日本フィル・第287回横浜定期演奏会

昨日は雨の中、日フィルの横浜定期を聴いてきました。確か先月の定期も雨、日フィル横浜は相当な雨女・雨男に気に入られているらしく、雨の桜木町は毎度見る光景になってしまったようです。
先月のインキネン、来月予定のラザレフとの谷間で、5月定期は中休み的な位置付けでしょうか。「輝け!アジアの星」シリーズ第7弾として話題の指揮者・垣内が日フィル・デビューを果たします。以下のプログラム↓

ウェーバー/歌劇「魔弾の射手」序曲
ロドリーゴ/アランフェス協奏曲
     ~休憩~
シューマン/交響曲第3番「ライン」
 指揮/垣内悠希
 ギター/村冶佳織
 コンサートマスター/江口有香
 ソロ・チェロ/菊池知也

私が垣内を聴くのは2度目。前回の東フィルでのレポートは小日記12年4月21日で紹介しましたから、そちらを併せてお読みください。私自身読み返してみて、今回の感想もほとんど同じであることに気が付きました。
プログラムには、私も聴いた東京デビューのブラームスを“鋭敏な色彩感の反映された名演”と紹介してありましたが、エッ、という評価にも感じます。音楽は聴き様、様々な意見が産まれるのも当然でしょう。

ウィーンで勉強した指揮者らしく、今回もドイツ音楽が中心のプログラム。真ん中のロドリーゴは、一期一会的なレパートリーでしょう。
そのロドリーゴ、これほどの名曲(有名な曲、の意味)になると、却ってナマで聴く機会は少なくなるもの。私の錆びついた記憶をひっくり返しても、何時何処で聴いたか思い出せません。まさか、とは思いますが、ナマは初体験かも。横浜ならではの機会と言えましょうか。

そもそもギターのソロと大管弦楽(と言っても8型でしょうか)とでは音量的に太刀打ちできるものじゃありません。今回は(通例を知らないので、今回も、か)スピーカーを通してのアンサンブルでした。
もちろん違和感を出さないための配慮がなされ、妙な音量増加はありませんでしたが、やはりソロの低音の響きには如何にも、という感じも。人気のソリストだけに、会場の声援も一際でした。何故かアンコールは弾かず。

ウェーバーとシューマンは、やや速目のテンポ、屈託の無い音楽で、流れを重視したもの。垣内ならではの表現、と言ったものは感じられず、オケの側で音楽を創り上げた印象。
この位のオーケストラと経験の浅い指揮者ならば、主導権がオケにあるのは自然な流れでしょう。

横浜ではアンコールを用意するのが日フィルの伝統で、今回は同じシューマンから「トロイメライ」が披露されました。弦楽合奏にアレンジされた版で、確認は出来ませんでしたが、恐らくアーサー・ラック Arthur Luck の編曲かと思われます。
大分以前になりますが、同じくブザンソン優勝者の下野竜也が某所で読響と「ライン」を演奏した時、同じトロイメライがアンコールされました。そのとき楽屋にまで押しかけて下野氏に編曲者を確認したところ、確かラック版だと聞いた記憶があります。
私が知っている限りでは、ラックはフィラデルフィア管のライブラリアンを長年務めた人。自身でアンコール用に編曲したものも多く、ほとんどは自身が設立した出版社ラックス Luck’s から出ているはず。関心ある方は是非調べてみてください。

どうやらブザンソン派は、ラインを振るとトロイメライをアンコールしたくなる傾向がある様子。

今回が日フィル・デビューの垣内、これからも続々日本のオーケストラを振るでしょうし、いくつかのオケからは継続的に演奏できるチャンスが巡ってくるかもしれません。
それが一巡してからが指揮者としての本当のスタート。それまでは若い才能を見守り、育てていく姿勢が肝要かと思慮します。それこそ、輝け!アジアの星、ということなのでしょう。

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