ダービー最終便

昨日の土曜日は、ケンタッキー・ダービーを3週間後に控えた週末。アメリカではダービー・トライアル最終便とも呼ばれる2鞍のGⅠを含め、全部で10鞍のG戦で賑いました。
結果が入電した順に紹介して行きましょう。

先ずアケダクト競馬場からはディスタッフ・ハンデキャップ Distaff H (GⅡ、3歳上牝、6ハロン)の一鞍のみ。去年は7ハロンでしたが、今年は更に1ハロン短縮されての一戦です。馬場はやや柔らかい good 、3頭もの取り消しがあり僅かに4頭立て。ライヴァルと目された馬が取り消したこともあって、1対5の圧倒的1番人気に支持されたのがクラスター・オブ・スターズ Clusters of Stars 。ここまで4戦無敗、ステークスは初挑戦ですが、無敗記録を伸ばすことに期待が掛かります。
逃げても差しても競馬が出来るクラスター・オブ・スターズ、今回初騎乗を委ねられたジュニア・アルヴァラード騎手は同馬のスピードを活かして先頭に立ちます。一旦最低人気(11対1)のロス・オジトス Los Ojitos の強引な仕掛けに2番手に下がりましたが動じす、直線で難なくロス・オジトスを交わすと、追い込むミス・ドロ Miss d’Oro に2馬身4分の3差を付けて無傷の連勝記録を「5」に伸ばしました。3着は1馬身4分の1差でロス・オジトス。
スティーヴン・アスムッセン師が管理するクラスター・オブ・スターズ、前走アケダクトのアローワンス戦では9馬身以上の大差を付ける圧勝で、今回がステークス初優勝。もちろんG戦も初制覇となります。

キーンランド競馬場はG戦5鞍、内GⅠ戦は3鞍の大盤振る舞いで、最初はコモンウェルス・ステークス Commomwealth S (GⅢ、4歳上、7ハロン)。去年はGⅡ戦でしたが、今年はGⅢに格下げされての一戦。ポリトラック・コースは fast 、1頭が取り消して5頭立て。人気は拮抗し、1番人気(2対1)のバーニー・ザ・マエストロ Bernie the Maestro から最低人気(9対2)のキャンディマン・イー Candyman E までほとんど差の無い範囲で割れていました。
スタートも5頭がほぼ一団、その中から3番人気(3対1)のゲントリー Gantry と4番人気(7対2)のハンサム・マイク Handsome Mike が並んで先頭。1枠発走のゲントリーが直線で粘る所、ゴール前50ヤードで漸く6番枠スタートのハンサム・マイクが捉えて1馬身4分の1差で優勝。キャンディマン・イーが1馬身半差3着に続きました。所謂行った行ったの競馬。
ダグ・オネイル厩舎、マリオ・グティエレス騎乗のハンサム・マイクは、去年ペンシルヴァニア・ダービー(GⅡ)を19対1で制した馬で、それ以来G戦は5戦して一度も掲示板に載っていません(全て5着以下ということ)。前走のサンタ・アニタ・ハンデも7着惨敗。今回の7ハロンという短距離は初勝利を記録した時以来の距離で、ポリトラック・コースも初勝利となります。尤もこれが3勝目ですから、全てが初ということになるのですが・・・。

続いても短距離G戦のシェイカータウン・ステークス Shakertown S (芝GⅢ、4歳上、5.5ハロン)。コモンウェルスより更に短く、しかも芝コースということで性格は全く異なります。芝コースは firm 、9頭が出走し、カナダのGⅡ馬サムシング・エクストラ Something Extra が2対1の1番人気に支持されていました。
レースはネックスト・クエスチョン Next Question とバーリノ Berlino が競り合いながら逃げる速い流れ。直線では後続馬が続々と襲い掛かる激しい展開となり、ゴール板では5頭が横一線の乱戦。写真判定の結果、最内を衝いた5番人気(8対1)のハヴロック Havelock がハナ差でその外を通った本命サムシング・エクストラを抑えて優勝。頭差で2番人気(3対1)のパーフェクト・オフィサー Perfect Officer の順。勝ったハヴロックは前半は最後方。直線では一気に内に切れ込んだ本命馬を追うようにこれも内を衝いたもの。これによりインコースがゴチャつく場面もありましたが、審議等にはなりませんでした。
ダリン・ミラー厩舎、今回がテン乗りとなるギャレット・ゴメス騎乗のハヴロックは、一昨年秋のキーンランドでウッドフォード・ステークス(芝GⅢ)に勝った6歳せん馬。去年のシェイカータウンは4着でしたが、キーンランドの芝コースはこれで5戦3勝。コース・スペシャリストと言えるでしょう。

