GⅡに勝って100万ドル!

土曜日のアメリカ競馬は、5つの競馬場で合計7鞍のグレード戦という忙しいレポートになります。多少乱雑になりますが、ご容赦のほどを

ところで小欄はブラッドホース誌の電子版を参考にしていますが、4月20日の競馬から予想記事のレイアウトが若干変更になりました。これまでの枠順と予想に加え、レース自体の記録なども掲載されています。これも参考にして、当方も若干模様替えと致しましょう。

最初はカルダー競馬場のマイアミ・マイル・ハンデキャップ Miami Mile H (芝GⅢ、3歳上、8ハロン)。新スタイルの予想記事では第27回になる由。去年は雨のためダート・コースに変更されましたが、今年もそれを当てにして2頭が変更時のみの登録。結局は good の芝コースで行われることになり、本来の12頭から4頭の出走取り消しが出て8頭立てで行われました。既に芝のGⅢに勝っているサマー・フロント Summer Front が4対5の1番人気。
本質的に差しタイプのサマー・フロントは、エル・コモドーレ El Commodore の逃げを中団で待機。期待通り差し足を発揮し、逃げるエル・コモドーレを1馬身半捉えて見事人気に応えました。更に1馬身半差でエンパイア・ビルダー Empire Builder が3着。
クリストフ・クレメント厩舎、ジョー・ブラーヴォ騎乗のサマー・フロントは、去年のニューヨークでヒル・プリンス・ハンデ(芝GⅢ)に勝って以来の勝利。ジャマイカ・ハンデ、セクレタリアート・ステークスといういずれも芝のGⅠ戦で3着した同馬は、昨秋のハリウッド・ダービーで着外に敗れたあと冬場の休養。今年3月にガルフストリームの芝コースでアローワンス戦3着してここに臨んでいました。カルダー競馬場は初体験。クレメント師によれば、去年は適性の無い距離で使ったことが不運で、今年は得意の1マイルを中心に使うローテーションを考えているとのこと。

続いてホーソン競馬場の2鞍に行きましょう。先ずは第37回目となるシックスティー・セイルズ・ハンデキャップ Sixty Sails H (GⅢ、3歳上牝、9ハロン)。fast の馬場に6頭立て、GⅡ馬のディスポーザブルプレジャー Disposablepleasure が6対5の1番人気。
デヴィアス・インテント Devious Intent の逃げを3番手でマークしたディスポーザブルプレジャー、外から先行馬を捉えると、後方から追走するブラッシュド・バイ・ア・スター Brushed by a Star に3馬身差を付けての楽勝です。3着は6馬身の大差が付いてリトル・ミス・プロトコル Little Ms Protocol の順。
トッド・プレッチャー厩舎、ハヴィエル・カステラノ騎乗のディスポーザブルプレジャーは、2歳時にアケダクトのドモワゼル・ステークス(GⅡ)を制した馬。その後は7連敗と勝鞍には恵まれませんでしたが、ブラック=アイド・スーザン(GⅡ)、マザー・グース(GⅡ)という準クラシックで2着の実力の持ち主。夏場にスピンスター・ステークス(GⅠ)10着のあと体調を崩して5月間休養し、3月にガルフストリームのアローワン戦で復活勝利を飾っていました。

シカゴのメインはイリノイ・ダービー Illinois Derby (GⅢ、3歳、9ハロン)。今年第56回を迎える伝統のダービー・トライアルですが、今年のケンタッキーへのポイント加算レースからは外れました。それでも丁度1か月後には三冠第2弾のプリークネス・ステークスを控え、クラシックを目指す馬の登竜門であることに変りはありません。関門を潜るべく14頭が出走、前走ルイジアナ・ダービー3着でケンタッキーへ20ポイントを獲得しているデパーティング Departing が9対5の1番人気。
レースはテイクン・バイ・ザ・ストーム Taken by the Storm が逃げる速い流れ。前半9番手でジックリ他馬の動向を窺っていたデパーティングは、格の違いを見せ付けるように次から次へと前の馬を交わすと、2着に喘ぐフォーデュパイ Fordubai に3馬身4分の1差を付ける完勝です。直線で大きく寄れながらも2着したフォーデュパイと3着シエテ・デ・オロス Siete de Oros との着差は首。この蛇行が審議になりましたが、最終的には入線通りで確定しています。
アルバート・ストール厩舎、ブライアン・ジョセフ・ヘルナンデス・ジュニア騎乗のデパーティングは、ルイジアナ・ダービーまでは3戦無敗で来たクラシック候補。20ポイントを得ているケンタッキー・ダービー挑戦の夢は捨てていません。その結果(出走可否に拘わらず)を見て、プリークネス出走を判断したいとのこと。

土曜日3か所目は、連日G戦が組まれているキーンランド競馬場。今年第32回を迎えるレキシントン・ステークス Lexington S (GⅢ、3歳、8.5ハロン)です。この3歳戦の勝馬にもケンタッキー・ダービーへ20ポイントが付与され、言わばワイルド・カードとも言えるトライアル戦。馬場は fast 、1頭取り消して10頭が参戦してきました。3連勝して臨んだルイジアナ・ダービーは8着でしたが、何としてもダービーに出たいサンビーン Sunbean が5対2の1番人気。一方ケンタッキー・オークスにポイントを使おうと目論む牝馬のピュア・ファン Pure Fun の挑戦にも注目で、こちらは7対2の2番人気に支持されていました。
各馬一斉の美しいスタートから、リヴァー・ロックス River Rocks が先頭。これを5番手で追走した4番人気(6対1)のウイニング・コース Winning Course が外から追い上げて直線で鮮やかに抜け、熾烈な2着争いに1馬身差を付けての快勝です。3頭が一線となった2着争いは、写真判定の結果首・首でジェネラル・エレクション General Election が2着、ピック・オブ・ザ・リッター Pick of the Litter 3着、チェロ Cerro 4着の順。サンビーンは5着に敗れ、ピュア・ファンも7着とポイント加算には至りませんでした。
またもやトッド・プレッチャー厩舎、ジュリアン・ルパルー騎乗のウイニング・コースは、これで7戦3勝となりG戦初勝利。キーンランドは得意なコースで、前走ポリトラックでのアローワンスを含め3戦3勝。20ポイントを獲得し、ランキングでは21位に上がってきました。これまでこのレース通算4勝でウェイン・ルーカス師と並んでいたプレッチャーは、これで単独首位の5勝目。有力なダービー候補を複数擁する厩舎としては、ダービー参戦は80%無いとしていますが、オーナーたちは意欲満々。限定20頭枠に21番目とあっては盛り上がらない訳には行かないでしょう。2週間後に迫った本番にウイニング・コースの参戦はあるのか・・・。

