サルビアホール クァルテット・シリーズ第17回

昨日は鶴見サルビアホールのSQS第5シーズン最終回、ロータス・ストリング・クァルテットのコンサートを聴いてきました。以下のもの。

ベートーヴェン/弦楽四重奏曲ヘ長調作品14-1b
ブラームス/弦楽四重奏曲第2番イ短調作品51-2
     ~休憩~
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第13番変ロ長調作品130

今年結成20年を迎えるロータスQは、何故かこれまで縁が無く今回が初体験です。ということでプロフィールを備忘風に。
1992年に結成した時は4人のメンバーが全て日本人でした。私は当時の室内楽事情には全く疎いので未知の事柄でしたが、プログラムによると「すでに日本国内での活躍が約束されていた若い音楽家たちが、そのキャリアを断ち切って、弦楽四重奏という深遠、厳格な世界を極めるべく、そろってドイツに留学したことは過去に例がなく、大きな注目を浴びた」由。
従って日本人で結成された団体ながら、ドイツのシュトゥットガルトを本拠とする団体と紹介されています(ホームページもドイツ語)。実際、昨夜も「来日公演」の一環で、今回はJTホール、杉並公会堂、福岡、名古屋、大阪(いずみホール、結成20周年記念公演、)鵠沼(12月4日)を巡り、ツアーの合間にはレコーディングも行われる予定と聞きました。

ほぼ2年おきに来日しているようですが、巡り合わせで初めて聴くことが出来ました。
現メンバーは、ファーストが小林幸子、セカンドはマティアス・ノインドルフ、ヴィオラを山碕智子、チェロは斎藤千尋という方々。初代セカンドは茂木立真紀さんでしたが、2代目のマティアスはシュトゥットガルトQのファーストを長年務められたヴェテランとのことです。
師はメロスQ。チラシのキャッチコピーも「メロス・クァルテットの後継として大活躍」とありました。

私がメロスを聴いたのは、ファーストのヴィルヘルム・メルヒャー氏が没する(2005年)少し前、晴海のSQWの一環でしたが、メルヒャー氏の死もSQWの某会での告知で知りました。
最後のコンサートの曲目は忘れましたが(当時はブログの習慣も無く、記録しておかなかったことが悔やまれます)、アンコールにベートーヴェンの130から第2楽章プレストが演奏されたことだけは良く覚えています。あの響きは今でも耳元で鳴っているよう。
ということで、今回はメインに作品130が置かれていることに大注目です。もちろん極私的な興味ですが・・・。

全体の印象は、やはりドイツ室内楽の伝統をしっかりと受け継いでいるグループ、と言うに尽きるでしょうか。昨今の若手ドイツ人グループ以上にドイツ的と言えるかもしれません。
聴きモノの130にしても、決して肩に力が入らず、かと言って柔一辺倒の音楽では無い。安心して最初から最後までベートーヴェンの世界に浸れる演奏でした。前回のアポロン・ミュザジェートのようなサプライズが無い代わりに、真正クァルテットの響きを満喫できる、ということでしょう。クァルテットには様々なアプローチがあるものです。
今年も作品130の名演に接することが出来たことに感謝!

冒頭のベートーヴェン作品は、言わば番外編のクァルテット。第9番のピアノ・ソナタをベートーヴェン自身がクァルテットに編曲したもので、調がソナタの変ホ長調からヘ長調に替っています。
シャープ系からフラット系に移調されていることもあるでしょうが、ソナタとはかなり印象が異なりますね。以前に晴海でプレアデスQがベートーヴェン・ツィクルスの一環で取り上げたのを聴いたことがありますが、各団体のベートーヴェン全集には含まれないだけのことはあるという感想。
手元の旧ベートーヴェン全集には含まれておらず、楽譜も見たことはありません。記録を見るとメロスによる録音もあるそうで、ロータスとしては師の後継として伝統を引き継ぐ姿勢の表れと思いました。

2曲目のブラームスは、今回のロータス日本ツアーの目玉になっているようで、クラリネット五重奏曲と共に日本各地で演奏が予定されています。(今日の鵠沼では第1番が披露されるはず)
ブラームスは、先日エクの定期で第3番を聴きましたが、第2番はかなり重い作品。どちらかと言うと速目のテンポで、極端に重厚になることを避けていたように聴きましたが、それでもブラームスのメタボな風貌が連想されてしまいます。
ベートーヴェンの後期、特に130がアレグロの終楽章で演奏されただけに、ボンの巨匠の天衣無縫でさえある魂の昇華が一層引き立つ様な印象を持ちました。

アンコールは、ハイドンの「五度」から第2楽章。ファーストの音色の美しさにウットリ。このクァルテットの全曲も鵠沼で演奏されることになっています。

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