ハットトリック産駒、惜しくも2着

BCを終えた11月のアメリカ競馬は、来週末が年内最後のG戦フェスティヴァル状態。今週は嵐の前の静けさとでも言いましょうか、GⅡ・GⅢの比較的地味なグレード戦が行われました。

アケダクト競馬場のディスカヴァリー・ハンデキャップ Discovery H (GⅢ、3歳、9ハロン)は、ニューヨーク州では今年最後の3歳限定グレード戦となります。fast の馬場、6頭が出走してきました。3対4の1番人気に支持されたウィリー・ビーミン Willy Beamin は、6連勝の頂点でキングズ・ビショップ・ステークス(GⅠ)を制した馬。前走オクラホマ・ダービー(一般ステークス)では2着で連勝は途切れましたが、ここはトップ・ウエイト(121ポンド)も何のその、GⅠ馬の貫録で突破できるという評価でしょう。
そのウィリー・ビーミンが大外6番枠から好スタート、先手を取ってレースを引っ張ります。直線も内ラチ沿いに先頭を守っていましたが、スタートで挟まれて後方5番手を追走した2番人気(7対2)のコールド・トゥー・サーヴ Called to Serve が外から一気の脚で本命馬を捉え、3頭の2着争いに4馬身4分の3差を付ける快勝です。写真判定の2着争いは、結局頭差でウィリー・ビーミンが粘り切り、ハナ差の3着にはシャックルフォード Shackleford の半弟ステファノーツィー Stephanoatsee が入りました。
ニック・カナーニ厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のコール・トゥー・サーヴは、前々走オクラホマ・ダービーではウィリー・ビーミンに続いて3着だった馬。その前はヴァージニア・ダービー(GⅡ)で2着、前走はベルモントの一般ステークス(テンペランス・ヒル・ステークス)で2着でした。デビューからの6戦はカリフォルニアで走り2勝、ニューヨークに遠征して来てのG戦初勝利(通算では3勝目)となります。

続いては長期開催(10月から来年3月一杯)のデルタ・ダウンズ競馬場から、同場でただ2鞍のみ行われるグレード戦を紹介しましょう。共に2歳戦で、最初は牝馬によるデルタ・ダウンズ・プリンセス・ステークス Delta Downs Princess S (GⅢ、2歳牝、8ハロン)。fast の馬場に9頭立て。このレースのトライアルに相当する一般ステークス(マイ・トラスティ―・キャット・ステークス)の上位3頭が顔を揃え、1番人気で勝ったアスムッセン厩舎のマダム・カクタス Madame Cactus がここでも7対5の1番人気に支持されていました。
しかし優勝は、逃げたアンヘッジド Unhedged を3番手でマークした2番人気(5対2)のローズ・トゥー・ゴールド Rose to Gold です。半馬身差2着に伏兵(25対1)タッチ・マジック Touch Magic が食い込み、更に2馬身4分の1差でシッティン・アット・ザ・バー Sittin At the Bar が3着。マダム・カクタスは4着に終わっています。
勝ったローズ・トゥー・ゴールドはサルヴァトーレ・サントロ師の管理馬で、パコ・ロペス騎乗。前走、無敗で臨んだキーンランドのアルシバイアディーズ・ステークス(GⅠ)は12着の惨敗でしたが、恐らく初体験のポリトラック・コースに面食らったのでしょう。ダート・コースに戻った此処では無敗を守り、カルダー競馬場での2勝を含めて通算4戦3勝としました。

続いては100万ドル・レース、牡馬によるデルタ・ダウンズ・ジャックポット・ステークス Delta Downs Jackpot S (GⅢ、2歳、8.5ハロン)。こちらも9頭が出走してきましたが、BCジュヴェナイル・スプリントを15対1の伏兵で制したルーカス厩舎のハイテイル Hightail が登場して注目されます。しかしBCはフロックとの見方が多く、オッズは8対1と、ここでも余り期待されていません。9対5の1番人気に支持されたのは、サンフォード・ステークス(GⅡ)の勝馬バーン・アイデンティティー Bern Identity 。前走ここデルタ・ダウンズの一般ステークス(ジャン・ラフィット・ステークス)も3馬身差で圧勝して好調を維持しています。
レースは大外9番枠から好スタートを切った2番人気(5対2)のゴールデンセンツ Goldencents が快調に飛ばし、鮮やかな逃げ切り勝ち。バーン・アイデンティティーも後方から強烈な差し足で勝馬に迫りましたが、1馬身4分の3差届かず2着まで。更に1馬身4分の1差3着には伏兵(25対1)マイルート Mylute が入り、先行を争ったハイテイルは一度も先手を奪えず4着に終わりました。
ダグ・オネイル厩舎、ケヴィン・クリッガー騎乗のゴールデンセンツは、デル・マーの新馬戦を5馬身半差で快勝し、シャンペン・ステークス(GⅠ)でもチャンピオンのシャンハイ・ボビー Changhai Boby の2着した実力馬。ブリーダーズ・カップは登録が無かったためパスし、ここに標準を合わせていた感があります。

