トライアルはハノン

昨日の土曜日は、ニューバリー競馬場でクラシック・トライアルを含めて3鞍のG戦が行われました。馬場は good to soft 。
春のニューバリー開催で組まれたパターン・レースは近年改名されましたが、記録上は旧名のまま。ここでも馴染のレース名でレポートしましょう。

先ずはジョン・ポーター・ステークス John Porter S (GⅢ、4歳上、1マイル4ハロン5ヤード)。ドバイ・デューティー・フリー・ファイネスト・サプライズ・ステークスが正式なレース名です。
9頭が出走、あの最強馬フランケル Frankel の全弟に当たるノーブル・ミッション Noble Mission が5対4の1番人気に支持されていました。去年ゴードン・ステークス(GⅢ)で後のセントレジャー馬エンカ Encke を破って優勝、シーズン最終戦(今回と同じコース、同じ距離)でのヘーゼル・レイヴリー Hazel Lavery の2着も負けてなお強しの内容。スーパースターの兄を追ってシーズン初戦から期待が掛かります。

レースは並んだ4番人気(11対1)の一角ユニヴァーサル Universal が逃げ、後続も差無く続く展開。前の2頭を追ってトム・クィリーが追い出しに掛かりますが、ノーブル・ミッションの伸びは今一つ。 逃げたユニヴァーサル(1着)、2番手のクイズ・ミストレス Quiz Mistress (2着)を僅かの差で捉えられず、頭・頭の3着に終わりました。
本命馬を管理するサー・ヘンリー・セシル師は、一叩きが必要だったこと、仕掛けが少し遅かったことを敗因に挙げていました。次走に期待しましょう。

一方、勝ったユニヴァーサルはマーク・ジョンストン厩舎、シルヴェストル・ド・スーザ騎乗の4歳牡馬。今年は既にドバイで4戦し、イギリスに戻ってからも2戦しており、これが今期7戦目と対照的。前走リングフィールド競馬場のポリトラック・コースで行われたハンデ戦に続く連勝です。
もちろんこれがG戦初勝利で、次は5月ニューマーケットのジョッキー・クラブ・カップでノーブル・ミッションと再対決する予定。その後はアメリカで去年新設されたアメリカン・セントレジャーに遠征する青写真も描かれているようです。

尚、2着奮闘のクイズ・ミストレスに騎乗したリチャード・ヒューズ騎手は、ムチの過剰使用ルールに抵触した廉で4日間の騎乗停止処分に。5月6日から9日まで乗れなくなります。

続いては1000ギニーへのステップとなるフレッド・ダーリング・ステークス Fred Darling S (GⅢ、3歳牝、7ハロン)。正式にはドバイ・デューティー・フリー・ステークス。
10頭が出走し、7対4の1番人気はチーヴリー・パーク・ステークス(GⅠ)勝馬で4戦無敗のロスドゥー・クィーン Rosdhu Queen 、実績から当然の帰結でしょう。

そのロスドゥー・クィーン、久し振りの実戦の影響かゲート内で暴れ、レースもやや掛かり気味。当初から言われてきた血統的な距離不安も意識してか、鞍上ジョニー・ムルタ騎手はスタミナを温存して瞬発力勝負の作戦。しかし、本命馬は両側から挟まれる様な場面もあって、精彩を欠いた4着まで。
優勝は、前半後方を進んだ3頭の中の1頭で、2番人気(7対2)のモーリーン Maureen 。一時は先頭から8馬身ほどあった差を、素晴らしい瞬発力で逆転しています。2着は4分の3馬身差で最後方から追い込んだ3番人気(7対1)のエージェント・アリソン Agent Allison 。更に1馬身半差でメルボルン・メモリーズ Melbourne Memories が3着。

勝たれて見れば、モーリーンはリチャード・ハノン厩舎、リチャード・ヒューズの黄金コンビ。先のニューマーケットで行われたクラシック・トライアルでも話題を独占したコンビが、ここでもハイライトを浴びています。前のレースで騎乗停止を喰らったヒューズ騎手ですが、出走馬中スタミナではモーリーンが一番。本番に向けて更に自信を深めたようです。1000ギニーのオッズは10対1から14対1の範囲に。
2歳最後のチーヴリー・ステークスはロスドゥー・クィーンに4馬身遅れの9着と期待を裏切りましたが、距離が伸びたここで能力を開花させたのでしょう。ただハノン陣営にはスカイ・ランターン Sky Lantern という強力なギニー候補もおり、ヒューズ騎手は選択に迷いそう。どちらを、あるいは何を選ぶかで人気も勝敗も左右されてくるのが競馬というものです。

初黒星を喫したロスドゥー・クィーン陣営、ウイリアム・ハッガス調教師は敗因にスタミナ不足を挙げ、ジョニー・ムルタ騎手は単に久し振りが堪えてバテただけとコメント。本番に向かうか回避か、巻き返し出来るかが注目点でしょう。
惜しかったのは2着のエージェント・アリソン。ジェイミー・スペンサー騎手によれば、ゲート内で鐙が外れ、後方からの競馬を余儀なくされたもの。その末脚は一時勝馬を脅かすほどでしたから、マトモなら逆転できる器かも知れません。昨シーズン最後にマルセル・ブーサック賞(仏GⅠ)に挑戦しただけの期待感あるクラシック候補です。

最後は、今も昔もグリーナム・ステークス Greenham S (GⅢ、3歳、7ハロン)。先のクレイヴァン同様に小頭数の競馬となり、5頭立て。又してもリチャード・ハノン/リチャード・ヒューズのオリンピック・グローリー Olympic Glory が8対11の1番人気に期待されています。

伏兵(20対1)サー・パトリック・ムーア Sir Patrick Moore がペースをスローに落としての逃げ。4番手を進んだオリンピック・グローリーは、ズブさを見せながらも懸命なヒューズ騎手の仕掛けに何とか応え、逃げるサー・パトリック・ムーアを1馬身捉えて優勝、期待に応えました。最後方から追い込んだ2番人気(13対8)ムーハージム Moohaajim が更に4分の3馬身差で3着。
ジョッキーの手応えはムーハージム(マーチン・ヘイリー騎手)の方が良く見えましたが、追い出してからは期待ほどの伸び脚が無く、あるいは7ハロンが適性距離より長いのかもしれません。

これで6戦5勝、負けたのはドーン・アプローチ Dawn Approach の2着だけというオリンピック・グローリー。そのオーナーであるジョアーン・ビン・ハマド・アル・サニ氏は、ライヴァルでもあるトルネード Toronado を購入したため、2000ギニーではバッティングすることになります。
同馬はズブいタイプであるため、重馬場の適性に優れ、去年仏グラン・クリテリウム遠征の実績もあります。陣営ではトルネードとの対決を避け、仏2000ギニーに向かう可能性が高いことを仄めかしました。

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