サラトガ競馬場のフィナーレ

月曜日のアメリカはレイバー・デイの休日、3連休最終日も3つの競馬場で5鞍のG戦が行われました。

先ずはパークス・レーシング競馬場から。このペンシルヴァニア州の競馬場については去年のこの時期に詳しく触れましたが、年々アメリカレース体系での重要性が増してきています。去年はこの競馬場から3鞍がG戦に格付けされていましたが、今年は新たに3鞍がGⅢに加わり、去年GⅡだったコーティリオン・ステークスは今年からGⅠに格上げされます。今後はこの競馬場の名前を目にする機会も増えてくるでしょう。
ということで昨日行われた2鞍のGⅢのうち、今年新たにグレード・レースに認定されたのがスマーティー・ジョーンズ・ステークス Smarty Jones S (GⅢ、3歳、8.32ハロン)。中途半端な距離ですが、英国風に表記すれば1マイル70ヤードに相当します。レース名のスマーティー・ジョーンズは、もちろん2004年のケンタッキー・ダービー、プリークネスの2冠馬に因んだもの。馬場は生憎の雨で sloppy 、2頭が取り消して7頭立てで行われました。ダイヤー・ステークス(GⅡ)勝馬のティース・オブ・ザ・ドッグ Teeth of the Dog が8対5の1番人気。
そのティース・オブ・ザ・ドッグが逃げましたが、2番手を追走した2番人気のトラフィック・ライト Traffic Light がこれを捉えて先頭。更に4番手を進んだ4番人気(9対2)のイースター・ギフト Easter Gift が馬3頭分の外から追い込み、トラフィック・ライトに4馬身半差を付ける楽勝です。更に2馬身4分の1差でティース・オブ・ザ・ドッグが3着。
勝馬を管理するのはミック・ジート師、騎乗したケンドリック・カームーシュ騎手は同馬に初騎乗でした。イースター・ギフトは今年4月のガルフストリームでデビュー勝ち、その後ここパークス・レーシングで連勝し、6月モンマス・パークのペガサス・ステークス(GⅢ)が2着、サラトガのカーリン・ステークス(一般ステークス)で4着に終わってこれが5戦目。もちろんステークスもG戦も初勝利となります。

続いては、去年GⅢに格上げされたターフ・モンスター・ハンデキャップ Turf Monster H (芝GⅢ、3歳上、5ハロン、BC)。去年に続き勝馬にはBCターフ・スプリントへの優先出走権が付与されます。芝コースは何とか soft で開催され、3頭が取り消した8頭立て。6歳馬ながら去年の勝馬ベンズ・キャット Ben’s Cat が9対5の1番人気に支持されていました。
レースは3番人気(5対1)グレート・ミルズ Great Mills が逃げ、一旦絡まれたジュ―・ジツ・ジャックス Ju Jitsu Jax (充実ジャックス?)を振り切った所に3番手にマークしていた2番人気(2対1)のシャンベルラン・ブリッジ Chamberlain Bridge と、4番手から馬4頭分の外を通ったベンズ・キャットが襲い掛かったところがゴール。写真判定の結果、本命ベンズ・キャットがシャンベルラン・ブリッジを頭差で差し切っていました。グレート・ミルズはハナ差3着惜敗。
見事2連覇を達成したのはキング・レザーバリー厩舎、去年はジェレミー・ローズが騎乗していましたが、今年はジュリアン・ピメンテル騎手。実は2着のシャンベルラン・ブリッジはこのレースを2009年と2010年に連覇しており、去年は3着だった8歳馬。今年の勝馬と併せ、4年間で2頭が独占しているのですね。

続いては9月3日が開催最終日となるサラトガ競馬場から2鞍、最初にグレン・フォールズ・ハンデキャップ Glen Falls H (芝GⅢ、3歳上牝、11ハロン)から見ていきましょう。芝コースは firm 、ダート変更時のみの登録馬2頭が取り消して6頭立て。前走ベルモント競馬場でニュー・ヨーク・ステークス(芝GⅡ)3着したヒット・イット・リッチ Hit It Rich が4対5の1番人気に支持されています。
スタートも抜群だった本命ヒット・イット・リッチがそのまま先頭、終始1馬身ほどで3番人気(6対1)のビジー・キャロライン Bizzy Caroline にマークされましたが、そのまま一度も先頭を譲ることなく逃げ切り勝ち。2着も1馬身半差でビジー・キャロラインが続き、所謂行った行ったの競馬。3番手以降が離される展開の中、2番人気(2対1)のキッサブル Kissable も3番手からビジー・キャロラインに首差まで詰めるのがやっとでした。
クロード・マゴーヒー厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のヒット・イット・リッチは、3月末にオーキッド・ステークス(芝GⅢ)を制していた馬。5月のシープスヘッド・ベイ・ステークス(芝GⅢ)で2着の後ニュー・ヨークの3着。堅実に走る芝の長距離牝馬でしょう。

