ルーカス師、6度目のプリークネス
昨日は三冠レースの第二弾、プリークネス・ステークスが行われました。結果は速報をツイートしましたので、ここではゆっくりと他の競馬場の結果も含めてレポートして行きましょう。
結果を素早く伝えるのに Twitter は便利ですね。これからはこの方法で行きましょうか。
先ずはお祭りのメリーランド州ピムリコ競馬場、クラシックを含めて5鞍のG戦が組まれていましたが、それをレース順に紹介して行きましょう。
最初に第8レースのアレール・デュポン・ディスタッフ・ステークス Allaire duPont Distaff S (GⅢ、3歳上牝、8.5ハロン)。fast の馬場に2頭が取り消して僅かに5頭立て。前走アップル・ブロッソム・ハンデ(GⅠ)4着ながら、その前にトップ・フライト・ハンデ(GⅡ)を制しているサマー・アプローズ Summer Applause が8対5の1番人気。他馬より6ポンド重い124ポンドを背負いながら、断然格上と言う人気でしょう。
逃げたデイドリーミング・グレイシー Daydreaming Gracie を2番手でマークしたサマー・アプローズ、3コーナーからムーン・フィリー Moon Philly が出し抜けを食わすようにスパートしましたが、それには惑わされずジックリと追い上げ、3番人気(9対2)シー・アイランド Sea Island に2馬身差を付ける貫録勝ち。更に3馬身差で2番人気(2対1)のブラッシュド・バイ・ア・スター Brushed by a Star が3着に入り順当な結果です。
カナダで2歳戦をスタートしたサマー・アプローズ、その後フレッド・カルホウン厩舎を経て、現在はチャド・ブラウン師が管理。ジョン・ヴェラスケスが騎乗していました。カルホウン時代にはケンタッキー・オークス4着の実績もありますが、その後ブラウン厩舎に転じてこれが4戦目となります。
続いて小雨降る芝コースで行われた第9レースのギャロレット・ハンデキャップ Gallorett H (芝GⅢ、3歳上牝、8.5ハロン)。馬場は firm と悪化せず、2頭が取り消しての8頭立て。愛1000ギニー馬でアメリカでも堅実に走っているサミター Samitar が11対10の1番人気。
しかしレースは、スタートから先頭に立った3番人気(6対1)ピアニスト Pianist の鮮やかな逃げ切り勝ちです。スタートで躓いたハード・ノット・トゥー・ライク Hard Not to Like が早目に失地を回復して2馬身4分の3差で2着に追い上げ、更に1馬身4分の1差でアピーリング・キャット Appealing Cat が3着。本命サミターも後方から追い上げましたが1馬身4分の1差及ばず4着まで。
勝馬を管理するのは、人気のサミターと同じチャド・ブラウン。一つ前のデュポン・ディスタッフに続くG戦ダブルです。こちらはマイク・スミス騎乗(サミターはカステラノが騎乗していました)。ピアニストは2戦目で未勝利を脱し、去年9月にベルモントの一般ステークスを制し、これがステークス2勝目でG戦は初勝利。
この日三つ目のG戦は、第10レースのメリーランド・スプリント・ハンデキャップ Maryland Sprint H (GⅢ、3歳上、6ハロン)。ここも2頭の取り消しがあり、8頭立て。人気は割れ、3連勝中のセージ・ヴァレー Sage Valley とG戦連勝したブラウン厩舎のハードンド・ワイルドキャット Hardened Wildcat が2対1で並び、1番人気を分け合っていました。
人気としては難解なレースでしたが、終わってみれば4番手から抜け出したセージ・ヴァレーが、内を衝いて追い込むハードンド・ワイルドキャットを2馬身4分の1差抑えて優勝。人気を分け合った2頭で決着しています。3着は3馬身半差で3番人気(5対2)のローリーズ・ロケット Laurie’s Rocket と順当そのもの。
ルディー・ロドリゲス厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のセージ・ヴァレーは、これが今期初戦で、去年11月にアケダクトの一般ステークスに勝って以来の競馬。G戦は初勝利となります。ヴェラスケス騎手はデュポン・ディスタッフと併せてG戦ダブル。