さて西海岸のサンタ・アニタ競馬場、こちらのG戦は芝コースの2鞍で、最初は第65回を迎える伝統のサンタ・バーバラ・ハンデキャップ Santa Barbara H (芝GⅡ、4歳上牝、10ハロン)。firm の馬場に2頭が取り消し、5頭立てで行われました。アメリカン・オークス、デル・マー・オークスと芝のGⅠ戦に2勝、BCフィリー・アンド・メアで古馬に初挑戦して5着に入ったレディー・オブ・シャムロック Lady of Shamrock が1対5の断然1番人気に支持されています。
前半は離れて最後方に待機したレディー・オブ・シャムロック、第3コーナーから内ラチを衝いて抜けようとしましたが、前を行くヴィヴァ・カリーナ Viva Carina に寄られて前をカットされ、立て直したものの1馬身半差届かず2番手での入線。3着には1馬身差でカエリス Caelis が続きます。当然ながらこの場面が審議の対象となり、結局は1着で入線したヴィヴァ・カリーナは妨害したレディー・オブ・シャムロックのあと、2着と降着になり、優勝は本命馬に与えられることになりました。
2頭の着差が1馬身半あっただけにややラッキーの側面もありますが、ジョン・サドラー厩舎、ラファエル・ベハラノ騎乗のレディー・オブ・シャムロックは、今期初戦の前走サンタ・アナ・ステークス(芝GⅡ)2着に続き2戦目でのシーズン初勝利。今年の目標は、もちろんBCでの戴冠です。

続いてはサン・シメオン・ステークス San Simeon S (芝GⅢ、4歳上、6.5ハロン)。こちらは第46回目を迎える芝の短距離戦。独特のヒルサイド・コースが舞台です。こちらも1頭が取り消して6頭立て。GⅡ2勝馬で、BCマイルでも年度代表馬ワイズ・ダン Wise Dan の3着したオビアスリー Obviously が、シーズン・デビューを迎えてイーヴンの1番人気に支持されています。
2番手スタートから一気に先頭に躍り出たオビアスリー、そのままスピードで押し切るかに見えましたが、3番手追走の2番人気(2対1)チップス・オール・イン Chips All In がゴール手前で本命馬を半馬身捉えての逆転です。1馬身4分の1差3着にチョーズン・ミラクル Chosen Miracle 。1・2着の負担重量差は5ポンドあり、単純な計算ではハンデ差が産んだ結果とも言えるでしょう。
ジェフ・マリンズ厩舎、タイラー・ベイズ騎乗のチップス・オール・インは、これがG戦初勝利。6か月の休養明けで臨んだ前走の一般ステークス(同じコース)でハナ差2着惜敗。逆転があればこの馬、と目される存在ではありました。

最後はチャールズ・タウン競馬場のチャールズ・タウン・クラシック Charles Town Classic (GⅡ、4歳上、9ハロン)。今年が僅か5回目と言う新しいレースですが、GⅡながら総賞金が150万ドルというGⅠ並みの高額賞金レースでもあります。これより賞金が高いのはBCシリーズとケンタッキー・ダービーだけ。 fast の馬場、1頭が取り消して6頭立てですが、高賞金を反映してサンタ・アニタ・ハンデの勝馬2頭が対決の様相を呈していました。一昨年と今年の覇者ゲーム・オン・デュード Game On Dude が1対5の圧倒的1番人気、対する去年の勝馬ロン・ザ・グリーク Ron the Greek が7対2の2番人気で続きます。去年レース史上(と言っても僅か4回ですが)最も高配当で制し、史上最高着差の3番差で制したカイシャ・エレクトロニカ Caixa Electronica も出走しています。
プレッチャー厩舎のパーカッション Percussion が逃げ、ゲーム・オン・デュードは余裕の2番手追走。向正面で早くも逃げ馬に並び掛けると、第3コーナーで先頭に立ち、追い上げるロン・ザ・グリークとクラブハウス・ライド Clubhouse Ride を半馬身抑えて期待に応えました。しかし最後は2頭に差を詰められる内容で、関係者はドキドキでレースを見つめていた由。2着争いはハナ差でクラブハウス・ライドに軍配が上がりました。4着以下は7馬身半差が付き、逃げたパーカッション4着、連覇を目指したカイシャ・エレクトロニカは5着という本命サイドの結果です。
ゲーム・オン・デュードは当日記常連で、お馴染みボブ・バファート師の管理馬で、名手マイク・スミス騎乗。一昨年、同馬はサンタ・アニタ・ハンデに勝った後、このレースでは2着と苦杯を舐めました。今年はその雪辱、獲得したGⅡのタイトルより、勝馬に分配される1着賞金100万ドルの方が遥かに重みのある勝利でしたね。

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