京都市交響楽団・第566回定期演奏会
今年もまた3月に京都を旅してきました。ここ数年、春はは毎年恒例になった京都行、今回は、いや今回も京都市響を聴くのが第一目的です。
先に書いておきますが、京都の桜はチラホラと咲き始めたばかり。観桜にはチョッと早いといのが今回の季節感でしたね。
尤も今年の京都行スケジュールを決めたのは去年の年末、小生の頭にはサクラのことなどて~んで無かったのですから念のため。東京の桜が異様に早く満開になってしまったため、京都も桜見物だろう、と思うのは早合点です。
私共は音楽は亭主が、旅の行程は家内の担当と決まっていますから、旅籠を何処にするかは当方は知らぬ存ぜぬ。で、今回の宿はは祇園・清水界隈の老舗旅館でした。
朝9時少し過ぎには京都入り、京都コンサートホールが開場する午後1時半までには時間が十分あるので宿の周辺をブラリ散策。その辺りは家内のブログに任せるとして、要するに清水寺は例によって大混雑。桜が開花したらとても近づける状況ではないでしょう。早目で正解、ということにしておきましょうか。
3月定期のプログラムは以下のもの。天下の名曲、と言うわけではないけれど、興味津々の選曲でしょ。
ハチャトゥリアン/組曲「仮面舞踏会」
コルンゴルト/ヴァイオリン協奏曲
~休憩~
プロコフィエフ/交響曲第7番
指揮/広上淳一
ヴァイオリン/クララ=ジュミ・カン
コンサートマスター/渡邊穣
フォアシュピーラー/泉原隆志
ざっと眺めて特に共通点は無いけれど、強いて言えば「映画」でしょうか。ハリウッドの映画音楽の伝統を作ったのがコルンゴルト、ロシアの二人も映画とは無関係ではありませんでしたしね。
プロコフィエフはキージェ中尉、アレクサンドル・ネフスキー、イワン雷帝の映画音楽から別ジャンルの作品をモノにしていますし、ハチャトゥリアンにも映画音楽があります。
冒頭のハチャトゥリアン作品は劇の付随音楽が原曲ですが、例えば第4曲のロマンスは映画音楽にはピッタリだと感じました。ロシアにロマンス映画なるものが存在するのかどうか知りませんが、もしあればこのロマンスはラヴシーンのバックとしてこんな相応しいものはないでしょう。
当組曲は冒頭のワルツがスケートの伴奏に使われて超有名曲に格上げされましたが、私は3番目のマズルカを子供の頃から聴いてきました。それがナマでの体験となると思いだせないほどレアな機会。今回は広上指揮で、この曲に新しい発見があるのでは、と期待が高まります。
堂々たるワルツで開始、ここがどう、あそこはもう少し、などと聴き進んできましたが、最後のギャロップになるとそれまでの全てを忘れさせてしまうほどの広上スタイル。圧倒的な面白さの裡にハチャトゥリアンを堪能できました。
この演奏についてはロームの協賛で録音が成され、広上/京響ライヴ・シリーズ第3弾としての発売が決まっています(カプリングは去年3月のバラの騎士)。聴き逃した人、どんな演奏だったのか興味ある方は今少しお待ちあれ。
続くコルンゴルトは、私は2回目の体験。2010年11月の読響定期でヴィヴィアン・ハーグナーのソロ、カンブルラン指揮でも聴いています。作品についてはその時のレポートに書きましたから、今回は省略。
兎に角美しい作品で、改めてコルンゴルト復活を祝いたい気持ちになります。実はこのヴァイオリン協奏曲、他にもN響が秋山/神尾のコンビで取り上げましたし、今年の1月には井上指揮アンサンブル金沢が第2楽章のみを演奏。次第に演奏機会が増えているのは喜ばしいと言えましよう。
ソロのクララ=ジュミ・カンは韓国系ドイツ人。父はバイロイトの常連だったフィリップ・カンだそうで、4歳の時に最年少でマンハイム高等音楽院に入学というから開いた口が塞がりません。
背がスラリと高く、混血特有の美女。もちろん顔もスタイルも抜群で、ヴァイオリンを捨てたとしてもモデルでやっていけるような美形。プロフィールには紹介されていませんが、プレトークで広上が25歳だと明かしていました。
その容姿以上にウットリさせるのが、もちろんヴァイオリン演奏。難度の高いコルンゴルトを楽々と弾き熟し、サッとアンコールにバッハ(無伴奏パルティータ第2番のサラバンド)を攫い、直ぐに戻ってくるやパガニーニ(カプリスの17番)も披露。
体力的にも相当なモノを要求されるはずですが、目一杯という感じには全然見えないのが凄い。コルンゴルト+バッハ+パガニーニって、何だこのヴァイオリニストは。
仙台で優勝しているので知っている人も多いでしょうが、チラシ等で彼女の名前を見たら是非行くべし。
最後のプロコフィエフ、広上はN響でも読響でも取り上げているので聴かれた方も多いでしょう。とにかく判り易く、楽しい指揮。決して短くはない交響曲ですが、あっという間の音楽体験です。
何時ものように、彼が取り上げるのは華やかに終わる改訂版によるフィナーレ。ラザレフとは一歩離れた解釈でしょう。
去年もそうでしたが、今回も3月定期を以て卒団する楽員が紹介されます。37年亘ってヴィオラを弾いてきた北村英樹氏。広上マエストロの紹介、ヴィオラ・セクションからの花束贈呈に続いてマエストロと短いトーク。
ご本人はあまり喋らない方のようで、そこは広上氏が、氏の得意とするカメラの話題で誘います。北村氏はマイペースの方で、チョッとした話のズレが会場の笑いを誘っていました。
最後はマエストロが“京響史上最短、7秒間のアンコール”とアナウンスしてプロコフィエフの最後の1ページが演奏されます。ラザレフ曰く“当局によって書かされた”フィナーレですね。
日曜日のマチネー、シーズン最後の定期とあって、演奏後はレセプションがありました。ビール片手におもむろに登場したマエストロ、今回の曲解を書かれた奥田佳道氏を紹介。
“京響を聴くためにだけ、東京からやって来ました”と前置きした奥田氏、プログラムの誤りを一点明かしていました。それが何処かは、レセプションに参加した人の特典として伏せておきましょう。
あれ、奥田さん、そう言えば土曜日は横浜でも喋ってましたね。もしかして私共と同じ行動をしているのでは。
尤も我々はこの日は一泊、翌日も京都の某名所で観光を楽しみましたが、大人気の評論家氏はレセプションが終わると新幹線に飛び乗り、京都を後にした様子。行く先々、聴く音楽の度にその尊顔を拝する健筆です。
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