プリークネスの前に行われたのが、第11レースのディクシー・ステークス Dixie S (芝GⅡ、3歳上、9ハロン)。前に行われた三つのG戦に続き、ここも2頭が取り消して11頭立て。2対1の1番人気は、何故かアローワンスに勝ったばかりのイメージニング Imagining 。歴戦のG戦勝馬を差し置いての人気は、プリークネスの大本命オーブを管理するマゴーヒー師の管理馬だからでしょうか。素人には解せないオッズです。
レースは8番人気(23対1)スカイリング Skyring の逃げ。後方待機のイメージニングを含め有力馬が牽制しあったのか、スカイリングの逃げ脚は直線でも衰えず、熾烈な2着争いを尻目に半馬身差で逃げ切ってしまいました。2着は頭差で3番人気(5対1)ウィルコックス・イン Wilcox Inn が2番人気(3対1)のオプティマイザー Optimizer に先着。マゴーヒー師のイメージニングはブービー10着と大敗。陣営にとっては何やら不吉な結果になってしまいました。
スカイリングを管理するのは、3着オプティマイザーと同じウェイン・ルーカス調教師。このレースは2頭を出走させ、人気の無い方で勝ったことになります。鞍上は7年間のブランクを克服して復活したゲーリー・スティーヴンス。これがプリークネスの暗示となるとは、陣営でも気付いていなかったと思われます。スカイリングは去年5月に同じプリークネス当日の前座となる一般ステークス(ジェームス・マーフィー・ステークス)に勝って以来11連敗中だった馬。余程ピムリコ競馬場と相性が良いようで、これがG戦初勝利でもあります。
そして愈々この日のメイン、三冠第2弾の第138回プリークネス・ステークス Preakness S (GⅠ、3歳、9.5ハロン)。ケンタッキー・ダービー馬オーブ Orb が断然の1番人気(3対5)に推され、ダービー馬に挑んだのは8頭。9頭のうちダービー出走組はオーブの他に5頭で、5着マイリュート Mylute 、6着オックスボウ Oxbow 、8着ウイル・テイク・チャージ Will Tahe Charge 、15着イッツマイラッキーデイ Itsmyluckyday 、17着ゴールデンセンツ Goldencents の面々。新たに挑戦するのは、イリノイ・ダービーのデパーティング Departing 、サンランド・ダービーのガヴァナー・チャーリー Governor Charlie それにダービー・トライアル4着のたいたるタイトルタウン・ファイヴ Titletown Five というメンバー。
スタートで飛び出したのは、3頭を出走させているウェイン・ルーカス厩舎のオックスボウ。厩舎ではウイル・テイク・チャージに次ぐ二番手的存在です。二冠が掛かったオーブはハナからは積極的に行かず、5番手辺りに待機策。しかし今回はコースも違い、馬場状態も異なる中でオーブは行き脚に冴えが無く、オックスボウの逃げは快調。結局は後方集団を寄せ付ける間もなく、4番手を進んだイッツマイラッキーに1馬身4分の3馬身差を付けての逆転劇でした。更に半馬身差でロージー・ナプラヴニクが御すマイリュートが3着に入り、オーブは何とか4着まで押し上げたものの、3着馬からは6馬身4分の3もの大差を付けられる完敗に終わりました。マゴーヒー師はガックリですが、恐らく1番枠スタートが馬には災いしたのかも知れません。スムースな走りではありませんでした。
これが6度目のプリークネス制覇となるルーカス師、前座のディクシーに続くG戦ダブル、騎乗していたゲーリー・スティーヴンとのコンビでもダブル達成です。オッズ15対1は、最終的に何番人気だったのかは判りませんが、恐らく後ろから数えた方が早そう。厩舎の期待でも二番手だったはず。オックスボウは、ルコント・ステークス(GⅢ)に続くG戦2勝目となりました。
因みにルーカス師の軌跡は、1980年コデックス Codex 、1985年タンクス・プロスペクト Tank’s Prospect 、1994年タバスコ・キャット Tabasco Cat 、1995年ティンバー・カントリー Timber Country 、1999年カリズマテック Charismatic となり、錚々たるメンバー。またスティーヴンスにとっても1997年のシルヴァー・チャーム Silver Charm 、2001年のポイント・ギヴン Point Given に続く3度目の勝利。オーナーであるカルメット・ファームは何と7度目の制覇で、史上最多。名門復活を印象付けました。最多勝調教師は、実に19世紀のウィンダム・ウォルデン調教師の記録ですから、恐らく実際に見た関係者もいないものと思われます。
