フロリダから、ルイジアナから

昨日は3月最後の競馬デイ。クラシック本番を1か月後に控え、フロリダとルイジアナでは重要なトライアル戦が立て続けに行われました。
さて愈々フロリダ・ダービー当日を迎えたガルフストリーム・パーク競馬場、開催そのもののフィナーレは4月5日ですが、G戦が行われるのはこの日がラスト。メインのダービーの前にも5鞍のG戦が組まれ、事実上の開催フィナーレを盛り上げます。
先ずは第4レースとして行われたランパート・ステークス Rampart S (GⅢ、4歳上牝、9ハロン)。fast の馬場に6頭が出走し、2頭出しプレッチャー厩舎の一角チャオ・ベラ Ciao Bella が2対5の1番人気。G戦は未勝利ながら、前走同じガルフストリームのクレーミング戦を5馬身以上の差を付けて勝った勢いが買われていました。
すんなりスタートから先頭に立ったチャオ・ベラ、そのまま他を寄せ付けず、3番手を進んだオーセンティシティー Authenticity に4馬身半差を付ける圧勝で人気に応えました。3着は更に11馬身半もの大差が付いて2番人気(3対1)のサクセスフル・ソング Successful Song 。トッド・プレッチャー厩舎のワン・ツー・フィニッシュです。
これがG戦初勝利となったチャオ・ベラは、G戦を含めて4戦続けて芝コースを走って結果が出ず、前走でダートに戻ってその適性をアピールしていた4歳馬。このレース3連覇を達成したプレッチャー師は、次走にアケダクトのラフィアン・ステークスを考えている様子。鞍上はジョン・ヴェラスケスでした。

続いては第8レースのガルフストリーム・オークス Gulfstream Oaks (GⅡ、3歳牝、9ハロン)。フロリダのオークス・トライアル最終便で、勝馬には100ポイントが与えられる最も重要な前哨戦です。6頭が出走、前走3歳デビューのダヴォナ・デール・ステークス(GⅡ、2月23日)では2着に敗れたものの、GⅠ馬ドリーミング・オブ・ジュリア Dreaming of Julia が8対5の1番人気。
スタートで先手を取ったのは、そのダヴォナ・デールで本命馬を破ったライヴ・ライヴリー Live Lively (9対5、2番人気)。ドリーミング・オブ・ジュリアはこれをピタリとマークして2番手を進みます。3コーナーで仕掛けたドリーミング・オブ・ジュリア、外から逃げ馬を交わすと後は独走態勢。何と2着に粘るライヴ・ライヴリーに21馬身4分の3というトンデモナイ大差を付けての圧勝です。3着は更に4馬身でキュア・ザ・ムーン Vure the Moon 。
100ポイントを加算して合計132ポイントでオークスのトップ候補に立ったドリーミング・オブ・ジュリア、ランパートに続くトッド・プレッチャー厩舎の連勝で、ジョン・ヴェラスケスもG戦ダブル達成です。勝馬は2歳時には3連勝でフリゼット・ステークス(GⅠ)を制し、BCジュヴェナイル・フィリーズは3着と初黒星。前走でも2着と連敗に終わりましたが、ここで鮮やかに復活、今年のケンタッキー・オークスの中心馬の1頭であることは間違いないでしょう。

