新たなる夜明け

5月4日の土曜日、ニューマーケット競馬場で今年のクラシック第一弾、2000ギニー 2000 Guineas S (GⅠ、3歳、1マイル)が行われました。馬場は前夜一滴の雨も降らなかったため予想以上に回復し、good to firm とこの時期にしては堅い馬場。
既に枠順を紹介したように、13頭が出走。ジム・ボルジャー厩舎、ケヴィン・マニング騎乗で2歳チャンピオンのドーン・アプローチ Dawn Approach と、リチャード・ハノン厩舎、リチャード・ヒューズ騎乗でトライアルのクレイヴァンを楽勝したトルネード Toronado の2強対決の様相を呈していました。前者が11対8の1番人気、後者は11対4の2番人気。ドーン・アプローチは前哨戦を使わず、これがいきなりのシーズン・デビューですが、アイルランドからの調教報告も良好で、ここでは敗戦シーンを想像するのは難しいものがありましょう。

レースはスタートから伏兵(150対1)グローリー・アウェイツ Glory Awaits が飛び出し、唯1頭だけスタンドから遠い側を逃げます。中央馬群の先頭は、ドーン・アプローチのペースメーカーでもある同じジム・ボルジャー厩舎のレイティール・モール Leitir Mor 。有力2頭はそのあと、トルネードが前に、ドーン・アプローチはそれをマークするように4番手で進みます。
残り2ハロン、2強が仕掛けて一騎打ちとなりましたが実力の差は歴然、ドーン・アプローチ独走で2着以下に5馬身差を付ける完勝でした。トルネードは食い下がって2番手に上がったものの、最後の1ハロンで力尽きて4着に終わり、終始逃げたグローリー・アウェイツが盛り返して2着。更に2馬身4分の1差に6番人気(20対1)ヴァン・デア・ニール Van Der Neer が入り、3頭出しで臨んだオブライエム・チームからジョセフ・オブライエンが選んだクリストフォロ・コロンボ Cristoforo Colombo が5着。競馬ジャーナリズムではジョセフの選択に疑問を投げかける者もいましたが、流石と言うべきでしょうか(オッズではマース Mars が9対1の3番人気で上位。こちらは6着でした)。

終わってみればドーン・アプローチが抜けていた2000ギニー、無敗の連勝記録を7に伸ばしました。オーナーはステロイド・スキャンダルに揺れたばかりのゴドルフィン。悪いニュースばかり続いたシェイク・モハメドにとって名誉挽回となるクラシック制覇でもありました。幸いドーン・アプローチは薬物とは無関係のアイルランド調教馬。名前の通りモハメド殿下にとって新たな「夜明け」となるでしょう。
ダービー出走は未定ですが、オッズは一気に2対1に。陣営の最終決断は総裁シェイク・モハメドに委ねられます。

ニューマーケットのギニー開催初日は、他に2鞍の対照的なG戦が組まれています。先ずはパレス・ハウス・ステークス Palace House S (GⅢ、3歳上、5ハロン)。スタート30分前に1頭が取り消して16頭立て。ドバイ帰りのソール・パワー Sole Power と、前走ニューバリーのハンデ戦勝ちしたヒーラート Heeraat が7対2で1番人気を分け合っていました。3歳馬は3頭が参戦しています。

残り1ハロン、馬場の中央から抜けたソール・パワーが先頭に立つと、後は危な気ない快勝。2着の復活したキングズゲート・ネイティヴ Kingsgate Native に1馬身差を付けていました。更に1馬身4分の1差で4番人気(9対1)タンジェリン・トゥリーズ Tangerine Trees が3着、人気の一方ヒーラートは短頭差での4着。

エディー・ライナム厩舎、ジョニー・ムルタ騎乗のソール・パワーは、先に紹介した通り冬場はドバイで過ごし、メイダンでリステッド戦と現地のGⅠ戦に2戦して夫々2着、4着。去年はドンカスターでリステッドのスカボロー・ステークスに勝っただけですが、一昨年はテンプル・ステークス(GⅡ)を、更に2010年にはGⅠのナンソープ・ステークスを制していた実力馬。今年6歳のせん馬です。
ライナム師によれば、良馬場の5ハロンが好走の条件で、次走は一昨年勝ったテンプル・ステークスの予定。ロイヤル・アスコットではキングズ・スタンド・ステークスに挑戦するでしょう。ドバイでもコンビを組んでいたムルタ騎手が是非6ハロンに挑戦したいということで、ジュライ・カップを視野に入れているとか。更にはナンソープ、アベイ、招待があれば香港と青写真を描いているようです。

もう一鞍はジョッキー・クラブ・ステークス Jockey Club S (GⅡ、4歳上、1マイル4ハロン)。僅か4頭立てで、7対4の1番人気にはノーブル・ミッション Noble Mission が選ばれていました。前走ジョン・ポーターは3着でしたが、あのフランケル Frankel の全弟、同じ陣営という人気先行タイプでしょうか。

レースはジョー・ファニング騎手の逃げ作戦が的中、3番人気(11対4)ユニヴァーサル Universal の逃げ切り勝ちです。最後は2番人気(9対4)ダンディーノ Dandino に追い詰められましたが、首差凌ぎ切りました。2馬身半差の3着争いはヴィグモア・ホール Wigmore Hall に軍配。本命ノーブル・ミッションは最下位に終わっています。
ユニヴァーサルは、前走ジョン・ポーター・ステークスの勝馬。その前のリングフィールドでの一般戦を含めて今期は3連勝と絶好調。管理するマーク・ジョンストン師は、次なる狙いをGⅠ戦に定めている様子。秋にはメルボルン・カップへの遠征も考えているようです。メルボルン遠征は、2着ダンディーノを管理するボッティ師も視野に入れています。

さて土曜日は、フランスのサン=クルー競馬場でもグレフュール賞 Prix Greffulhe (GⅡ、3歳牡牝、2000メートル)が行われました。good to soft の馬場に5頭立て。2戦無敗のオコヴァンゴ Ocovango が4対5の1番人気。

若手ピエール=シャルル・ブードー騎乗のオコヴァンゴが先頭に立ってレースを引っ張ります。残り2ハロンで、3番手につけていた3番人気(33対10)ブラヴォディーノ Bravodino が並び掛けて2頭の一騎打ち。結局両馬の差は縮まらず、最後は半馬身差でオコヴァンゴが期待に応えました。2馬身半差で2番人気(3対1)のワイア・トゥ・ワイア Wire To Wire が最後方から追い込んで3着。
勝ったオコヴァンゴは、2歳時はサン=クルー競馬場で新馬勝ち、今期も同じサン=クルーでリステッド戦に勝って3連勝となります。同馬を管理するアンドレ・ファーブル師は、一昨年のこのレースをプール・モア Pour Moi で制し、エプサム・ダービーも連勝。今回のオコヴァンゴも、2着ブラヴォディーノと共にエプサムにも登録済み。ドーン・アプローチにとって不気味な挑戦者出現といったところでしょう。ダービーへのオッズは14対1から16対1が出されています。

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