混戦の仏ギニー

昨日速報でお伝えしたフランスの二つのギニー、改めて詳しくレポートして行きましょう。

5月12日、ロンシャン競馬場の馬場は good 、二つのギニーを含めてG戦は4鞍組まれていましたが、先ずは牡馬によるフランス最初のクラシック戦プール・デッセ・デ・プーラーン Poule d’Essai des Poulains (GⅠ、3歳牡、1600メートル)から。
例年の通り多頭数が揃ったギニー、18頭が出走し、4対1の1番人気に支持されたのは、英国(リチャード・ハノン厩舎、リチャード・ヒューズ騎乗)からの挑戦ながら既にこのコースでGⅠ(ジャン=リュック・ラガルデール賞)に勝っているオリンピック・グローリー Olympic Glory 。シーズン初戦のグリーナム・ステークス(GⅢ)も制して順調ですが、12番枠と言う外枠を克服できるかが課題。小回りのロンシャンでの多頭数は、どうしても外枠が不利になります。
続いてはコンデ賞、クリテリウム・ド・サン=クルーの勝馬で、3歳初戦フォンテンブロー賞ではジェンジス Gengis の2着したモランディ Morandi が2番人気(53対10)で続き、トライアルのジェベル賞を制したスタイル・ヴァンドーム Style Vendome が3番人気(58対10)。これをG戦初挑戦ながら3戦無敗のインテロ Intello (8対1、4番人気)が追う、という人気になっていました。

スタート・ダッシュで飛び出したのは2番枠を引いた英ゴスデン厩舎・ビュイック騎乗のブライト・ストライク Bright Strike でしたが、直ぐに4番枠から出たプランスダルジャン Princedargent が交わしてペースを作ります。オリンピック・グローリーは外々を回される苦しい展開。17番枠のインテロも他馬と接触する場面もあって外枠不利を印象付けます。
先行馬が役目を終えると、巧く前が開いたのは終始内々の4番手を追走した3枠スタートのスタイル・ヴァンドーム。ティエリー・テュイレ騎手の仕掛けはやや早いかに見えましたが、ゴール目掛けて殺到する後続馬たちを首差抑えての戴冠です。熾烈な2着争いは4頭が対象で、写真判定の結果、2着は伏兵(39対1)ダスターホン Dastarhon が食い込み、頭差で惜しくもインテロ3着、更に頭差で愛オブライエン厩舎(ライアン・ムーア騎乗)のゲール・フォース・テン Gale Force Ten 4着、短頭でハノン厩舎の副将格(ジェイミー・スペンサー騎乗)ハヴァナ・ゴールド Havana Gold 5着。オリンピック・グローリーは結局武運無く11着と大敗し、モランディも6着に終わっています。勝った馬は別として、2着から5着までは展開の綾でしょうか。

3番人気でクラシックを射止めたスタイル・ヴァンドームは、去年のデビュー戦となった新馬戦で2着したあと5連勝。着差以上の実力の持ち主かも知れません。管理するニコラス・クレメント師、騎乗したテュイレ共々仏2000ギニーは初勝利となりました。次走はロイヤル・アスコットのセント・ジェームス・パレス・ステークスが有力ですが、仏ダービー参戦の可能性も残されています。

次に、直ぐに続けて行われたプール・デッセ・デ・プーリッシュ Poule d’Essai des Pouliches (GⅠ、3歳牝、1600メートル)。去年はディープの娘が制して日本でも話題になったクラシックですね。桜花賞のフランス版。今年は牡馬版より更に2頭多い20頭が出走してきましたが、日本繋がりの馬は出ていません。
2対1の1番人気に支持されたのは、前走ヴァントー賞を制して2戦無敗のエソテリク Esoterique 。2頭出しのアンドレ・ファーブル師には仏1000ギニー4勝目が掛かかり、主戦マクシム・グィヨンもこちらを選んできました。同じファーブル厩舎でミケール・バルザロナが騎乗するタサデイ Tasaday (グロット賞2着)は78対10の3番人気となり、2頭を割っての2番人気(11対2)はマルセル・ブーサック賞3着、前走サン=クルーのリステッド(カマルゴ賞)に勝っているアルテライト Alterite 。マルセル・ブーサック2着でグロット3着のトパーズ・ブランシュ Topaze Blanche が17対2の4番人気で続き、GⅠ馬(BCジュヴェナイル・フィリーズ・ターフ)フロティーラ Flotilla は5番人気(13対1)まで。