この日3つ目のG戦は、第9レースのオーキッド・ステークス Orchid S (芝GⅢ、4歳上牝、12ハロン)。芝コースも firm の良馬場で、10頭立て。混戦模様から6対5の1番人気に支持されたのは、ザ・ヴェリー・ワン・ステークス(芝GⅢ)4着で、前走ガルフストリームのアローワンスを4馬身で楽勝したエーグ・マリーン Aigue Marine 。ザ・ヴェリー・ワンの勝馬スターフォーマー Starformer が2番人気(5対2)で続きます。
しかし結果は小波乱。人気薄(25対1)のクロージング・レンジ Closing Range が逃げ、主力馬たちは中団で牽制する流れ。直線馬順がガラリと入れ替わる中、抜け出したのは内々6~7番手を進んでいた4番人気(8対1)のレガーロ・ミア Regalo Mia 。直線ではコーナーを利して大外に出し、得意の末脚を爆発させました。2馬身差の2着争いは、イタリア参馬アンジェグリーン Angegreen がハナ差で3番人気(5対1)のカナダのチャンピオン、アイリッシュ・ミッション Irish Mission を抑えました。人気のエーグ・マリーンは7着、スターフォーマーも5着敗退です。
ミシェル・ニヘイ厩舎のレガーロ・ミアは、1月の一般ステークスに続くステークス連勝でG戦初制覇。騎乗したルイス・コントレアス騎手は同馬に初騎乗でした。

第10レースはスキップ・アウェイ・ステークス Skip Away S (GⅢ、4歳上、9.5ハロン)。ここは1頭が取り消して9頭立て。去年のフロリダ・ダービー馬テイク・チャージ・インディー Take Charge Indy が出走してきましたが、9対5の1番人気に支持されたのはG戦未勝利ながら2連勝中の上がり馬シガー・ストリート Cigar Street です。
2番人気(5対2)に甘んじたGⅠ馬テイク・チャージ・インディーが先手を取り、シガー・ストリートは3番手を追走。直線では2番手のパンツ・オン・ファイア Pants On Fire との3頭に絞られ、最後は期待通りシガー・ストリートがテイク・チャージ・インディーに2馬身差を付ける快勝。3着は6馬身4分の3差が付いてパンツ・オン・ファイアの順。1・2番人気の1・2着と順当な結果に終わりました。
これがG戦初勝利となる勝馬を管理するウイリアム・モット師は、ワールド・カップに挑戦するロイヤル・デルタ Royal Delta に同行してドバイ遠征中。騎乗したジョン・ヴェラスケスは、何とこれがこの日3鞍目のG戦勝利。前半に一般戦も勝っており、4勝目と勢いは止まりません。なおシガー・ストリートのオーナーは、NBA(バスケット)のマイアミ・ヒートに所属する名手ラシャ―ド・ルイス。一般的にはこちらの方が話題でしょう。

ダービーの直前、第11レースとして行われたのがアップルトン・ステークス Appleton S (芝GⅢ、4歳上、8ハロン)。ハットトリック産駒のハウ・グレート Howe Great を含め2頭の取り消しがありましたが、それでも10頭が出走してきました。2対1の1番人気に推されたのは、前のレースに続きG戦未勝利のザー・アプルーヴァル Za Approval 。前走カナディアン・ターフ・ステークス(芝GⅢ)の4着馬ですが、同馬に先着したジョーズ・ブレージング・アーロン Joes Blazing Aaron (2着)、ボー・ショア Beau Choix (3着)を抑えて上昇度が買われていたようです。
伏兵(30対1)キング・クリーサ King Kreesa の逃げがハイペースだったことも味方に付け、前半は後方3番手に控えたザー・アプルーヴァルが3コーナー手前で一気に進出、2番手で直線に向かうと、一気に抜け出し、追い込むボー・ショアに1馬身差を付けて人気に応えました。逃げたキング・クリーサが粘って1馬身半差の3着。
クリストフ・クレメント厩舎、ホセ・レズカノ騎乗のザー・アプルーヴァルは、G戦初勝利となる5歳の芦毛せん馬。ハイペースになったことが追い込み脚質に有利に働いたのでしょう。それにしてもファンの目は肥えている。