GⅠ3連発の第一弾はマジソン・ステークス Madison S (GⅠ、4歳上牝、7ハロン)。去年はスポンサーの関係でヴァイネリー・マジソン・ステークスとして紹介していました。10頭立て、前走ガルフストリームのハリケーン・バーティー・ステークス(GⅢ)で2着したファンタジー・オブ・フライト Fantasy of Flight が大外枠ながら3対1の1番人気。
2番人気(7対2)のジャマイカン・スモーク Jamaican Smoke が逃げ、ファンタジー・オブ・フライトは3番手追走。逃げ馬の脚色が鈍らないまま逃げ切りかと思われましたが、離れた最後方を追走していたブービー人気(17対1)のラスト・フル・メジャー Last Full Measure で、直線では大外を回り、やや内に切れ込みながら鋭く伸びると、更に外から追い込む3番人気(9対2)バイラマ Byrama の急襲を首差抑えての逆転劇。1馬身4分の1差で逃げたジャマイカン・スモークが粘って3着、ファンタジー・オブ・フライトは8着に沈んでしまいました。勝馬が内に寄せながら追い上げる際に、スパートを遅らせた2着馬の前をカットするような形になったことでロザリオ騎手が異議を申し立てましたが、裁決によって却下されています。
フィリップ・オリヴァー厩舎、コーリー・ナカタニ騎乗のラスト・フル・メジャーは、これで11戦4勝となる5歳馬。11戦の内9戦は芝コースということで人気はありませんでしたが、キーンランドのポリトラックは去年10月のアローワンス戦に次いで2戦2勝。ステークスそのものが初勝利となり、もちろんG戦初制覇。それがいきなりのGⅠですから、陣営も驚きを隠せません。

続いてはジェニー・ワイリー・ステークス Jenny Wiley S (芝GⅠ、4歳上牝、8.5ハロン)。9頭が出走し、去年の秋からG戦に連勝中のセンター・コート Centre Court が8対5の1番人気に支持されていました。去年の勝馬デイジー・ディヴァイン Daisy Divine が7対2の2番人気で続きます。
先手を取ったのはデイジー・ディヴァインの方。後続を離しての逃げで、直線に入った時には後続に未だ6馬身の大差を付けていました。その3番手を楽に追走していたセンター・コート、直線でその差を徐々に縮めると、ゴール手前で逃げ馬を捉え、最後はデイジー・ディヴァインに2馬身差を付けて期待に応えました。更に1馬身4分の3差で3番人気(9対2)の欧州クラシック馬サミター Samitar の順。レース前の人気通りに1着から3着までが決まる順当な決着です。
これで11戦6勝、G戦連勝記録を3に伸ばしたセンター・コートは、ジョージ・アーノルド2世の管理馬、ジュリアン・ルパルー騎乗。去年秋のミセス・リヴィーア・ステークス、今期初戦のハネー・フォックス・ステークスといずれも芝のGⅡ戦を連勝してきましたが、GⅠは初制覇となります。

