サンダウンのクラシック・トライアル

昨日今日の二日間行われるサンダウン競馬場の春開催ですが、その前に今英国競馬会を揺るがせているステロイド・ショックについて簡単に。

一昨日の木曜日、薬物疑惑によりゴドルフィンの馬を長年に亘って調教してきたマームド・アル・ザルーニ師が8年間の調教停止処分を受けたという衝撃的なニュースが世界を駆け巡りました。
私は未だ詳しい経緯に目を通していませんが、知り得た概要では、ドバイで調教されているゴドルフィンの馬15頭からステロイドが検出された由。ステロイドはドバイでは禁止されていないものの、ザルーニ厩舎はドバイとニューマーケットを往復している経緯があり、BHAはザルーニ師の英国での調教を8年間禁止する処置を発表しました。
対象となった15頭は全てシェイク・モハメド殿下の持ち馬で、ゴドルフィン側の会見では、殿下は事実について全く関知していないとのこと。その15頭の中には、今年の牝馬クラシック候補と目されていたサーティファイ Certify も含まれ、4月9日から10月8日までの6か月間、英国での出走が禁止されます。ザルーニ師の他、獣医も含めて厩舎関係者3人も処分の対象になっているそうな。

去年は厩舎の主戦を務めたランフランコ・デットーリが禁止薬物使用の廉で6か月間の騎乗停止を受け、長年続いたデットーリとゴドルフィンの関係にも終止符が打たれました。
この所不祥事が続くゴドルフィンですが、落とした信頼を回復するには相当の期間が必要かと思慮します。それにしてもこのニュース、何故か日本では詳しく報道されていないようですね。不思議の国ニッポンの面目躍如、なんでしょうか。
今年のお正月、半世紀前の英国競馬回顧でレルコの薬物使用疑惑を紹介しましたが、それから丁度50年の今年、またしても競馬界に激震が走りました。このスポーツを長年愛してきた小欄としても、競馬そのものへの信頼が揺らぎつつあるのを見るのは忍びないこと。日本を含めて Equine Sports を考え直す機会かも知れません。

ということで前置きが長くなりましたが、昨日のサンダウンは雨が降り出したものの馬場は good 、所により good to soft という状態で、パターン・レースは2鞍が組まれていました。

最初はサンダウン・マイル Sandown Mile (GⅡ、4歳上、1マイル14ヤード)。今年はスポンサーの関係で bet365 Mile が正式呼称。7頭が出走し、先月ポリトラック・コースのウインター・ダービー(GⅢ)を制したファラージ Farraaj が9対4の1番人気。このレースに強いリチャード・ハノン厩舎の2頭にも注目で、主戦のリチャード・ヒューズはトランペット・メジャー Trumpet Major を選択し2番人気(3対1)。リブランノ Libranno にはキーレン・ファロンが騎乗してきました。
レースはハイランド・ナイト Highland Knight が逃げ、ファラージは2番手追走。しかしファラージは馬場が合わないのか後退、5着と期待を裏切ります。抜け出したのは好位追走のトランペット・メジャー、最後の2ハロンで2番手に上がると、寄れるハイランド・ナイトを尻目に弾丸のように突き抜け、逃げ馬に1馬身4分の1差を付けて快勝しました。3着も1馬身4分の1差でチル・ザ・カイト Chil The Kite 。
上記の様に勝馬を管理するリチャード・ハノン師は、何とこのレース最近10年で7勝目。騎乗したヒューズ騎手もここ6年で5勝と、圧倒的な強さを誇ります。ヒューズはインタヴューに応え、馬場は雨の影響で good というより soft に近い状態だった由。去年クレイヴァン・ステークスに勝って2000ギニー4着のトランペット・メジャーは、4歳になって更に成長していることに太鼓判を押しました。このあとはロッキンジ・ステークスでGⅠを目指すことになりそうです。

もう一鞍が、レース名の通りクラシック・トライアル Classic Trial (GⅢ、3歳、1マイル2ハロン7ヤード)。7頭が出走しましたが、3頭がアイルランドからの遠征馬。その中エイダン・オブライエン厩舎のアイ・オブ・ザ・ストーム Eye of The Storm が2対1の1番人気に支持されていました。負担重量の関係から、騎乗するのはジョセフではなくライアン・ムーア。

レースの主導権を取ったのは3番人気(4対1)のシュガー・ボーイ Sugar Boy 。これをマークして進んだ本命アイ・オブ・ザ・スターが残り2ハロンで先頭に立ちましたが、シュガー・ボーイが気力を振り絞っての差し返し。2頭が並んでゴール板を通過し、写真判定の結果シュガー・ボーイが頭差でアイ・オブ・ザ・ストームを抑えていました。半馬身差でデヴィッド・ワッチマン厩舎のガリレオ・ロック Galileo Rock が追い込み、アイルランド遠征馬のワン・ツー・スリーに。
勝ったシュガー・ボーイはアイルランドでバディ・ブレンダーガスト師が管理し、12日前にレパーズタウンのバリーサックス・ステークス(GⅢ)でバトル・オブ・マレンゴ Battle of Marengo の2着した馬。この勝利でバトル・オブ・マレンゴの評価が更に高まる結果となりました。シュガー・ボーイ自身もダービーへのオッズは6対1から7対1とバトル・オブ・マレンゴの2番手に上がりましたが、エプサムへの登録はありません。プレンダーガスト師によると、オーソライズド Authrized 産駒の同馬はエプサム向きの馬ではなく、アイルランド・ダービーに直行する予定とか。英国のクラシックは、よりギャロピング・コースで行われるセントレジャーを目指すのだそうです。
騎乗したクリス・ヘイズ騎手は、サンダウンは初騎乗。本命馬に交わされた時は仕掛けが早かったかと思ったそうですが、ブレンダーガスト師のアドバイスが奏功。思えばプレンダーガスト師はサー・マイケル・スタウト、エド・ダンロップ両師の元で修業した経歴の持ち主で、サンダウンは熟知の競馬場。コース適性に合わせて管理馬を送り込んでくることで、高い勝率を維持できるのでしょう。

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