ロビンに2馬身差を付けて快勝。半馬身差3着にはビューティフル・バット・ブルー Beautiful But Blue が追い込みました。
コンテスティッドは、マザー・グースに先立つエイコーン・ステークスに続き二つ目のGⅠ制覇。管理するボブ・バファート師にとっても2008年のインディアン・ブレッシング Indian Blessing に続く2勝目のテスト・ステークスとなりました。勝利騎手はラファエル・ベハラノ。

続くGⅠはテスト・ステークスと対を成す牡馬によるキングズ・ビショップ・ステークス King’s Bishop S (GⅠ、3歳、7ハロン)。ここも10頭立て。前二つのG戦は人気馬が順当に勝ちましたが、これは大荒れの結果になりました。レース前は3歳スプリンターの両横綱、アムステルダム・ステークス(GⅡ)に勝ったカレンシー・スワップ Currency Swap と、ウッディー・スティーヴンズ・ステークス(GⅡ)でカレンシー・スワップスを破って優勝したトリンニバーグ Trinniberg の一騎打ちと見做されていました。前者が9対5の1番人気、後者が5対2の2番人気。
トリンニバーグがダッシュ良く先頭に立って逃げ、カレンシー・スワップも3番手を追走しますが、カレンシー・スワップは徐々に順位を下げて最後は6着敗退、逃げたトリンニバーグも直線で急速に脚を失いブービーの9着惨敗。優勝は、前半は後方3番手から徐々に進出した並んだ6番人気(11対1)の一角ウィリー・ビーミン Willy Beamin 。半馬身差2着は写真判定の接戦で、8番人気(14対1)のフォート・ラウドン Fort Loudon が6番人気(11対1)の一角アンブライドルズ・ノート Unbridle’s Note にハナ差先着していました。いずれも追い込み馬で、ゴール直前でガラリと入れ替わる波乱です。
リチャード・ダトロウ厩舎、アラン・ガルシア騎乗のウィリー・ビーミンは、2歳時は勝てず今年2戦目のクレーミング戦で初勝利を記録した馬。以来これで6連勝となるせん馬で、前走は一般ステークス(アルバニー・ステークス)を6馬身差で圧勝していましたが、G戦は初挑戦だった存在です。3歳スプリンター牡馬路線は俄然混戦になってきたようですね。

GⅠ3連発の締めは、「真夏のダービー」という異名で知られるトラヴァース・ステークス Travers S (GⅠ、3歳、10ハロン)。今回で143回目を迎える準クラシック。今年のクラシック戦線は、2冠馬アイル・ハヴ・アナザー I’ll Have Another 、ベルモント勝馬ユニオン・ラグス Union Rags が相次いで引退。更には2冠で連続2着のボウディマイスター Bodemeister 、2歳チャンピオンのハンセン Hansen もクラシック馬の後を追うように引退し、2005年以来クラシック馬の参加が無いトラヴァースとなってしまいました。言わば2軍のメンバーによる真夏のダービーです。その中で1番人気(2対1)に支持されたのは、ジム・ダンディー・ステークス(GⅡ)勝馬のアルファ Alpha でした。
主役不在のトラヴァースを象徴するような結果となり、先に抜け出した大穴(33対1)ゴールデン・チケット Golden Ticket を本命アルファが直前で捉えたかに見えたところがゴール。写真判定の結果「同着」がアナウンサれ、場内はドッと沸きます。首差3着も32対1という全くの伏兵ファスト・ファルコン Fast Falcon 。レース中にストリート・ライフ Street Life が故障してレースを中止していますが、生命に支障はないようです。
トラヴァース143年の歴史の中で、実は1874年にも同着 Dead Heat の記録がありますが、この当時は当該2頭により再戦されるのが習慣。その結果、アッティラ Attila が公式の優勝馬として記録に残っています。しかし今回は2頭の同着が公式記録、トラヴァースでは初めてとなりました。
ゴールデン・チケットはケネス・マクピーク厩舎、デヴィッド・コーエン騎乗。ゴドルフィン所有馬のアルファは、キアラン・マクローリン厩舎、ラモン・ドミンゲス騎乗。コーエンもドミンゲスもトラヴァースは初勝利となります。

土曜日のアメリカ・レポート、最後はデル・マー競馬場からデル・マー・ハンデキャップ Del Mar H (芝GⅡ、3歳上、11ハロン)。勝馬にはBCターフへの優先出走権が与えらる重要なトライアルです。firm の芝コース、1頭が取り消して8頭立て。ステークスに2連勝中、アイルランド産のダーマー Dhaamer が6対5の1番人気に支持されていました。
レースはワース・リピーティング Worth Repeating がスローに落として逃げますが、5番手の内々を回った3番人気(9対2)のカジノ・ホスト Casino Host が直線では外に出して鋭く伸び、後方2番手から急襲した本命ダーマーを首差抑えて優勝、BCへの無料切符を手にしています。1馬身差でG戦初挑戦(24対1、6番人気)のファイア・ウィズ・ファイア Fire With Fire が3着。2番人気(5対2)でアルゼンチンの最高レースであるカルロス・ペレグリニ賞勝馬のインターアクション Interaction は後方3番手から5着まで。
ロナルド・エリス厩舎、ジョセフ・タラモ騎乗のカジノ・ホストは、これまでの東海岸のチャド・ブラウン厩舎から移籍してきた馬。7月17日のエディー・リード・ステークス(芝GⅠ)では3着という実績の持ち主です。

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