芝コースのG戦4鞍
今週のアメリカ競馬は、土曜日に行われた3つの競馬場の芝G戦4鞍のみ。いつもより静かな週末を迎えました。どのG戦も、アメリカでは圧倒的に強いミスター・プロスペクター Mr Prospector 系種牡馬の産駒が勝てなかったのも面白い現象です。
最初はベルモント競馬場の2鞍、馬場状態は firm 。先ずノーブル・ダムゼル・ハンデキャップ Noble Damsel H (芝GⅢ、3歳上牝、8ハロン)は6頭立て。GⅠ馬のベター・ラッキー Better Lucky が4対5の1番人気に支持されていました。
レースは4頭が縦一列の淡々とした流れ。4番手に付けたベター・ラッキーでしたが、直線では意外に伸びず。前半最後方待機の最低人気(16対1)ピース・プリザーヴァー Peace Preserver が内ラチ沿いに追い上げ、直線中程で馬群をこじ開けるように進出すると、2着ハングリー・アイランド Hungry Island (3対1、2番人気)に半馬身差を付ける番狂わせ。更に4分の3馬身差でベター・ラッキーは3着止まりに終わりました。
トッド・プレッチャー厩舎、イラッド・オルティス騎乗のピース・プリザーヴァーは、これがG戦初勝利。5月にはボーゲイ・ステークス(GⅢ)で2着の実績はあるものの、前走サラトガのアローワンス戦では7着と目立たなかった存在。去年10月にベルモントの一般ステークスに勝って以来の勝星でした。
続いて3歳牝馬限定のGⅠ戦、ガーデン・シティ・ステークス Garden City S (芝GⅠ、3歳牝、9ハロン)。1頭取り消して10頭立て。5対2の1番人気は、アメリカン・オークス(芝GⅠ)馬のディスクリート・マルク Discreet Marq 、3連勝中で芝を得意とする馬です。
そのディスクリート・マルクはスタートから先手を取り、ややスローに落としての楽な逃げ作戦。そのまま押し切れそうな展開でしたが、前半4番手から外を通って伸びた2番人気(3対1)のアルテライト Alterite がヨーロッパ風の瞬発力を発揮、本命馬を1馬身半切って捨てる快勝です。ハナ差でコンサイス Concise が3着。
チャド・ブラウン厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のアルテライトは、これがアメリカでのデビュー戦。6月まではフランスでジャン=クロード・ルジェ師が管理していた馬で、2歳時にはマルセル・ブーサック賞で3着。今期も仏1000ギニー(10着)、サン・タラリ賞(2着)、仏オークス(6着)とGⅠクラシック路線を歩んできた存在。ブラウン師にとっては、去年のサミター Samitar に続き2年連続でヨーロッパからの移籍馬でこのGⅠを制したことになります。当然ながらBCフィリー・アンド・メア・ターフが目標となるでしょう。
次はアーリントン競馬場のパッカー・アップ・ステークス Pucker Up S (芝GⅢ、3歳牝、9ハロン)。こちらも馬場は firm で8頭立て。前走アーリントン競馬場で分割になった一般ステークスの第1組を勝ったアイム・オールレディー・セクシー I’m Already Sexy がイーヴンの1番人気。
ダッシュ良く飛び出した本命アイム・オールレディー・セクシー、そのスピードを如何なく発揮して鮮やかな逃げ切り勝ちで期待に応えました。3馬身4分の3差2着も、2番手を追走していたエヴリ―・ウェイ Every Way 、所謂行った行ったの競馬でした。1馬身半差でやはり3番手追走のマイ・オプション My Option が3着。
ウェイン・カタラーノ厩舎、フロラン・ジェルー騎乗のアイム・オールレディー・セクシーは、これがG戦初勝利。前走の他、7月のアーリントンでもアローワンス戦で1着同着になっており、何れもジェルーが騎乗していました。そのジェルー、このレースは2010年のデード・ベイブ Dade Babe に続く2勝目。
最後はケンタッキー・ダウンズ競馬場からケンタッキー・ターフ・カップ Kentucky Turf Cup (芝GⅢ、3歳上、12ハロン)。やはり馬場は firm で、2頭が取り消しての7頭立て。前走果敢にもアーリントン・ミリオン(芝GⅠ)に挑戦して5着に入ったテメレーヌ Temeraine が2対1の1番人気。
レースはワットザキャットドラッグイン Watthecatdrugin の逃げ。2番手から一旦4番手に下げたテメレーヌは、最後のコーナーで内ラチ一杯を衝いて一気に抜け、早目先頭のブラジル産馬オリンピック・サンダー Olympic Thunder を内から首差交わしての快勝。1馬身差で2番人気(5対2)のサントレイサー Suntracer が3着に入りました。
トーマス・プロクター厩舎、名手ゲーリー・スティーヴンス騎乗のテメレーヌは、アーリントン・ミリオンの前にはアーリントン・ハンデでも2着。ステークスはこれが初勝利となりますが、これまでやや背伸びしながら格上相手に健闘、今回が初騎乗となるスティーヴンスの好サポートを得ての勝利と言えそうです。
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