レースは、フロティーラと同じミケール・デルザングレ厩舎のセージ・メロディー Sage Melody がペースメーカーを務め、スタミナ勝負に持ち込むべくハイペースの流れ。これが奏功し、中団に待機したフロティーラが直線で鋭く伸びると、前半の遅れを中団まで盛り返して追い込む本命エソテリクを首差抑えて快勝。4馬身差が付いた3着には、スムースに先行できたタサデイが入り、短首差4着に英国ハノン/ヒューズ・コンビのズリガ Zurigha の順。
ペースが速かったこともあり、勝時計1分34秒77はレース・レコードを更新しました。因みに牡馬版も1分34秒68と牝馬版を上回るタイムでしたが、レース・レコードではありません。4度目を狙ったファーブル師は、惜しくも2・3着。

フロティーラを管理するデルザングレ師にとっては、仏1000ギニー初制覇。一方、騎乗したクリストフ・ルメールにとっては2003年のディヴァイン・プロポーションズ Divine Proportions 、2009年のエルーシヴ・ウェイヴ Elusive Wave に続く3勝目となります。
前記のようにフロティーラは、2歳時にアメリカ遠征してBCを制した馬。このレースでは8着終わったスカイ・ランターン Sky Lantern が先日英国の1000ギニーを制していますから、俄然BCの結果に注目が集まっています。

さて残る二つのG戦、ギニーの前に行われたのはオカール賞 Prix Hocquart (GⅡ、3歳牡牝、2200メートル)。8頭が出走し、G戦初挑戦ながら2戦2勝のザイディーン Zaidiyn と、これもG戦の経験が無いオブライエン厩舎の1勝馬フェスティヴ・チーア Festive Cheer が14対5の1番人気を分け合っていました。
しかし優勝は、内ラチ沿いに逃げたパーク・リール Park Reel をマークし、最後の1ハロンで外から捉えた3番人気(33対10)のタブロー Tableaux 。粘ったパーク・リールが短頭差で逃げ残り、更に短頭差で3番手から追い詰めたフェスティヴ・チーアが3着。ザイディーンは後方のまま8着と期待を裏切っています。

アンドレ・ファーブル厩舎、マキシム・グィヨン騎乗のタブローは、既報のようにノアイユ賞を未勝利ながら制した馬。G戦連勝で、ファンは考え過ぎたのかもしれません。前走で提示された英ダービーへのオッズ25対1は、更に5ポイント上がって20対1となっています。
タブローのオーナーは、クールモアを代表する一人。3着のフェスティヴ・チーアも元よりクールモアの勝負服で走る1頭で、今年のダービー大本命ドーン・アプローチ Dawn Approach を軍団で包囲しようという作戦でしょうか。

ロンシャンの最後は、ギニーの後で行われた短距離のサン=ジョルジュ賞 Prix de Saint-Georges (GⅢ、3歳上、1000メートル)。1頭が取り消し、9頭立て。去年9月にプティ=クーヴェール賞(GⅢ)に勝ち、アベイ8着、今季もドバイで2戦未勝利ながらムシュー・ジョー Monsieur Joe が3対1の1番人気。
しかしムシュー・ジョーは、先行しながらも最後の伸び脚は見られず8着と大敗。勝ったのは、逃げたスティーバー・ポイント Steeper Point を後方から鮮やかに差し切った4番人気(11対2)のキャットコール Catcall 。共に中団から伸びたムーヴ・イン・タイム Move In Time に頭差、プレイス・イン・マイ・ハート Place In My Heart に更に短首差を付けていました。4着に粘ったスティーバー・ポイントも頭差の大接戦。

勝馬を管理するのは、自身もジョッキーとして最近まで同馬に騎乗していたフィリップ・ソゴーブ師。キャットコールは今期4戦目でのG戦初勝利となりますが、シーズン初戦まではソゴーブが騎乗していました。ここ3走はフランソワ=クサヴィエ・ベルトラス騎乗。前走フォンテンブローのリステッド戦に続く2連勝です。勝馬にとって、そもそもロンシャンなど中央場所では初出走でもありました。
ソゴーブと言えば、ハットトリック産駒で話題になったダバーシム Dabirsim (日本ではダビルシムでしたっけ)に騎乗してクラシック路線に乗せたジョッキー。あるいは頭の片隅に記憶しておられるファンもいるでしょう。