サラトガの掉尾を飾るのがホープフル・ステークス Hopeful S (GⅡ、2歳、7ハロン)。去年まではGⅠ戦でしたが、何故か今年からGⅡに降格。勝馬にはBCジュヴェナイルへの優先出走権が与えらるのは変わらず、注目の2歳戦であることに変りはありません。fast の馬場、1頭取り消して8頭立て。ブリーン厩舎とプレッチャー厩舎が夫々2頭づつカプリングされました。1番人気(8対5)はゴドルフィンのフォーティファイ Fortify 、8月4日のデビュー戦(サラトガ)で5馬身半差の圧勝劇を演じた注目の1頭です。またブリーン厩舎のバーン・アイデンティティー Bern Identity (7対2、3番人気)はトライアルとなるサンフォード・ステークス(GⅡ)の勝馬で、サンフォード/ホープフルのダブルを達成したのは2004年のアフリート・アレックス Afleet Alex 以来絶えていることからも注目されていました。
先手を取ったのはマジェスティック・ハサー Majestic Hussar 、オーヴァーアナライズ Overanalyze が2番手で続き、フォーティファイはその後。しかし4番手から馬3頭分の外を回って積極的に仕掛けた2番人気(2対1、プレッチャー厩舎カプリングの1頭)シャンハイ・ボビー Shanghai Boby が一気に抜けると、本命フォーティファイに3馬身4分の3差を付ける快勝。更に4分の3差でバーン・アイデンティファイが3着で続きます。
勝馬を管理するトッド・プレッチャー師の今世代2歳馬は絶好調で、これが今年のサラトガでの22勝目。ホープフルはGⅠ時代のサーキュラー・ケイ Circular Quay (2006年)に続く2勝目。GⅠに格下げされたことへの不満があるようですが、クラシックに期待が掛かる馬を管理することは、特別な「期待」を抱かせるものでしょう。4月にアケダクトの新馬戦(4.5ハロン)を4馬身で勝ち、6月にベルモントの一般ステークス(トラック・バロン・ステークス)を連勝。予定していたサラトガ・スペシャル(GⅡ)を熱発で取り消しての参戦、これで3戦3勝と無傷のままシャンペン・ステークス(GⅠ)でGⅠ獲りを狙います。騎乗したロージー・ナプラヴニクはバーン・アイデンティティーにも乗ってきましたが、今回はプレッチャー師の意向でシャンハイ・ボビーとのコンビを優先させています。

祝日競馬の最後は、デル・マー競馬場のイエロー・リボン・ハンデキャップ Yellow Ribbon H (芝GⅡ、3歳上牝、8.5ハロン)。1945年以降ずっとパロマー・ハンデキャップ Palomar H として知られてきたレースですが、今年から改名された一戦です。ところでイエロー・リボンというレース名は去年までは秋のサンタ・アニタで行われるGⅠ戦でしたが、今回の変更により新たなスタートを切ることになるようですね。変更の意図は良く判りませんが、BCとの関連にあると思われます。
今年は firm の馬場、1頭取り消して8頭立てで行われました。前走ジョン・C・メイビー・ステークス(芝GⅡ)でハナ差の大接戦を演じた2頭の内オール・スター・ハート All Star Heart が取り消したのですから、勝ったシティー・トゥー・シティー City to City に期待が集まるのは当然でしょう。また彼女は去年のこのレース、即ちパロマー・ハンデを制しているのですから、2連覇も掛かっていました。
レースはブロークン・ドリームス Broken Dreams が逃げ、負傷したコーリー・ナカタニに替って騎乗したマイク・スミスのシティー・トゥー・シティーは後方2番手からの競馬。直線、先行馬が脚を失くす中、後方3~4番手に待機していた4番人気(5対1)のヘロー・ドリー Halo Dolly が馬3頭分の外から一気に末脚を伸ばして鮮やかな差し切り勝ち。シティー・トゥー・シティーも直線中程を通って鋭い伸びを見せましたが、混戦の2着争いをハナ差で抜けるのがやっと。勝馬とは1馬身4分の1差が付いていました。3着は3番手で粘ったヴィーヴォ・パー・レイ Vivo Per Lei が入り、頭差で最後方一気のゴー・フォース・ノース Go Forth North が4着。それにしてもシティー・トゥー・シティーは後ろから行き過ぎたような印象でした。
勝馬を管理するジェリー・ホーレンドルファー師は、2着シティー・トゥー・シティーの調教師でもありワン・ツー・フィニッシュ。調教師としては2連覇となります。勝利騎手はジョセフ・タラモ。これがG戦初勝利となるヘロー・ドリーは、これで今期は9戦6勝。デル・マーの芝コースは4戦3勝と得意にしている馬。前走もカリフォルニア産馬限定の一般ステークス(ソラノ・ビーチ・ハンデ)を2年連続で制覇したばかり(8月19日)でした。

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