トレイルブレイザーは2着健闘

土曜日のアメリカはG戦オンパレード。ヨーロッパの向こうを張ったわけでもないでしょうが、こちらもブリーダーズ・カップを1か月後に控えて、各ジャンルのトライアルが花盛りです。
余りにも扱うレース数が多いので、先週に倣って日記を2分割してレポートしようと思います。で、前半はアケダクト、ホーソン、それに日本からトレイルブレイザーが参戦したサンタ・アニタの3場を。

ベルモント競馬場の最初はフリゼット・ステークス Frizette S (GⅠ、2歳牝、8ハロン)。次のシャンペンと同様、勝馬にはBCへの優先出走権が与えられます。ダート・コースは fast 、1頭取り消して6頭がゲートに向かいましたが、ここで大変なアクシデント。ゲートで暴れたローヴィング・パトロール Roving Patrol が落馬し、煽りを食ってスイート・シャーリー・モー Sweet Shirley Mae が蹴られて負傷。この2頭が取り消すことになり、スタートは13分も遅れてしまいます。結局は4頭立てになってしまい、2戦無敗のドリーミング・オブ・ジュリア Dreaming of Julia が1対9の圧倒的1番人気。
レースは2番人気(5対2)、本命の相手と目されたマイ・ハッピー・フェイス My Happy Face が逃げ、ドリーミング・オブ・ジュリアは2番手追走。直線で並び掛けた本命馬がリードを広げるかに思われましたが、マイ・ハッピー・フェイスは渋太く粘って抜かせず2頭のマッチレースに。最後はドリーミング・オブ・ジュリアが捻じ伏せるように頭差でマイ・ハッピー・フェイスを抑えて辛勝。3着は10馬身4分の3も離されてトースティング Toasting が入りました。
勝馬はトッド・プレッチャー厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗。これで3戦無敗、デビュー戦が10馬身半、2戦目の一般ステークスは16馬身4分の1差と大差勝ちを続けましたが、初体験のG戦では思わぬ苦戦でした。しかし2着もここが3戦目でドミンゲス厩舎の期待馬。着差こそ大接戦でしたが、2頭のレヴェルが高いと見ても良いのかも知れません。勝ったドリーミング・オブ・ジュリアはBCジュヴェナイル・フィリーズに向かうでしょうが、このハードなレースの影響をじっくり見てからの判断となるでしょう。

続いてシャンペン・ステークス Champagne S (GⅠ、2歳、8ハロン)。1頭取り消して6頭立て。フリゼットの勝馬と同じトッド・プレッチャー厩舎、ホープフル・ステークス(GⅠ)を含めて3戦無敗のシャンハイ・ボビー Shanghai Bobby が8対5の1番人気を集めています。
敢えて西海岸から強豪に挑んできたゴールデンセンツ Goldencents が逃げ、シャンハイ・ボビーは2番手待機。直線で楽に抜け出した本命馬は、そのままゴールデンセンツを問題にせず、5馬身差の圧勝で期待に応えました。プレッチャー師のダブル達成、シャンペンは4勝目となります。2着ゴールデンセンツと3着フォーティファイ Fortify の着差は1馬身。イギリスからジェレミー・ノセダ厩舎が遠征させたチーフ・ハヴォック Chief Havoc は6着どん尻に終わりました。
これで無傷の4連勝、こちらの鞍上は女流のロージー・ナプラヴニクでした。今回の楽勝で、恐らくBCジュヴェナイルは本命で臨むことになるでしょう。

ベルモントの最後はジャマイカ・ハンデキャップ Jamaica H (芝GⅠ、3歳、9ハロン)。芝コースは good 、ここも1頭が取り消して7頭が出走してきました。パシフィック・クラシック(芝GⅠ)の勝馬デューラハン Dullahan が8対5の1番人気。ここにもイギリスからの挑戦があり、ブライアン・ミーハン厩舎のコジト Cogito がランフランコ・デットーリ騎乗で臨みます。5対2の2番人気。
そのコジトはスタートをミスして後方から。伏兵(23対1)キング・クリーサ King Kreesa が逃げ、デューラハンは後方に待機。しかしキング・クリーサの逃げ足は衰えず、漸く追い込んできたのは2~3番手を進んだブービー人気(28対1)のキング・デヴィッド King David 。伸び悩む人気馬を尻目に、キング・クリーサに半馬身差の番狂わせ。4分の3馬身差3着にサマー・フロント Summer Front が入り、コジト4着、デューラハン5着の順。1・2着がいずれも20倍以上という大荒れの結末でした。
勝ったキング・デヴィッドは、日本産馬ハットトリックの仔というのが嬉しいニュース。3週間前に調教師であるマイケル・メーカー氏が3万5千ドルでクレーミング・レースに勝った所を購入したばかり。今年は7戦6勝と堅実に走っていますから、メーカー師としては思わぬ拾いものだったワケ。この馬にもロージー・ナプラヴニクが騎乗しており、女史としては別厩舎でのG戦ダブル達成の快挙でもありました。

