2013クラシック馬のプロフィール(4)

前回に続いてフランスのクラシック馬、今回は仏1000ギニー馬フロティーラ Flotilla のプロフィールです。父ミズン・マスト Mizzen Mast 、母ルーヴェイン Louvain 、母の父シンダー Sinndar という血統。

最初に父ミズン・マストから。馬名は海事の専門用語で、娘フロティーラが「小艦隊」という意味であれば、船が好きな人は思わずニンマリということでしょうか。産駒は主にアメリカで走っていますが、自身はフランスでキャリアをスタートさせ、アメリカで閉じた馬。
2歳時にシェーヌ賞(1600メートルのGⅢ)に優勝。3歳時はクラシック・トライアルのギッシュ賞(GⅢ)を制し、パリ大賞典でチチカステナンゴ Chichicastenango の2着に健闘しました。この年のパリ大賞典は2000メートル。どちらも大逃げを打ってそのまま流れ込むタイプのレース内容でした。
ここまではクリスティーヌ・ヘッド=マーレク女史が調教していましたが、シーズン後半はアメリカに渡り、あのロバート・フランケル調教師が管理します。

アメリカではマリブー・ステークス、ストラブ・ステークスなどのG戦に勝ち、7ハロンから10ハロンまでが守備範囲でした。2003年から供用を開始し、初年度産駒にハリウッド・ゴールド・カップ(GⅠ、10ハロン)のマスト・トラック Mast Track を、2年目にもハリウッド・ダービー馬でチャールズ・ウィッティンガム・メモリアル(GⅠ、10ハロン)のミッドシップ Midship を出します。
2008年生まれのミズディレクション Mizdirection がBCターフ・スプリントを制し、アルティメイト・イーグル Ultimate Eagle もハリウッド・ダービーに勝つなど、最近の活躍は当ブログのアメリカ競馬カテゴリーを参照してください。
フロティーラは、ミズン・マストの最初のヨーロッパ・クラシック勝馬で、間違いなく代表馬の1頭。10ハロンを中心にしたスタミナ血統と評しても良いでしょう。

続いて本題の牝系です。
母ルーヴェイン(2002年 鹿毛)は11戦4勝。ミズン・マストと同じくフランスからアメリカに転戦した馬で、2歳時にフランスで7ハロン戦に勝ち、アメリカでGⅢのミエスク・ステークス(1600メートル)を制してG勝馬となります。3歳時にも一般ステークスをいくつか勝ちましたが、何れも1マイル戦でした。
繁殖に上がったルーヴェインは、初仔がルーヴァコヴァ Louvakhova (2008年 鹿毛 牝 父マリアズ・モン Maria’s Mon)で9戦3勝。この馬もフランスとアメリカ(一般ステークス)で勝ったマイラーです。
2番目はマーシュゲート・レーン Marshgate Lane (2009年 鹿毛 牡 父メダリア・ドロ Medaglia d’Oro)と言い、ゴドルフィンが所有して5戦1勝。35万ドルの高値で取引された割には、競走では今一でした。

今年の仏ギニーを制したフロティーラは、ルーヴェインの3番仔で2月25日生まれ、ドーヴィルの2歳競りで12万ユーロを付けた馬。去年、ヨーロッパ調教馬としては初めてBCジュヴェナイル・フィリーズ・ターフを制してGⅠ馬になっていました。彼女もまたフランスとアメリカで1マイル戦を制し、近年のファミリーの伝統を踏襲した形です。いずれはアメリカに転厩してG戦を戦い、彼の地で繁殖入りする運命でしょうか。
いずれにしても、父の種牡馬成績に鑑みれば、フロティーラが仏オークスの2100メートルという距離を問題にしないのは明らかと思われます。

2代母フランダース Flanders (1996年 鹿毛 父コモン・グラウンズ Common Grounds)は英国でティム・イースタービー師が調教し、19戦6勝の成績を残した馬。
2歳時にウインザー・キャッスル・ステークス、ウェザビーズ・スーパー・スプリントに勝ち、3歳時にはドンカスターでリステッド戦のスカボロー・ステークスにも勝ちました。しかし何と言ってもロイヤル・アスコットでキングズ・スタンド・ステークス(GⅠ)に出走し、短頭差で惜敗したのが最大の成果、その年のレースホース誌では「110」の評価を得ています。

繁殖牝馬としてのフランダースの成績を一覧にしておきましょう。

2002年 ルーヴェイン フロティーラの母
2003年 ファルベンシュピール Farbenspiel 鹿毛 牝 父デザート・プリンス Desert Prince 6戦1勝
2004年 マイ・ラヴ・トーマス My Love Thomas 鹿毛 牝 父カドー・ジェネルー Cadeaux Genereux 5戦1勝(リングフィールドの6ハロン)
2005年 ワロニア Wallonia 鹿毛 牝 父バラセア Barathea 9戦1勝(サースクの7ハロン)
2006年 ラグーン Laggon 鹿毛 牝 父モンジュー Montjeu 5戦1勝(ナースの10ハロン)
2007年 デザート・ポピー Desert Poppy 鹿毛 牝 父オアシス・ドリーム Oasis Dream 17戦4勝 ベングー・ステークス(アスコットのGⅢ、6ハロン)
2008年 ラジュージ Laajooj 鹿毛 牡 父アザムール Azamour 11戦4勝(英国とドバイ、8ハロンと10ハロンに3勝)現役
2009年 ハヴィンナ・グッド・タイム Havin A Good Time 鹿毛 牝 父ジェレミー Jeremy 8戦3勝(全て5ハロン)

産駒のほとんどが牝馬であること、初年度から続けて勝馬を輩出してきたことが注目され、実に牧場孝行の肌馬でもあります。距離に関しても、父馬のタイプを素直に反映しているのも特徴でしょう。スプリンターから10ハロンのスペシャリストまで多彩。

3代母ファミリー・アット・ウォー Family At War (1988年 黒鹿毛 父イクスプローデント Explodent)も9戦1勝の勝馬。更に4代母サムタイムズ・パーフェクト Sometimes Perfect (1975年 鹿毛 父ボールド・ビッダー Bold Bidder)も勝馬(5戦1勝)で、言葉は不適切ですが屑がありません。
ファミリー・アット・ウォーの別の娘アスコット・ファミリー Ascot Family (2004年 鹿毛 父デザート・スタイル Desert Style)は2歳時に7ハロンのリステッド戦を制した馬で、その初産駒ファミリー・ワン Family One (2009年 鹿毛 牡 父ドバイ・デスティネーション Dubai Destination)が2011年のロベール・パパン賞(GⅠ)の勝馬になってもいます(後に香港に移籍して去勢、ノルディック・ワン Nordic One と改名して走った)。

更に遡って5代母ミス・リボー Miss Ribot (1965年 鹿毛 父サー・リボー Sir Ribot)はカリフォルニア・オークス、ハネムーン・ステークス、ビバリー・ヒルズ・ハンデ、サンタ・アナ・ハンデなどに勝ち、ケンタッキー・オークスでも2着した名牝で、その産駒にもフランスでG戦に入着したゲイン Gain 、ドイツのG戦に勝ったクロッツ Krotz などがいます。

ファミリー・ナンバーは 21-a 。ワグテイル Wagtail を基礎牝馬とする名門です。

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