1000ギニー候補続々

先週末はヨーロッパ競馬が大忙しでしたが、日曜日はアイルランドのカラー競馬場と、フランスのロンシャン競馬場が秋開催スタートで賑いました。アイルランド、フランスの順に紹介して行きましょう。

カラー競馬場はGⅠ戦を含めて4鞍のパターン・レース、レース順に取り上げます。最初はラウンド・タワー・ステークス Rownd Tower S (GⅢ、2歳、6ハロン)。馬場は yielding 、所により good と秋らしい状態でした。
2頭が出走を取り消して11頭立て。前走フランスに遠征しモルニー賞(GⅠ)で2着したオブライエン厩舎のジョージ・ヴァンクーヴァー George Vancouver が8対13という圧倒的な1番人気に支持されています。

去年このレースをライトニング・パール Lightning Pearl で制したゲール・ライオンズ厩舎のペースメーカー、テネシー・ワイルドキャット Tennessee Wildcat がペースを作り、テネシー・ワイルドキャットは6番手待機。ジョセフ・オブライエンの本命馬が抜け出すチャンスを見い出せない中、4番手に付けていた6番人気(11対1)のレター・モア Leitir Mor が先頭に立ち、2番人気(7対1)クーガー・リッジ Cougar Ridge を頭差抑えて優勝。2馬身半差でロイヤル・エンプレス Royal Empress が3着。逃げたテネシー・ワイルドキャットは4着に粘り、ジョージ・ヴァンクーヴァーは6着と期待を裏切りました。
レター・モアを管理するのはジム・ボルジャー師、主戦騎手ケヴィン・マニングが騎乗していましたが、ボルジャー師にとってこれがこのレース5勝目、マニング騎手にとっても4勝目となります。
同馬はこれまで9戦して勝星には恵まれませんでしたが、フェニックス・ステークス(GⅠ)で2着の実績馬。10戦目にしての初勝利でGⅢのタイトルを獲得しました。

続いてはソロナウェー・ステークス Solonaway S (GⅢ、3歳上、1マイル)。1頭取り消して8頭が出走し、こちらも1番人気は1本被りでした。7歳馬ながら衰えを感じさせないフェイマス・ネイム Famous Name 、目下G戦を3連勝中。
レースはピリ・ワンゴ Piri Wango が逃げ、ワン・スピリット One Spirit が2番手。残り2ハロンでワン・スピリットが先頭に立ち、4番手待機のフェイマス・ネイムもスパート。一瞬反応が鈍く感じられた本命馬でしたが、エンジンが掛かれば後は後続を離す一方。粘るワン・スピリットに2馬身4分の3差を付けて期待に応えました。4分の3馬身差3着にはアルーフ Aloof 。2歳(2戦2勝)以来のレースで注目された2番人気(5対1)、オブライエン厩舎(ジョセフ騎乗)のデクラレーション・オブ・ウォー Declaration Of War は4着、この後の変わり身に期待が持てそうです。

デルモット・ウェルド厩舎、パット・スマーレン騎乗のフェイマス・ネイムは、これが20勝目。内19勝はG戦かリステッド戦という馬主孝行な馬ですが、2週後にはイタリアでGⅠ初制覇を目指す計画だそうです。

G戦4連発の第3弾はブランドフォード・ステークス Blandford S (GⅡ、3歳上牝、1マイル2ハロン)、古馬4頭、3歳馬4頭の8頭立てで行われました。人気は割れ、3対1の1番人気には2頭が並びます。仏1000ギニー2着馬で前走ランウェイズ・スタッド・フィリーズ・ステークス(GⅢ)に勝ったアップ Up と、前走キルボイ・エステート・ステークス(GⅢ)に1番人で2着したカポナータ Caponata 。キルボイではアップが2番人気で僅差3着でしたから、この2頭の実力はほぼ拮抗していると見るのが妥当でしょう。

逃げ馬マニエリー Manieree が飛ばしてゴール前まで粘りましたが、夫々4・5番手に待機したカポナータとアップが同時に追い上げ、ゴールでは外を通ったアップが短頭差でカポナータを捉えていました。1馬身半差3着には英国(ロジャー・ヴァリアン厩舎)から挑戦したナーレイン Nahrain 。

アップは直前のG戦2鞍で期待に応えられなかったエイダン・オブライエン厩舎、ジョセフ・オブライエン騎乗の3歳馬。陣営では距離10ハロンは少し長過ぎると見做していたようですが、見事に克服してくれました。BCフィリー・アンド・メアを目指す旨の発表があり、20対1のオッズも出されています。

カラーの最後はGⅠのモイグレア・スタッド・ステークス Moyglare Stud S (GⅠ、2歳牝、7ハロン)。13頭と頭数が揃い、前々走シルヴァー・フラッシュ・ステークス(GⅢ)勝馬でアガ・カーンのハラシーヤ Harasiya が3対1の1番人気。前走デビュタント・ステークス(GⅡ)勝馬マイ・スペシャル・ジェイズ My Special J’s が9対2の2番人気で続きます。この2頭、デビュタントではハラシーヤが2着、シルヴァー・フラッシュではマイ・スペシャル・ジェイズが2着でしたから、既にライヴァル関係でもあります。

