サルビアホール クァルテット・シリーズ第19回

月曜日、サルビアホールの例会を聴いてきました。今回は東京の春音楽祭にも出演したガラテア・クァルテットの登場です。プログラムは以下のもの。

ハイドン/弦楽四重奏曲ト長調第75番作品76-1
ブロッホ/ランドスケープ
ブロッホ/山にて
     ~休憩~
ケルターボーン/弦楽四重奏曲第6番
ミヨー/弦楽四重奏曲第1番
 ガラテア・クァルテット

大阪の室内楽コンクールにも出演したグループだそうですが、私は初体験です。
メンバーはファーストが日本の坪井悠佳(つぼい・ゆか)、セカンドはサラ・キルヒェンマン Srah Kirchenmann 、この二人は女性。ヴィオラがダヴィッド・シュネーベリ David Scheneebeli 、チェロはジュリエン・キルヒェンマン Julien Kirchenmann で、セカンドとチェロは兄妹。男女の違いはあれ、二人は同じ顔立ちの持ち主です。
結成は2005年で、結成以来同じメンバーで活躍中とのこと。ヴィグモア・ホールやコンセルトヘボウでも出演し、スイスを代表するクァルテットということでしょうか。詳しいプロフィールは下記ホームページを。映像も付いてます。

http://www.galatea-quartet.com/

未だ若いグループということもあって颯爽と登場、ハイドンに挑みます。ファーストとセカンドが向き合う対抗配置、チェロがファーストの隣に陣取りました。
この並びから予想される通り、ビブラートを控え目にした古楽風のスタイル。どうも私にはシックリ来ません。
もちろんテクニックにもアンサンブルにも問題はありませんが、心よりも頭で弾いている感じが付き纏います。譬えが適切ではないでしょうが、先日京都で見た外国人の舞妓姿を連想させるのでした。

ということで多少不安になった開幕でしたが、2曲目のブロッホ以降は見事な演奏に浸ることが出来ましたネ。
ブロッホ以降はハイドンとは違って、通常通りファーストとセカンドが並ぶ配置。つまりセカンドとチェロが入れ替わります。

ブロッホは2曲が休み無く続けて演奏されましたが、最初のランドスケープはエスキモーのドキュメント映画から刺激を受けた如何にも寒そうな「極北」、スイスのアルプス・ホルン連想させる「アルペストレ」、特殊奏法が頻繁に出現する「トンガタブ」の短い3篇からなるもの。
続く「山にて」は、「サヴォアの高原にて」という副題にあるように、「黄昏」と「田舎の踊り」の2曲構成。全体でも15分に満たない、あっという間の一刻でした。

ガラテアQは自国スイスを代表する作曲家ブロッホの使徒と自認しているようで、ブロッホの弦楽四重奏作品を全て録音した(それでもCD1枚分)アルバムがドイツのグラミー賞を受賞したとのこと。この日もロビーで当CDが展示即売されていました。
私の中でブロッホは焦点の定まらない存在で、そもそもシェロモ以外は余り聴いたことがありません。レコードでは合奏協奏曲が2曲あって、確か第2番は弦楽四重奏と弦楽合奏という構成だったはず。その記憶にあるブロッホと、今回の2曲も余り共通点は無いようにも思いました。これを機会に纏めて聴いてみようかな、という所。

後半は彼らが得意(多分?)としている現代作品。ハイドンに異質な響きを感じた私も、こちらはスンナリ入っていけます。と言っても現代モノ、特にやはりスイスのケルターボーンは聴いていて楽しい譜面というワケにはいきません。
私が学生の頃はNHKに「現代の音楽」という番組があって(今でもあるのか?)、この「手」の音楽は良く聴いたものです。その意味でケルターボーンは当時の最先端の現代モノ感覚があって、寧ろ懐かしく感じられました。
いきなり第1ヴァイオリンのカデンツァ風ソロから始まって、あとは聴くよりも見て楽しめる内容。後でネット検索してみたら、譜面はベーレンライターから出ていて入手可能。冒頭をサンプルとして見ることもできます。↓

https://www.baerenreiter.com/fileadmin/ecs/BA8291/images/samples/BA08291_00_1_nb_lrg.jpg

もちろん彼らはパート譜を使って演奏していましたが、要所では緻密なアンサンブルが要求される作品。演奏以前にスコアでアナリーゼしているのは当然でしょう。何しろラッヘンマン(晴海で聴いて震撼した記憶あり)にも積極的に取り組んでいるというガラテアですから、実に説得力があります。

説得力という点で当夜の圧巻は、メインのミヨー。そもそもミヨーのクァルテット(18曲もあるそうな)など今まで聴いたことも無く、今回は改訂された3楽章版ではなくオリジナルの4楽章で演奏されるということも、会場で渡されたプログラムで初めて知った次第。他に比較の仕様もありません。
されでも大変に貴重な経験だったということは、ミヨー音痴の私にもシッカリ聴き取れます。何より作品が素晴らしい。明らかにミヨーが愛したというドビュッシーを思わせるもので、フランス四重奏の世界での傑作の一つと聴きました。へぇ~、ミヨーにはこんな素晴らしいクァルテットがあるんだ!!

ガラテアの演奏も作品への共感度に満ちたもの。最初から最後まで聴き手を飽きさせません。特に第3楽章のグラーヴェ、ソステヌートは重い音楽なのですが、ドイツ音楽のように重苦しくならないのが何とも不思議な感覚。
色彩と明確な輪郭は、セザンヌの追悼のために作曲されたという作曲動機を的確に表現していると思いました。ホームページのレパートリーにこの曲は挙がっていませんが、最近それに加わったのでしょうか。それにしては、緻密に練り上げた表現とアンサンブルに舌を巻きます。

アンコールは坪井さんから一言。使徒でもあるブロッホから、瞑想と題された前奏曲が披露されました。チェロから始まって次第に上に移行して行くカノン風の作品。もちろんブロッホ全集CDでも冒頭に収録されています。

最後にこれからのSQS、前回もチョッと触れたように、9月にタカーチQの出演が急遽決まったようです。これに伴って以前に発表されていたシリーズ組が再編。9月から10月にかけてが第7シーズン、11月から来年1月までが第8シーズンと発表されました。
この組み替えに伴い、10月が急遽クァルテット・エクセルシオに委ねられます。当シリーズの杮落しを担当したエクセルシオ、シリーズ初の再登場団体となりますね。困った時のエク頼み、とでも言うのでしょうか。ベートーヴェン、ショスタコーヴィチ、クライスラー(!)というエクならではのプログラムが待っています。

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