大物ヴァイオレンスがGⅠ制覇
今週のアメリカ競馬もG戦が組まれているのは土曜日の2場のみ。日曜日はカリフォルニアのハリウッド・パーク競馬場が開催フィナーレを迎えますが、G戦は土曜日が最終日となります。
最初にガルフストリーム・パーク競馬場のダニア・ビーチ・ステークス Dania Beach S (芝GⅢ、2歳、8ハロン)。予定通り good の芝コースで行われ、メインコース変更時のみ出走を予定していた1頭が除外されての10頭立て。前走キーンランドのブリーダーズ・フューチュリティー(GⅠ)は不利があって9着に敗れたプレッチャー厩舎のチャーミング・キッテン Charming Kitten がイーヴンの1番人気に支持されていました。
レースは3番人気(5対1)のテーツ・ランディング Tate’s Landing が逃げましたが、2番枠スタートを活かして内々の3番手に付けていた伏兵(16対1、7番人気)ミスティック・ラヴ Mystic Love が直線でも内ラチ沿いに抜け出し、4番手から外を回って追い込む本命ミスティック・ラヴを半馬身抑えての逆転劇です。3着には1馬身差で後方から追い込んだニューファウンド・ザッパー Newfound Zapper 。
ジェシカ・カンピテリ厩舎、エルヴィス・トルヒーヨ騎乗のミスティック・ラヴは、出走馬中唯1頭の牝馬。9月にローレル競馬場で初勝利を記録し、前走は10月同じローレルの一般ステークスで1番人気に推されながら5着に敗退していました。これで通算成績は4戦2勝。今回は牡馬を蹴散らしましたが、次走は年明け、無理をせず牝馬限定戦に使っていく由。
続いて冒頭にも記した通り、日曜日にグランド・フィナーレを迎えるハリウッド・パーク競馬場、最初はハリウッド・ターフ・カップ Hollywood Turf Cup (芝GⅡ、3歳上、12ハロン)。レース創設の翌々年、第3回の1983年から一貫して去年まではGⅠに格付けされてきましたが、今年はGⅡに降格。アメリカのG戦格付けは浮き沈みが激しいのが常ですが、伝統の一戦が格下げされるのは寂しいことでもあります。
firm の芝コースに10頭立て。前走ハリウッド・ダービーでは凡そ届かないと思われる最後方からの競馬で、負けてなお強しの差し脚で2着に食い込んだ英国出身のグランディア Grandeur が8対5の1番人気。1992年のビェン・ビェン Bien Bien 以来となる3歳馬によるターフ・カップ制覇に期待が掛かります。
1マイル半の長距離戦とあって流れはゆったり。先ず2番人気(4対1)でこれまた3歳馬のオプティマイザー Optimizer が、続いて3番人気(9対2)のスリム・シェイディー Slim Shadey が先頭に立つ展開。本命グランディアは前走ほど離されず、5番手で抜け出す機会を窺います。直線、内から伏兵(29対1)アルゼンチン産のインターアクション Interaction がスルッと抜けましたが、外目から満を持していたグランディアの末脚が爆発、並ぶ間も無く4分の3馬身差インターアクションを捉えて見事期待に応えました。2馬身4分の1差でオプティマイザーが3着、更に1馬身4分の1差でスリム・シェイディーが続きます。
3歳として前回制覇したビェン・ビェンは先頭入線のフレーズ Fraise が失格して繰上りの優勝でしたから、今回は正真正銘の3歳馬によるターフ・カップ制覇。達成したグランディアは、前走のあとイギリスのジェレミー・ノセダ厩舎からパトリック・ギャラガー師の下に転じた馬。前回の初騎乗で思い切った騎乗を見せたギャレット・ゴメスは、今回は距離(同馬にとっては初挑戦)も考えて遥かに積極的なレースでの完璧な内容でした。今回はアメリカでの3戦目となりますが、これでオーク・トゥリー・ダービー(GⅡ)に続く2勝とスッカリ水も合ってきた印象。今回は残念ながらGⅡに格下げされていましたが、来年の古馬芝GⅠ戦線を賑わす一頭になるでしょう。
最後はキャッシュコール・フューチュリティー CashCall Futurity (GⅠ、2歳、8.5ハロン)。ターフ・カップ同様1981年に創設され(当初はハリウッド・フューチュリティー)、1983年以来ずっとGⅠにランクされてきたレース。こちらは今年もGⅠに留まり、今年最後の2歳馬によるGⅠ戦でもあります。
オールウェザーのメインコースは fast 。11頭が出走し、これまで2戦無敗、前走アケダクトのナシュア・ステークス(GⅡ)を制しているヴァイオレンス Violence が6対5の1番人気。BCジュヴェナイルで断然本命のシャンハイ・ボビー Shanghai Bobby に頭差まで詰め寄ったヒーズ・ハッド・イナフ He’s Had Enough が7対2の2番人気で続きます。この人気2頭にボブ・バファート厩舎が新星4頭で挑戦する構図。
レースはバファート四重奏団の1頭、リアリー・ミスター・グリーリー Really Mr Greely が飛ばしましたが、スタートの良かったフューリー・カップコーリ Fury Kapcori がこれを交わして先頭に立ち直線へ。前半内の5番手に付けていたヴァイオレンスが進出、直線で外から逃げ馬を捉えると、渋太く粘るフューリー・カップコーリに1馬身4分の1差を付けて捻じ伏せました。2馬身半差でバファート厩舎では最先着のデンズ・レガシー Den’s Legacy が3着、ヒーズ・ハッド・イナフは今回は末脚不発で5着敗退に終わっています。
無敗記録を「3」に伸ばし、二つ目のG戦を制覇したヴァイオレンスは、ニューヨークからトッド・プレッチャー師がが遠征させてきた期待馬で、ハヴィエル・カステラノ騎乗。何と言っても注目は、3代母が名牝スカイ・ビューティー Sky Beauty に当たる牝系。ファミリーで言えば 1-g に所属し、近親にはGⅠ馬が目白押しの快速牝系です。スピード主体とは言いながらアメリカでは十分にクラシックで通用する血統だけに、来年のクラシックでも中心馬の1頭に数えられる存在ではありましょう。
最近のコメント