3頭出しアガ・カーン陣営のペースメーカー、カラマーヤ Karamaya が逃げてペースを作り、マイ・スペシャル・ジェイズは4番手、ハラシーヤは5番手で抜け出す機を窺います。しかし飛んできたのは6番手に控えていた5番人気(7対1)のスカイ・ランターン Sky Lantern 。残り1ハロンで桁違いの脚色で抜け、2着に食い込んだブービー人気(33対1)のシンティルラ Scintillula に2馬身半差を付けていました。本命ハラシーヤは頭差及ばず3着。マイ・スペシャル・ジェイズは精彩を欠き、騎手が追うのを止めたこともあって最下位敗退。2番人気を分け合った無敗馬センドマイラヴトゥーローズ Sendmylovetorose も6着と奮いませんでした。

スカイ・ランターンは英国のリチャード・ハノン厩舎、リチャード・ヒューズ騎乗。3走前にナースのリステッド戦に遠征して勝ちましたが、その後ニューマーケットのスイート・ソレラ・ステークス(GⅢ)とグッドウッドのプレスティージ・ステークス(GⅢ)が共に2着。特に前走では不利のある惜敗だっただけに、ここは馬本来の実力を出し切っての勝利だったのでしょう。
3歳になれば明らかに1マイルに適したタイプで、1000ギニーのオッズも16対1に上がっています。BCに向かうオプションもあるようですが、オーナーは香港在住とのことで今後の検討課題になる由。

アイルランドは以上として、フランスのロンシャン競馬場に向かいましょう。こちらはGⅢが3鞍のプログラムです。馬場状態は good 。

最初はラ・ロシェット賞 Prix La Rochette (GⅢ、2歳、1400メートル)。1頭取り消して7頭立てでしたが、7対5の1番人気に支持されたのは、他の牡馬6頭を抑えて唯一の牝馬ワッタ・ネイム What A Name 。前走ドーヴィルで初勝利を記録した馬ですが、このときも牡馬を蹴散らしての7馬身差圧勝でした。

レースは逃げたアヴァンテージ Avantage を4番手でマークし、楽に抜け出したワッタ・ネイムの圧勝。粘ったアヴァンテージが1馬身4分の3差で2着、3番手から追い込んだパール・フリュート Pearl Flute が首差3着。

ミケール・デルザングレ厩舎、クリストフ・ルメール騎乗のワッタ・ネイムはこれで3戦2勝3着1回。馬主はカタールの王族で、ニューマーケットの1000ギニーに意欲を燃やしているとか。この楽勝で12対1の高いオッズが出されました。
この後はマルセル・ブーサック賞やチーヴリー・パーク・ステークスにも登録があるようですが、デルザングレ師によれば再度牡馬と対決すべくジャン・リュック・ラガルデール賞を視野に入れているとか。いずれにしてもGⅠ狙いになることは間違いないでしょう。大物の出現です。

続いてはリュテース賞 Prix Lutece (GⅢ、3歳、3000メートル)、仏セントレジャーのトライアルですね。7頭立て。ドーヴィルで行われた同じ距離のリステッド戦(8月15日、馬場は good to soft)が参考レースで、その1着から5着までが顔を揃え、これを含めて3連勝中のオンリー・ア・プレジャー Only A Pleasure が2対1の1番人気に支持されていました。

レースは3番人気(58対10)のアミアンズ Amiens が逃げ、オンリー・ア・プレジャーは4番手待機。しかし優勝はドーヴィルで5着だったヴェレマ Verema 、66対10の4番人気でした。首差2着はドーヴィルでも2着だった2番人気(5対2)のカンティクム Canticum 、4分の3馬身差でオンリー・ア・プレジャーが3着。ドーヴィルはほぼ2馬身以内に5頭が入る混戦でしたから、今回は展開の綾などで着順が入れ替わりました。

勝馬はアガ・カーンの所有馬で、アラン・ド・ロワイヤー=デュプレ厩舎。騎乗したクリストフ・ルメールは、一つ前のロシェット賞に続くG戦ダブル達成です。これが未だ5戦目で2勝目のヴェレマ、ドーヴィルの小回りコースよりロンシャンの広いコースで力を発揮するタイプのようです。

最後にパン賞 Prix du Pin (GⅢ、3歳上、1400メートル)。12頭が出走し、前走モーリス・ド・ギースト賞(GⅠ)で3着入線し4着に降着となったアメリカン・デヴィル American Devil 。

しかし本命馬は10着と期待を裏切り、優勝は5番人気(107対10)のブルー・ソアーヴ Blue Soave 。1番枠スタートを利しての逃げ切り勝ちです。距離によっては枠順が結果に大きく左右するのがロンシャン競馬場の特徴でしょう。1馬身半差2着も先行したソー・ロング・マルピック So Long Malpic 、更に4分の3馬身差でケンダム Kendam が3着。

勝馬を管理するファブリース・シャペ師は、7月28日のドーヴィル初日にローパルティー Leaupartie でプシケ賞(GⅢ)を制した調教師。フランスのローカル競馬で2連勝してきた4歳馬で、去年のこのレースは4着、その年はポール・ド・ムーサック賞(GⅢ)で3着のG戦入着実績もあった馬です。騎乗したのはティエリー・テュイレ騎手。

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