以上がロンシャン・レポート。日曜日はアイルランドのレパーズタウン競馬場でもG戦3鞍が行われています。

馬場は good to yielding 、所により yielding という柔らかい状態。最初のアメジスト・ステークス Amethyst S (GⅢ、3歳上、1マイル)には5頭が出走してきました。8対13の1番人気は、今期初戦ながら去年の最終戦メイトロン・ステークス(GⅠ、9月8日)で1着入線も2着降着(繰上りはチャチャマイデー Chachamaidee)の憂き目を見たダントル Duntle 。事実上のGⅠ馬、ここでは格上との評価でしょう。
実際、逃げる2番人気(3対1)スイート・ライティング Sweet Lighting を3番手で追走したダントル、カスタム・カット Custom Cut を4分の3馬身差ながら抑えて優勝しました。頭差でスイート・ライティングが逃げ粘りの3着。シーズン初戦、2着馬は既に今期3戦して前走も勝っていることを考えれば、着差以上の内容でしょう。

ダントルはデヴィッド・ウォッチマン厩舎、ウェイン・ローダン騎乗。ウォッチマン師によれば、次走はロイヤル・アスコットになる由で。陣営での評価の高さが窺い知れましょう。

続いて愛1000ギニーに向けてのトライアルとなるデリンスタウン・スタッド・1000ギニー・トライアル Derrinstown Stud 1000 Guineas Trial (GⅢ、3歳牝、1マイル)。1頭が取り消し9頭立て。ゴウラン・パーク競馬場の新馬戦での勝ちっぷりが良かったボルジャー厩舎のウィール・ゴー・ウォーキング We’ll Go Walking が13対8の1番人気。
しかし逃げたウィール・ゴー・ウォーキングは評判倒れのドン尻9着と大敗し、優勝は並んだ3番人気(6対1)の一角ジャスト・プリテンディング Just Pretending が攫ってしまいました。4番手につけ、残り3ハロンから積極的に先頭に立つと、同じ3番人気のヒント・オブ・ア・ティント Hint of A Tint を首差抜かせずの勝利。2馬身4分の1差でミザーヴァ Mizzava が3着。

アイルランドのクラシックに名乗りを上げたジャスト・プリテンディングは、エイダン・オブライエン厩舎、ジョセフ・オブライエン騎乗で、先週火曜日に3戦目で未勝利(ネイヴァン競馬場)を脱したばかり。騎乗したジョセフ曰く、愉快 Funny な奴でゲートを嫌うので先にゲートインしなければならないのだとか。躊躇うことなく愛1000ギニーに向かいます。

愈々日曜競馬最後のレポートは、デリンスタウン・スタッド・ダービー・トライアル・ステークス Derrinstown Stud Derby Trial S (GⅡ、3歳、1マイル2ハロン)。1頭取り消しの4頭立てですが、注目は何と言ってもクールモアのダービー候補筆頭バトル・オブ・マレンゴ Battle Of Marengo 。もちろんエイダン師とジョセフ騎手のチーム・オブライエン。2対13の圧倒的1番人気ですが、GⅠ(クリテリウム・インターナショナル)勝馬ロッホ・ガーマン Loch Garman も無視できるような存在ではなく、何とか9対2の2番人気。
レースはしかし、2強対決とはほど遠い内容で、スタートから先頭に立ったバトル・オブ・マレンゴの逃げ切り勝ち。2番手を進んだロッホ・ガーマンもそのまま2着になりましたが、着差は1馬身4分の3差と広がりも縮まりもせず。3着は1馬身4分の1差でリトル・ホワイト・クラウド Little White Cloud 。これを英国では「職人風」Workmanlike なパフォーマンスと評し、ブックメーカーには勝っても失望と映ったようです。従ってダービーへのオッズはレース前と変わらず5対1のまま。
オーナーたちは今週末のダンテ・ステークスでもう一叩きを望んでいるようですが、エイダン・オブライエン師は、ダンテにはここレパーズタウンで新馬勝ちしたインディアン・チーフ Indian Chief をメインにしたい様子。陣営内でもドーン・アプローチへの挑戦者選びに苦労しているようです。

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