日本フィル・第284回横浜定期演奏会

2013年のナマ演奏聴き初めは日本フィルの横浜定期でした。年々演奏会通いのペースが遅く、かつ少なくなっていくような気がします。今年は以下のプログラムでスタート。

シューマン/歌劇「ゲノフェーファ」序曲
ベートーヴェン/ロマンス第2番ヘ長調作品50
サン=サーンス/序奏とロンド・カプリチオーソ
サラサーテ/ツィゴイネルワイゼン
     ~休憩~
ベートーヴェン/交響曲第3番
 指揮/川瀬賢太郎
 ヴァイオリン/尾池亜美
 コンサートマスター/鎌田泉(ゲスト)
 ソロ・チェロ/菊地知也

日本フィルが主に横浜で展開している≪輝け! アジアの星≫シリーズの第6弾と銘打たれています。今回は指揮者とソリスト両名に対するエールでしょうか。

川瀬も尾池も私には初めてナマで接する若手。新春にも相応しく、共に清新な印象を残してくれました。初回だけで早計な判断は慎みたいと思いますが、簡単な感想だけ。

冒頭のシューマン、ナマで演奏される機会は滅多にありませんが、私は大好きな一品。恐らく選曲は川瀬の希望によるのでしょうが、このセンスの良さに先ず一票でしょう。
演奏もシューマン特有のメランコリー、ドイツの森を思わせるような鬱蒼とした響きの交錯が的確に表現されていると思いました。

続くヴァイオリンの小品は実に懐かしいもの。これらを飽きるまで聴いたのは小生の中学生の頃のことで、当時の海綿のような聴感を感慨を持って思い出していました。横浜定期ならではの体験でしょう。
演奏会メインの作曲家ベートーヴェンから始め、サン=サーンス作品に続いて、それが献呈されたサラサーテの代表作へと進む流れ、次第に演奏技巧も難度を加えていく構成も好ましいもの。
今年25歳になる若手は、最近の人に共通する達者な技巧で楽しませてくれました。ただ欲を言えば、かつて録音で楽しんだような演奏者独自の個性を表に出した音色には乏しいこと、みなとみらいの大きなホールの隅々にまで届くような音量?がもう少し欲しい、という感想も持ちましたね。

メインのエロイカはスピード感豊か、衒いの無い直球勝負の好演で、真に爽やかな印象を受けました。第1楽章提示部の反復を実行し、スコアリングもオリジナルを順守するのは若手に共通した傾向でしょう。
単にインテンポで通すのではなく、要所(第1楽章提示部の終結部や、展開部の弦のみの和音進行など)で若干貯めを効かせるところなども中々の配慮。ぶっきら棒という印象からは遠いものがあります。何よりもベートーヴェン特有の「刻み」が良い。
特に感心したのは第2楽章で、そのアーティキュレーションへの拘りは、川瀬の将来性に期待を抱かせるに充分なものでした。

アンコールはシベリウスの悲しきワルツ。

公演終了後にシーズンファイナルパーティーが行われましたが、私共は中座。その中で聴衆から“川瀬さんはもしかして広上さんの弟子じゃないですか”という感想が囁かれていましたが、熱心な聴き手には判るのでしょうネ。
正にその通りで、音楽へのストレートなアプローチ、チョッとした答礼の仕草、アンコールにメインとは対照的な性格のピースを選ぶところなど、マエストロ広上の後継者の一人と言えましょうか。

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