ここで早くレポートを揚げたいサンタ・アニタ競馬場に行きましょう。G戦は2鞍です。先ずはアロヨ・セコ・マイル Arroyo Seco Mile (芝GⅡ、3歳上、8ハロン)。去年まではオーク・トゥリー・マイル Oak Tree Mile と呼ばれていた一戦で、我がトレイルブレイザーがBCへのステップとして出走することに注目です。馬場は firm 、5頭立てです。前走デル・マー・マイル・ハンデ(芝GⅡ)が良いガイドとなり、ハナ差で1・2着したオビアスリー Obviously とミスター・コモンズ Mr. Commons の再戦と見られ、前者が6対5の1番人気、後者は7対5の2番人気で続いていました。米デビューとなるトレイルブレイザーは5対1の3番人気。
レースはオビアスリーが先手を取っての逃げ。これをミスター・コモンズとミッドナイト・インタールード Midnight Interlude が交互に追走、トレイルブレイザーは4番手に置かれます。直線、オビアスリーが逃げ込みを図り、ミスター・コモンズも追い上げますが、最も脚色が目立ったのがトレイルブレイザー。結局はオビアスリーが逃げ切りましたが、トレイルブレイザーが半馬身差まで迫っての2着。ミスター・コモンズは更に半馬身差3着に終わりました。もう少し距離が長ければ、トレイルブレイザーが差し切っていたかもしれませんね。1マイルの勝ち時計は1分31秒95と速く、レコードに0.06の快走でした。
マイク・ミッチェル厩舎、ジョセフ・タラモ騎乗のオビアスリーはアイルランドから今年3月に転戦して来た馬。これで3連勝となり、BCマイルを目指す意向のようです。一方2着のトレイルブレイザー、騎乗した武豊ジョッキーも、“ここは距離がチョッと短かったね。本番のターフは距離も伸びるし、トライアルとしては絶好の内容でしょう”と次走に期待を籠めました。

サンタ・アニタからはもう一鞍、BCスプリントの優先出走権対象レースとなるサンタ・アニタ・スプリント・チャンピオンシップ Santa Anita Sprint Championship (GⅠ、3歳上、6ハロン、BC)。これも今年改名された一戦で、以前はエンシェント・タイトル・ステークス Ancient Title S として知られていたもの。fast の馬場に7頭、去年のBCスプリント覇者アマゾンビー Amazombie が登場し、4対5の断然1番人気に支持されていました。
レースはキャッスルタウン Castletown の逃げをルネーズゴットジップ Reneesgotzip が追走する速い流れ。3番手でマークしたアマゾンビーが直線で先行馬を交わし一旦は先頭に立ちましたが、これを追った7対1のコイル Coil が鋭く伸び、後方から急襲するキャピタル・アカウント Capital Account を頭差抑えて優勝。BCへの切符を手にしました。3着は4分の3馬身差でジミー・クリード Jimmy Creed が飛び込み、アマゾンビーは4着。1着から3着まで全てオッズが7対1という珍しい結果です。また1・2着はいずれもボブ・バファート厩舎の馬。バファート師のワン・ツー・フィニッシュでもありました。肝心のバファート師、この日はインディアナのオークス、ダービー(別途レポートします)のために出張中。カリフォルニアは不在でした。
マーチン・ガルシアが騎乗したコイルは、去年のハスケル・インターナショナル(GⅠ)以来のグレード戦勝利。今期は3戦目で、前走パット・オブライエン・ステークス(GⅡ)ではキャピタル・アカウントの2着でしたから、今回は逆転劇ということにもなりました。陣営はコイルをスプリント、キャピタル・アカウントはダート・マイルという構想を持っていたようですが、今回の結果でプランの見直しもあるそうな。

さて、このレポートではもう一つ、ホーソン競馬場のホーソン・ゴールド・カップ・ハンデキャップ Hawthorne Gold Cup H (GⅡ、3歳上、10ハロン)も紹介しておきましょう。fast のメイン・コース、1頭取り消しがあり6頭立てで行われています。4対5の1番人気は、今期6戦5勝と好調のアルタネーション Alternation 。オークローン・パークのステークス3戦を総なめし、ピムリコのピムリコ・スペシャル(GⅢ)も制しています。
しかし結果は波乱。先頭でレースを引っ張りましたが、急速に脚を失くして6着どん尻に敗退です。優勝は最後方から大外を回って強烈に追い込んだブービー人気(16対1)のプール・プレイ Pool Play 。半馬身差2着に2番人気(2対1)のシース Cease が入り、1馬身4分の1差3着は2010年のBCマラソンに勝ったエルダーファー Eldaafer 。
勝馬を管理するマーク・キャスク師は、前日にキーンランドでアルシバイアディーズ・ステークス(スプリング・イン・ジ・エア Spring in the Air)を勝ったばかり。良いことは重なるものです。鞍上はミゲル・メナ騎手。プール・プレイは去年大穴(36対1)でスティーヴン・フォスター・ハンデ(GⅠ)に勝った馬で、その直後に故障。復帰後、前走ワシントン・パーク・ハンデ(GⅢ)では3着に入っていました。陣営ではBCマラソンへの参戦を計画している由。

土曜日のアメリカ競馬、ここで一旦締めと致します。残るは開幕したばかりのキーンランドのG戦5連発とインディアナのオークス・ダービー。一息入れてからパソコンに向かうことにしましょう。

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