そしてメインのフロリダ・ダービー Florida Derby (GⅠ、3歳、9ハロン)を迎えます。第8レースのオークス同様、勝馬には100ポイントが加算されるフロリダ州最後のダービー・トライアル。有力馬10頭が揃い、負担重量も全馬122ポンドと文字通り力の勝負になります。前走ホーリー・ブル・ステークス(GⅢ)で2歳チャンピオンのシャンハイ・ボビー Shanghai Boby を破ったイッツマイラッキーデイ Itsmyluckyday が8対5の1番人気、雪辱を期すシャンハイ・ボビーは2対1の2番人気で続き、ファウンテン・オブ・ユース・ステークス(GⅡ)を制したオーブ Orb が5対2の3番人気。実績からは3強対決の様相を呈していました。
逃げたのは伏兵2頭、メリット・マン Merit Man (25対1)とナルヴァイェス Narvaez (99対1)が交互にハナを奪う激しい展開。3番手に付けたイッツマイラッキーデイが4コーナーで先行2頭を交わして早目に先頭に立つ一方、4番手追走のシャンハイ・ボビーは早くもムチが入って苦しい流れ。本命馬が先頭に立つのがやや早かったのか、5番手の外を追走していたオーブが外から並び掛けると勝負あった。最後はオーブがイッツマイラッキーデイに2馬身4分の3差を付けて100ポイントを加算しました。更に2馬身4分の1差でメリット・マンが3着に粘り、大穴ナルヴァイェスの4着までがポイント圏内。冬場のダービー本命馬シャンハイ・ボビーは5着と敗退し、この時点でダービー争いからは脱落した印象です。又しても2歳チャンピオンは2歳だけで終わるのでしょうか。
ファウンテン・オブ・ユースに続いてG戦2勝目を挙げたオーブは、通算獲得ポイントは150。クロード・マゴーヒー調教師は一気にダービー制覇に自信を深めた様子。勝利騎手は又してもジョン・ヴェラスケス。馬券ファンとしては、終わって見ればヴェラスケスを勝っていればこの日のG戦は4勝できたことになります。正にヴェラスケス・デイのフロリダでした。

次にルイジアナ州のフェア・グラウンズ競馬場からも4鞍のG戦を。こちらは明日(3月31日)で開催を終えますが、G戦は土曜日が最後。こちらも競馬フェスティヴァルの感があります。
最初はフェア・グラウンズ・オークス Fair Grounds Oaks (GⅡ、3歳牝、8.5ハロン)。こちらもオークス、ダービー・トライアルは勝馬に100ポイント加算の前哨戦で、各馬にとってはクラシック最終便でもあります。馬場は fast 、7頭が顔を揃えました。4対5の断然1番人気は、ここまで無敗、既にG戦に2勝しているアンリミテッド・バジェット Unlimited Budget 名前の通り底を見せない実力が魅力です。
3番手を進んだ本命馬、ファンの期待通り先行2頭を馬4頭分の大外から交わすと、2番手に付けていた2番人気(8対5)フラッシー・グレイ Flashy Gray に1馬身4分の3差を付けて快勝、無敗記録を「4」に伸ばしました。3着は2馬身4分の1差でシーニーン・ガール Seaneen Girl 。
勝馬を管理するのは、ここでもトッド・プレッチャー師。フロリダでドリーミング・オブ・ジュリアがオークス候補に躍り出た1時間ほど後のレースでした。鞍上はハヴィエル・カステラノ。2歳時のドモワゼル(GⅡ)、今季のレーチェル・アレキサンドラ(GⅢ)に続く3つ目のG戦勝利、このトライアルからは2004年以降5頭ものケンタッキー・オークス馬が輩出しており、プレッチャー師が同馬を回避させる理由は見当たりません。師としては強力2頭で臨むはずの今年のオークス、嬉しい悲鳴を上げているのではないでしょうか。

