読売日響・第525回定期演奏会

読響の新シーズンがスタートしました。3月まで正指揮者を務めた下野竜也が首席客演指揮者に移行し、去年8月から特別客演指揮者に小林研一郎が就任。何と9人の指揮者が肩書を所有するという豪華キャストの読響です。
新シーズンは下野の登場回数が減り、その分コバケン氏の出番が増えるということでしょうか。4月は、その小林研一郎が久し振りに定期を指揮します。
コバケン/読響のコンビは決して新しくはなく、私も何度かナマで体験していますが、定期会員の多くには新鮮に映るでしょう。会場の反応にも興味が持たれます。

久し振りの定期とあって、マエストロが選んだのは得意中の得意、十八番とも言うべき我が祖国全曲でした。第3曲の「シャールカ」と、第4曲「ボヘミアの森と草原から」の間に休憩が入ります。

スメタナ/連作交響詩「我が祖国」全曲
 指揮/小林研一郎
 コンサートマスター/小森谷巧

コバケンは「我が祖国」を、かつて日本フィルの東京定期でも演奏しましたし、2002年にはプラハの春音楽祭で本場チェコ・フィルを振ってオープニングを飾りました。その際にはNHKでも録画が放映されたと記憶しますし、日本からもプラハに応援団が駆け付けたのじゃなかったでしょうか。
日本フィルの定期会員が長い私は、もちろん氏のスメタナも聴いているので大雑把な感想に留めましょう。尤も昔のことなのでブログに記したかは思い出せません。調べる気力もありません。

今回の演奏も、日フィルでの感想と全く同じ。前半などは読響が日フィルと同じ音を出しているのに唖然としたほど。あれは「コバケン・トーン」だったんですね。
演奏後に氏が見せる楽員礼賛のアクションも、以前のまま。何処を振ってもコバケンはコバケンと、改めて苦笑した夜でしたね。メンバー諸氏はどんな感想を持ったのでしょうか、その方を聞いてみたいところです。

特に今定期は、新たにクラリネット首席として正式参加した金子平(かねこ・たいら)の素晴らしい演奏が聴きもの。シャールカでのソロはオケの中にピタリと嵌ると同時に、キラリと光る音楽性に惹き付けられました。
前半が終わってマエストロが真っ先に駆け付けたのが、金子の前。次代を担う読響のスターでしょう。今月のプログラム誌に、そのプロフィールが紹介されていました。

近年は感情移入が極端で、時に音楽の流れが停滞する傾向にある小林、この日は寧ろ速目、時に速過ぎるほどのテンポで推進力に満ちたスメタナを聴かせました。マエストロの真骨頂。
当初チェコ・フィルに拒否反応があったという氏の独特な解釈も健在。本場オケをも最後には説得してしまう、小林の粘り強さも聴き所です。

具体的に言えば、第1曲「ヴィシェフラド」では別のパートを弾くように書かれた2台のハープに、同じパートをユニゾンで弾かせること。
最も有名な第2曲「モルダウ」は、本来はハープ1台のところを2台で同じようにユニゾンで奏させる。折角2台並んでいるのだから、使わない手は無いでしょ、と言わんばかり。
そして極めつけは第6曲「ブラニーク」の最後。スメタナのオリジナルには無い大太鼓のトレモロを動員して、いやが上にも大音響を響かせるのでした。大太鼓奏者は本来ならモルダウで出番は終了し、前半が終わればサッサと着替えて帰宅できるパート。プラハでは、最後まで付き合わされることに楽員の不満があったのかもしれませんね。

記憶では、日フィルでは“すいません、アンコールを用意していないので最後の30秒!”と挨拶して大太鼓を再度響かせましたが、今回はアンコールも、マエストロ得意の挨拶も無し。
で、客席の反応は、プログラムが終わるとサッと席を立つ人が目立った一方で、例会とはやや質の異なるブラヴォーも飛び交います。今後はコバケン率が高くなるであろう読響、この回だけでは「傾向と対策」を決め兼ねるファンが多いと見ました。

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