閉鎖の決まったハリウッドから
5月11日のアメリカ競馬は、2冠の谷間とあって静かなもの。東海岸、西海岸で夫々一鞍づつのG戦が行われました。
先ず東海岸、ベルモント・パーク競馬場のピーター・パン・ステークス Peter Pan S (GⅡ、3歳、9ハロン)は雨で泥田 sloppy と化したメインコース、3頭が取り消して8頭立て。5対2の1番人気に支持されたエイブラハム Abraham はイリノイ・ダービー(GⅢ)4着馬で、トッド・プレッチャー厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗と言う陣営人気も手伝っていたでしょう。
レースは馬場の影響もあって、先頭に立った2番人気(7対2)の一角フリーダム・チャイルド Freedom Child の逃げ切り勝ち。2着セント・ヴィガー Saint Vigeur に13馬身4分の1差を付ける圧勝でした。更に2馬身4分の1差でゴー・ゲット・ザ・バジル Go Get the Basil が3着に入り、3番手を進んだエイブラハムはハナ差4着に敗退。
トーマス・アルベルトラーニ厩舎、ルイス・サエズ騎乗のフリーダム・チャイルドは、前走ウッド・メモリアル・ステークスではゲート内で暴れて大きく出遅れ、結局は最下位10着に大敗した馬。レース後は審議になったほどで、成績からは除外しても良いような内容でした。その前のレース、3月10日に未勝利を脱しており、これが2勝目、更にその前のレースではダービー馬オーブ Orb の2着の実績も。この日はオーブもおらず、スタートの出遅れも僅かなもので、すんなり先頭に立って本来の力を発揮しました。当然ながらステークスもG戦も初勝利、ベルモント・ステークスで再度オーブに挑戦することになるでしょう。
続いてハリウッド・パーク競馬場。前日突然年内いっぱいで廃止が発表された競馬場ですが、この日予定されたセニョリータ・ステークス Senorita S (芝GⅢ、3歳牝、8ハロン)は粛々と施行されています。馬場は firm 、1頭が取り消して7頭立て。前走プロヴィデンシア・ステークス(芝GⅢ)を制したスカーレット・ストライク Scarlet Strike が3対5の1番人気に支持されていました。この日、アメリカでの3000勝を達成したラファエル・ベハラノ騎乗も人気の要素です。
レースは3番人気(8対1)ディスコ・ダスコ Disko Dasko が一時は4馬身差を付ける逃げ。これを2番手で追走した4番人気(9対1)のチャーリー・エム Charlie Em が直線入口で捉え、一足先に抜け出します。本命スカーレット・ストライクは前半最後方から大外を回って猛追しましたが、惜しくも頭差及ばず2着。3着は1馬身4分の1差でキリアッキ Kyriaki の順。
パトリック・ギャラガー厩舎、ギャレット・ゴメス騎乗のチャーリー・エムは英国産。去年2歳時はイギリスを中心に8戦して3勝。最終戦となったドイツのリステッド戦では3着でした。因みに、レースホース誌の格付けは90。英国でもリチャード・ファヘイ厩舎からブレンダン・パウエル厩舎に転じた経緯もあり、現在のギャラガー師は同馬を管理する3人目の調教師。今回がアメリカ・デビュー戦でもありました。
ところでハリウッド・パーク競馬場の閉鎖、アメリカではそれほどの騒ぎにはなっていません。競馬場の新設・閉鎖は日常茶飯事とは言わないまでも、アメリカでは決して珍事ではありません。現にカリフォルニア州では2008年にベイ・メドウズ競馬場が閉鎖されたばかり。
それでも今年が開設75周年のハリウッド、第1回となった1975年の最初に、これまで3回のブリーダーズ・カップを開催してきた名門ハリウッドの閉鎖は感慨深いものがあります。
併設されたカジノは、再開発される跡地に残される予定だとか。将来のことは未定ですが、ハリウッドの厩舎や調教施設には代替を申し出る提案もあるとのこと。「ハリウッド」の名を冠した伝統のグレード戦がどうなるのか。アメリカ競馬の消長の激しさを思うニュースではありました。
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