そしてキーンランド競馬場最大の呼び物、ブルー・グラス・ステークス Blue Grass S (GⅠ、3歳、9ハロン)。勝馬にはケンタッキー・ダービーへのポイント100が加算される、ダービーへの最終便に当たるGⅠトライアルです。当初は15頭の登録がありましたが、最終的には1頭が除外されてフルゲートの14頭立て。3月3日のパーム・ビーチ・ステークスの覇者ライディリュック Rydilluc が7対2の1番人気に支持されていましたが、ダービーへの最後の切符が掛かるだけに波乱含みです。
その波乱、先ずスタートで2番人気(9対2)を分け合う2頭のうちの1頭ジャヴァズ・ウォー Java’s War が大きく出遅れ、スタンドがどよめきます。前半は伏兵(21対1)アンドラフテッド Undrafted が飛ばしましたが、2番手を進んだ本命ライディリュックが早目にこれを捉えて先頭。そのまま逃げ込みに入りましたが、直線半ばで2番人気の一角パレス・マリス Palace Malice が交わして先頭。そこに後方から出遅れたジャヴァズ・ウォーと人気薄(22対1)チャーミング・キッテン Charming Kitten が肩を並べるように急襲。結局ジャヴァズ・ウォーが首差でパレス・マリスを抑え、更に首差でチャーミング・キッテンの順。ライディリュックは1馬身4分の1差離された4着で、ポイントを得たのはここまで。それにしてもスタートの出遅れを回復しての猛追に、スタンドは又してもどよめきました。
勝馬を管理するのはケネス・マクピーク師。騎乗したジュリアン・ルパルーは、一つ前のジェニー・ワイリーに続きGⅠダブル達成の快挙です。これで7戦3勝、G戦初勝利となったジャヴァズ・ウォーは、2歳時にブリーダーズ・フューチュリティー(GⅠ)3着、前走ウッド・メモリアル(GⅠ)では無敗のダービー候補ヴェラザーノ Verrazano に3馬身差とは言え2着した実績馬。一発逆転を狙い、通算122ポイントを携えてダービーに挑戦するでしょう。

次に「南部の競馬フェスティヴァル」最終日を迎えたオークローン・パーク競馬場、3鞍のG戦が組まれ、最初はオークローン・ハンデキャップ Oaklawn H (GⅡ、4歳上、9ハロン)。馬場は fast 、10頭が出走し、去年のBCクラシック覇者フォート・ラーンド Fort Larned が1対2の圧倒的1番人気。BC以来の競馬となった前走ガルフストリーム・パーク・ハンデではまさかの落馬、ここは順当に走れば格が違うという期待でしょう。
伏兵(25対1)タップタウン Taptowne の逃げを3番手で追走したフォート・ラーンドでしたが、直線に入っても全く動けず5着惨敗。一体BC馬に何が起きたのでしょうか。替って圧勝劇を演じたのは、2番人気(と言っても6対1の高配当)で徐々に進出してきたサイバー・シークレット Cyber Secret 。直線では後続を一方的に引き離し、2着に粘ったタップタウンに5馬身4分の3差。更に2馬身4分の3差でセイバーキャット Sabercat が3着。
リン・ホワイティング厩舎、ロビー・アルバラード騎乗のサイバー・シークレットは、オークローン・パーク競馬場のスペシャリストという存在。馬主自身もオークローンのオーナーということで、同馬は今期オークローンで4連勝。前走レーザーバック・ハンデ(GⅢ)に続くG戦2連勝です。これで通算成績は14戦6勝となりますが、オークローンでは8戦5勝。如何にスペシャリストであることが判る内容ですね。

続いては短距離のカウント・フリート・スプリント・ハンデキャップ Count Fleet Sprint H (GⅢ、4歳上、6ハロン)。8頭が出走し、去年のBCスプリント5着馬のジャスティン・フィリップ Justin Philip が6対5の1番人気。以前は泥んこ馬場のモンスターなどと呼ばれた同馬ですが、前走オークローン・デビューのアローワンス戦を快勝して速い馬場での適性も証明しています。
ピッコズ・プライド Picko’s Pride の逃げを4~5番手で追走したジャスティン・フィリップ、4番手で直線に向くと貫録の伸び脚、逃げたヒッコズ・プライドを4分の3馬身差交わして見事期待に応えました。2馬身差3着にはここまで無敗のジェントルメンズ・ベット Gentlemen’s Bet が入り、初黒星。
スティーヴン・アスムッセン厩舎、リカルド・サンタナ騎乗のジャスティン・フィリップは、このメンバーではトップ・ハンデの119ポンドを背負っての勝利、着差以上の楽勝と評して間違いないでしょう。