土曜日の最後は、所謂ナイター競馬のチャーチル・ダウンズ競馬場。ナイターは和製英語ですから、現地では“Downs after Dark”の愛称で親しまれているようです。ケンタッキーは土曜の夜でも、日本では日曜日の朝。レポートが遅れるのも致し方ありませんね。チャーチル・ダウンズは11月25日が開催フィナーレですから、最後から2週目のG戦でもあります。
昨日のG戦は2鞍で、先ずはコモンウェルス・ターフ・ステークス Commonwealth Turf S (芝GⅢ、3歳、8.5ハロン)。開催の末期とあって登録は出走枠を超えた14頭、結局2頭が除外となってフルゲートの14頭立てで行われました。芝コースは firm 、前走ステークス・デビューで3着(ホーソン・ダービー(芝GⅢ)、重馬場、1番人気)のリー Lea が5対2の1番人気でしたが、日本の注目はハットトリック Hat Trick 産駒のキング・デヴィッド King David でしょう。前走ジャマイカ・ハンデ(芝GⅠ)優勝がフロックでないことを証明すべく、5対1の2番人気で続きます。本命リーを破ってホーソン・ダービーに勝ったトゥー・マンス・レント Two Months Rent も出走してきましたが、17対1(8番人気)の人気薄。
レースはプレッチャー厩舎のフィナーレ Finale が飛ばす混戦。3番手から2番手へと徐々に押し上げたリーが直線ではスムーズに抜け、後方待機から馬群を捌いて追い込むキング・ダヴィッドを4分の3馬身差抑えて見事期待に応えました。キング・ダヴィッドは後手を踏んだ分だけ届かなかった内容で、敗れてなお強しの印象を与えました。1馬身差で大外発走のルックアウト Lookout が3着、トゥー・マンス・レントは12着惨敗です。やはり馬場が良ければリーの実力が上、という証明にもなりましょう。
これがステークス初勝利となるリーは、アルバート・ストール厩舎、ブライアン・ジョセフ・ヘルナンデス騎乗。名門クレイボーン牧場の生産馬で、チャーチル・ダウンズでのステークス勝利は31勝目となる由。ライヴァルであるカルメット牧場の32勝にあと1勝と迫った、と報じられていました。

最後はミセス・リヴィーア・ステークス Mrs. Revere S (芝GⅡ、3歳牝、8.5ハロン)。こちらは12頭の3歳牝馬が出走。サラトガのレイク・プラシッド・ステークス(芝GⅡ)、キーンランドのQEⅡチャレンジ・カップ(芝GⅠ)と、ここ2戦で惜しい2着が続いているセンター・コート Centre Court が3対2の離れた1番人気に支持されています。
伏兵(22対1)イングリッシュ・クラス English Class の逃げを3馬身離れた2番手で追走したセンター・コート、第4コーナー手前でこれを捉えると直線は独壇場。最後は抑える余裕を見せ、2着リーディング・アストレー Leadong Astray に2馬身差を付けて期待に応えました。更に4分の3馬身差でコロニアル・フラッグ Colonial Flag が3着。勝馬に騎乗したジュリアン・ルパルーは、コモンウェルス・ターフではキング・デヴィッドで惜しい2着でしたが、ここは完璧な騎乗で憂さを晴らした形です。
ジョージ・アーノルド厩舎のセンター・コート、G戦は6月16日チャーチル・ダウンズのリグレット・ステークス(芝GⅢ)、7月25日サラトガのレイク・ジョージ・ステークス(芝GⅡ)に続く3勝目で、ケンタッキーでは3戦3勝と無敵。来年の更なる飛躍が期待されましょう。日本にも馴染の血統であることも注目で、詳しいことは以前の日記を読み返してください。

ということで日本にも縁の深い結果となったチャーチル・ダウンズ、我が国の競馬マスコミは全く注目していないようですが、もっと世界に目を向けて下さい、ということで今回のレポートは締め。

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