アメリカ版QEⅡは
BCシリーズまであと3週、チャレンジ・シリーズのトライアルを全て終えたアメリカは、比較的静かな週末を迎えました。それでもこの土曜日はG戦が4場で5鞍。順次の紹介です。
最初はベルモント・パーク競馬場からの2鞍、いずれも芝の内コースを使うG戦で、最初はアセーニア・ステークス Athenia S (芝GⅢ、3歳上牝、8.5ハロン)。good とやや柔らかい馬場に2頭が取り消し、8頭が出走してきました。6対5の1番人気は、5月にヴァイオレット・ステークス(芝GⅢ)に勝っているルーセニア Ruthenia 。
人気薄の馬がペースを作ったこともあってか、レースは最後で追い込みが決まる展開。6番手の内を進み、直線では外に出し、外から2頭目を鋭く追い込んだ3番人気(9対2)ラ・クローシュ La Cloche の鮮やかな差し切り勝ち。一旦先頭に立ったエンバー Embarr が1馬身4分の1差で2着、内から伸びた2番人気(5対2)のラーフィング Laughing が4分の3馬身差で3着。ルーセニアは首差及ばず4着でした。
ジェームス・トーナー厩舎、ジュニア・アルヴァラード騎乗のラ・クローシュは、これが5勝目ながらG戦は初勝利。母はQEⅡチャレンジ・カップ(芝GⅠ)に勝った名牝メモリーズ・オブ・シルヴァー Memories of Silver で、先日引退したGⅠ馬(ガーデン・シティー・ステークス、ダイアナ・ステークス)ウインター・メモリーズ Winter Memories の半妹でもある良血馬で、5歳にして漸く開花したとも言えるでしょう。
続いてニッカーボッカー・ハンデキャップ Knickerbocker H (芝GⅢ、3歳上、9ハロン)。ここは1頭が取り消して7頭立て。去年のこのレースを制したボイステラス Boisterous がイーヴンの1番人気に支持されていました。
ストーミー・ロード Stormy Lord の逃げを4~5番手の内で待機したボイステラス、3コーナー手前で一旦は最後方に下げながらも直線では大外に回して急襲、これも2着に突っ込んだシー・トーブ See Tobe を外から2馬身捉えて見事に期待に応えました。ハナ差でチューン・ミー・イン Tune Me In が3着。
これで2連覇達成の5歳馬ボイステラスは、クロード・マゴーヒー厩舎、ホセ・レズカノ騎乗。今期はフォート・マーシー・ステークス(芝GⅢ)にも勝っており、アーリントンではハンデ(芝GⅢ)では2着したものの本番ミリオン(芝GⅠ)では9着と惨敗していました。グレードを下げたここで快勝し、6月は3着に終わった(マンハッタン・ハンデ)GⅠ獲りに再度チャレンジします。
今度はフロリダのカルダー競馬場から、スペンド・ア・バック・ハンデキャップ Spend A Buck H (GⅢ、3歳上、8.5ハロン)。雨のため朝方は sloppy で行われていたダート・コースですが、メインレースの行われる第9レースでは good にまで回復していました。それでも2頭が取り消して6頭立て。格上と思われていたグルメ・ディナー Gourmet Dinner が取り消したため、地元のキャッシュ・ルールズ Cash Rules が2対5の一本被りの1番人気に推されていました。
ディサイシヴ・モーメント Decisive Moment 、トゥー・イズ・トゥー・メニー Two is to Many の激しい先行争いの3番手に付ける利もあって、直線では早々と先頭、内から伸びるドゥクドゥク Ducduc にヒヤリとさせられる場面もありましたが、4分の3馬身差で圧倒的人気に応えています。3着は11馬身もの大差が開いてフラッター・ディス Flatter This 。
地元デヴィッド・ホークス厩舎、ルイス・サエズ騎乗のキャッシュ・ルールズは、これが7勝目でステークスは3連勝。G戦は初勝利となります。
続いては雨が叩き付けるホーソン競馬場から、ホーソン・ダービー Hawthorne Derby (芝GⅢ、3歳、9ハロン)。何とか行われた芝コースは soft 、2頭が取り消して12頭が出走してきました。3対1の1番人気はロージー・ナプラヴニク騎乗のリー Lea 。
ところがリーはスタートで馬場に脚を取られて滑り、この時点で苦戦を強いられます。レースはフィナーレ Finale の逃げを3番手で追走したフィルム・ショット Film Shot が抜けた所に、後方に待機していた人気薄(20対1、10番人気)のトゥー・マンス・レント Two Months Rent が鋭く伸びて頭差の差し切り勝ち。映像を見ていても雨で煙る中、何処から伸びてきたのか判らないほどの忍び足でした。3着は3馬身4分の3差がついて何とか本命のリー。
これがステークスさえ初勝利となるトゥー・マンス・レントはジェームス・トーナー厩舎、ヘスス・ロペス・カスタノン騎乗。9月22日にデラウエア・パークで行われたケント・ステークス(GⅢ)で、39対1の大穴で3着に来たことがあるのが唯一の記憶に残る成績だったでしょう。
土曜日、というか今週最後のG戦はキーンランド競馬場で行われたGⅠ、クィーン・エリザベスⅡ世チャレンジ・カップ・ステークス Queen Elizabeth Ⅱ Challenge Cup S (芝GⅠ、3歳牝、9ハロン)。冒頭に1996年の勝馬メモリーズ・オブ・シルヴァーを紹介したレースですね。 firm の芝コース、8頭が出走してきました。去年のBCジュヴェナイル・フィリーズ・ターフの覇者で、GⅠのアルシバイアディーズ・ステークスにも勝っているステファニーズ・キッテン Stephanie’s Kitten が2対1の1番人気。
レースは2番人気(3対1)デイアットザスパ Dayatthespa が絶妙なペースでの逃げ、そのまま3番手から追い縋るセンター・コート Center Court に2馬身差を付けて逃げ切ってしまいました。更に半馬身差でベター・ラッキー Better Lucky が3着。ステファニーズ・キッテンも直線入口では3番手まで押し上げたものの、最後は伸びず6着敗退。
チャド・ブラウン厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のデイアットザスパは今期5戦5勝と絶好調。アパラチアン・ステークス(芝GⅢ)、ヒアカムズザブライド・ステークス(芝GⅢ)に続きG戦は3勝目、初のGⅠ制覇となります。これはBCに優先出走権が与えられるレースではありませんが、陣営は当然ながらBC挑戦を検討するでしょう。
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