続いては第8レースのニュー・オーリーンズ・ハンデキャップ New Orleans H (GⅡ、4歳上、9ハロン)。8頭が出走し、前走ドン・ハンデでG戦初勝利をGⅠを飾ったグレイダ― Graydar が6対5の1番人気。人気薄で勝ったGⅠがフロックではなかったことを証明すべき一戦でしょう。
これまでは逃げが身上だったグレイダ―、今回は3番手に控える余裕の競馬。2番手を進んだマーク・ヴァレスキ Mark Valeski が抜け出すところ、外から伸びたグレイダ―が1馬身4分の3差し切っての貫録勝ち。3着には4分の3馬身で2番人気(3対1)のバーボン・カレッジ Bourbon Courage が続きました。
グレイダ―はオークスに続きトッド・プレッチャー厩舎早々のダブル達成。こちらはエドガー・プラードが騎乗していました。G戦2勝目を記録したグレイダ―は、ガルフストリーム・パーク競馬場以外で出走するのは初めてのこと。ドン優勝によって、レース・スタイルも含めてこれまでの殻を破った感があります。通算成績も5戦4勝3着1回とほぼパーフェクト、更なる飛躍が期待できそう。

そいて今年が100回記念となるルイジアナ・ダービー Louisiana Derby (GⅡ、3歳、9ハロン)。勝利ポイント100を目指して14頭のフルゲートになりました。2対1の1番人気は、前走アケダクトのウィザース・ステークス(GⅢ)を制して既に10ポイントを獲得しているレヴォリューショナリー Revolutionary 。ここを勝って一気にダービーに向かいたいところでしょう。
しかしスタートが余り良くなかったレヴォリューショナリー、最初のクラブハウス・ターンは後方2番手という苦しい流れになります。内ラチ沿いを進んだ本命馬、3コーナー手前からやや強引に外を回って進出すると、直線では馬6頭分の大外から一気に追い上げて先頭。再び内ラチに進路を変え、外から猛追する伏兵(84対1)マイリュート Mylute に一旦は交わされましたが、二の足を使って差し返し、ゴールでは首差先着していました。3馬身差で3番人気(9対2)のデパーティング Departing が3着。
驚くなかれ又してもプレッチャー厩舎のレヴォリューショナリー、止まらぬ勢いのハット・トリックです。騎手はオークスと同じハヴィエル・カステラノ、こちらはダブルとなりました。かなり無理をしながらもトライアル最終便を制したレヴォリューショナリー、当然ながらダービーに駒を進めるものと思われます。

そして土曜日最後となったG戦がメルヴィン・H・ミュニッツ・ジュニア・メモリアル・ハンデキャップ Mervin H. Muniz Jr.Memprial H (芝GⅡ、4歳上、9ハロン)。firm の芝コースに10頭立て。前走ガルフストリームでマック・ダイアルミダ・ステークス(芝GⅡ)を制したアイルランド産馬アミラズ・プリンス Amira’s Prince が6対5の1番人気。
スタートからハナに立った本命アミラズ・プリンス、そのまま一人旅を続け、3番手から追い縋るウィルコックス・イン Wilcox Inn を半馬身振り切って期待に応えました。3馬身差で2番手追走のストリング・キング String King が3着。先行した馬の競馬です。土曜日のG戦10鞍の内、逃げ切り勝ちはガルフストリームのランパートとこれだけ。アメリカとしては珍しい一日と言えましょうか。また立て続けにG戦を攫ったプレッチャー厩舎、このレースにはダブルス・パートナー Doubles Partner を出走させていましたが、カステラノ騎手共々、柳の下に3匹目、4匹目の泥鰌はいなかったようで、最後は4着に終わりました。
ウイリアム・モット厩舎、ジュニア・アルヴァラード騎乗のアミラズ・プリンスは、昨年秋にアイルランドから転厩して以来アメリカで4戦無敗とパーフェクト。英愛では7戦して僅かに1勝でしたから、余程アメリカの水が合ったのでしょう。今回は初めて逃げ作戦を披露しましたが、ヨーロッパでは何度か試みていたそうな。芝コースに新たなチャンピオン誕生の期待が高まります。血統も長距離向き。

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