5月18日は、他に3つの競馬場で夫々一鞍づつのG戦が行われていますから、それも簡単に取り上げましょう。先ずはベルモント競馬場のヴァグランシー・ハンデキャップ Vagrancy H (GⅡ、3歳上牝、6.5ハロン)。去年は6月初めに行われていますが、今年は1か月ほど早まっての施行です。fast の馬場に6頭立て。1番人気(8対5)はステークス初挑戦ながら、目下3連勝中のグロリアス・ヴュー Glorious View 。
スタートで4番枠のスペクタキュラー・スカイ Spectacular Sky がゲートを押して飛び出すアクシデント。ゲートインがやり直されます。4頭が先頭を争う激しい流れからハナを奪ったグロリアス・ヴュー、直線では4番手追走のファンタジー・オブ・フライト Fantasy of Flight に並び掛けられましたが、最後はこれを半馬身差振り切っての優勝。更に2馬身差でウィズグレートプレジャー Withgreatpleasure が3着。
ウイリアム・モット厩舎、ジュニア・アルヴァラード騎乗のグロリアス・ヴューは、9戦目で漸く未勝利を脱すると、その後は負け知らずで4連勝。もちろんこれがステークス、G戦共に初勝利となります。
続いてモンマス・パーク競馬場からは、レッド・バンク・ステークス Red Bank S (芝GⅢ、3歳上、8ハロン)。これも去年は去年は7月に行われた一戦で、今年は早目の開催となります。firm の芝コース、2頭取り消し(ルーラー・オン・アイス Ruler On Ice はダート変更時のみの予備登録)があり11頭立て。GⅢ勝馬のザー・アプルーヴァル Zar Approval が4対5の断然1番人気。
前半は8番手の内ラチ沿いと後方に控えていたザー・アプルーヴァル、直線では内をこじ開けるように抜け、2番手追走から先に先頭に立っていたチューン・ミー・イン Tune Me In を4分の3馬身捉えて期待に応えました。脚毛馬のワン・ツー・フィニッシュです。3着はハナ差でバッド・デット Bad Debt 。
クリストフ・クレメント厩舎、ジョー・ブラーヴォ騎乗のザー・アプルーヴァルは、3月末にガルフストリームで同じ1マイルのアップルトン・ステークス(芝GⅢ)を制した馬で、2がつのステークス・デビュー戦カナディアン・ターフ(芝GⅢ)でも4着に入っていました。
最後に今年で見納めとなるハリウッド・パーク競馬場のマージョリー・L.イヴレット・ハンデキャップ Marjorie L. Everett H (GⅡ、3歳上牝、8.5ハロン)。fast の馬場、1頭取り消しの6頭立て。GⅡ勝馬のレディー・オブ・フィフティー Lady of Fifty が3対5の被った1番人気。
レースはメイカー・オア・ブレイカ― Maker or Braker とシスター・ケイト Sister Kate が3番手以下を大きく離して逃げる展開。後方待機のレディー・オブ・フィフティーが直線で一気に追い込みましたが、離れた4番手を追走していたブービー人気(9対1)のオープン・ウォーター Open Water が更に外から伸び、本命馬に1馬身差を付けるサプライズです。3着は4馬身半差でアイ・ダッズル I Dazzle が食い込み、逃げた2頭は流石に最後はバテてどん尻争い。
エリック・ギロー厩舎、ジョセフ・タラモ騎乗のオープン・ウォーターは、去年ラス・ヴァージェネス・ステークス(GⅠ)とデル・マー・オークス(GⅠ)で共に3着していた馬。前走ラ・カニャーダ・ステークス(GⅡ)も奮わず6着と8連敗中でしたから、人気が無かったのも当然でしょう。これがステークス初勝利。ギロー調教師も確か当日記には初登場、G戦は初めてじゃないでしょうか。
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