そして愈々アーカンソー・ダービー Arkansas Derby (GⅠ、3歳、9ハロン)、フェスティヴァルのメインであり、ケンタッキー・ダービーへの最終便でもあります。1着の加算100ポイントを目指して10頭が出走、9対5の1番人気にはやや先物買いの感があるウォー・アカデミー War Academy が選ばれていました。ステークスでは勝鞍も入着実績も無い馬ですが、去年このレースをボーディマイスター Bodemeister で制したボブ・バファート厩舎に、名手マイク・スミス騎乗ということで期待が集まった結果でしょう。
ヘヴンズ・ランナウェイ Heaven’s Runaway 、フォーリング・スカイ Falling Sky 、ディヴァイン・アンビション Divine Ambition などが入れ代わり立ち代わり先頭に立つ激しい流れの中、ウォー・アカデミーは3番手に付けていましたが、経験不足もあってか気力を失くして最下位に凡走、ダービーへの期待を絶たれました。優勝は7番手のポケットに待機していた3番人気(7対2)のオーヴァーアナライズ Overanalyze 、直線では馬4頭分の外を回って一気に末脚を爆発させ、2着フラック・ダディー Frac Daddy に4馬身4分の1差を付ける圧勝。更に半馬身差でカーヴ Carve が3着に入りました。
勝たれて見ればオーヴァーアナライズはトッド・プレッチャー師の管理馬、今回は負傷したジョン・ヴェラスケスに代わってラファエル・ベハラノが初騎乗していました。プレッチャー師は2000年のグレーミー・ホール Graeme Hall 、2001年のバルト・スター Balto Star に次いで3度目のアーカンソー・ダービー。勝馬は2歳時にレムゼン・ステークス(GⅡ)、フューチュリティー・ステークス(GⅡ)と連勝して厩舎のダービー候補筆頭と目されていた存在で、前走ガッサム・ステークス(GⅢ)5着凡走で評価を下げていた馬。プレッチャー厩舎としては既にヴェラザーノ Verrazano 、レヴォリューショナリー Revolutionary と有力馬2頭を装備しているだけに、第3の存在としてのオーヴァーアナライズ復活は頼もしい存在でしょう。この日ブルー・グラスで2着したパレス・マリスを加えた4頭は、プレッチャー師の強力クァルテット。

最後はサンタ・アニタ競馬場からラス・シーネガス・ステークス Las Cinegas S (芝GⅢ、4歳上牝、6.5ハロン)。ケンタッキーとアーカンソーの影に隠れた感のあるサンタ・アニタですが、firm の独特の形態をした芝の短距離コース、1頭が取り消して僅か5頭立て。去年のBCターフ・スプリント(芝GⅠ)を牡馬相手に快勝したミズディレクション Mizdirection が2対5の圧倒的1番人気。このコースは5戦5勝と滅法強く、前走ブエナ・ヴィスタ・ステークス(芝GⅡ)も問題なく克服して断然の本命馬です。
ダッシュ良く先頭に躍り出たミズディレクション、一旦はコーナーの利で内のシァパレルリ Schiaparelli に先頭を譲って2番手に控えましたが、直線で追い上げ、やや手古摺ったもののゴール直前でシァパレルリを半馬身交わして貫録を見せ付けました。勝馬を管理するマイク・パイプ調教師は、2着も管理しておりワン・ツー・フィニッシュ。2馬身半差でプリムズ・ダンサー Purim’s Dancer が3着。
いつもはマイク・スミスが騎乗するミズディレクションですが、この日スミス騎手はアーカンソー・ダービーに出張競馬、替ってデヴィッド・ロメロ・フローレスが騎乗していました。これで通算成績を15戦10勝、3着以下は一度だけと言う超安定した成績のミズディレクション、サンタ・アニタは去年のラス・シーネガス(2連覇達成!)も含めて6戦6勝とパーフェクト。今年も芝の短距離チャンピオンを目指します。

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