2013クラシック馬のプロフィール(5)

ヨーロッパ3か国のギニーを終えた現在、二冠を達成した馬は出ていません。そこで今回は愛2000ギニーを制したマジシャン Magician を取り上げましょう。
マジシャンは、父ガリレオ Galileo 、母アブソリュートリーファビュラス Absolutelyfabulous 、母の父モーツァルト Mozart という血統。父ガリレオは、またガリレオか、というほどクラシックには強い種馬、改めて紹介する必要はありません。

で、母アブソリュートリーファビュラス(2003年、鹿毛)。父モーツァルトはスプリンターで、彼女もその血を濃く受け継いだようで短距離馬でした。3歳から4歳までに15戦して3勝。勝鞍は何れも6ハロンでのもの。
アイルランドでデヴィッド・ワッチマン師が調教しましたが、オーナーはクールモアの一角ジョン・マニエー氏の夫人。当然ながらクールモアに繋養される繁殖牝馬で、その産駒がオブライエン厩舎の元に属するのは極く自然な流れでしょう。

3歳時の2勝は共にナース競馬場のハンデ戦、4歳時にはコーク競馬場でリステッド戦に勝っています。パターン・レースには6回挑戦(全てGⅢ)しましたが、4歳時にバリオーガン・ステークスで3着に入ったのが最高。最初からクラシックには無縁の存在でした。
因みにタイムフォームのレーティングは、3歳時が98、4歳になって105まで上がりました。

2008年から繁殖牝馬になったアブソリュートリーファビュラスの初仔は、ワンダフル Wonderful (2009年、鹿毛、父ガリレオ)という名の牝馬。マジシャンの全姉で、やはりオブライエン厩舎に所属して9戦1勝。勝鞍はキラネー競馬場の1マイル戦という全く地味な内容で、恐らく繁殖に上がっているものと思われます。現役後半はジョセフ・オブライエンが騎乗していました。
ということで、マジシャンはアブソリュートリーファビュラスの2番仔に当たります。

2代母レディー・ウィンダミア Lady Windermere (1997年、栗毛、父レーク・コニストン Lake Coniston)は未出走馬。その産駒にも目立った存在は見当たりませんが、調べが付いた範囲で成績を列記しておきましょう。

2000年 ミスター・ダンビー Mr Dumby 牡、父スライ・ピーカン Sri Pekan 3戦未勝利 リチャード・ハノン師が調教
2001年 エセンディーヌ Essendine 牝、父オーペン Orpen 6戦未勝利 1月1日生まれで、アイルランドのネイル・マクラスキー厩舎所属 5歳で死去
2003年 アブソリュートリーファビュラス
2006年 ラッシャン・ジャー Russian Jar 鹿毛 せん 父ザール Xaar 10戦2勝 マイケル・ジャーヴィス厩舎 レスター競馬場の1マイル戦に勝鞍
2007年 マーク・トゥエイン Mark Twain 鹿毛 牡 父ロック・オブ・ジブラルタール Rock of Gibraltar 31戦2勝 平場時代はオブライエン厩舎に所属しコークの1マイル戦優勝。障害に転向し1勝 現役
2008年 ガブ・モー・レイスシール Gabh Mo Leithsceal 鹿毛 牡 父オッシー・ルール Aussie Rule 10戦未勝利 アイルランドのゴーマン厩舎 ジム・ボルジャー夫人の所有馬で現役
2010年 ブラニガンス・ロウ Brannigans Law 鹿毛 牡 父オアシス・ドリーム Oasis Dream 2戦未勝利 デヴィッド・ワッチマン厩舎 現役?

以上、競走成績の目立つ馬は無く、判っている範囲での牝馬で繁殖に上がっているのは、現在の所アブソリュートリーファビュラスだけという状態です。

しかし一見地味に見える牝系ですが、3代母ブリジッド Brigid (1991年 栗毛 父アイリッシュ・リヴァー Irish River)に至ると様相は一変します。
ブリジッドは、ギリシャの船舶王スタヴロス・ニアルコスが起こしたニアルコス・ファミリーの所有馬で、フランスでニコラス・クレメント師が管理し、主に現在はアメリカで調教師として大成しているスティーヴン・アスムッセンが騎乗していました。
3歳時のみ5戦して1勝。勝鞍はローカルのコンピエーニュ競馬場での1600メートル戦(ガブリエル・ブリュン賞、12頭立て)で、最終戦は今は無いエヴリ競馬場でのリステッド戦(サン=シール賞、1400メートル)で6着でした。

競走成績こそ平凡なブリジッドでしたが、繁殖牝馬とし2頭のGⅠ勝馬を出して成功します。
その1頭セコイア Sequoyah (1998年 鹿毛 父サドラーズ・ウェルズ Sadler’s Wells)はアイルランドのモイグレア・スタッド・ステークスに勝ち、母としても2000ギニー、愛2000ギニー、セント・ジェームス・パレス・ステークス、サセックス・ステークスを制した名マイラーのヘンリーザナヴィゲイター Henrythenavigator (2005年 鹿毛 牡 父キングマンボ Kingmambo)を出しました。
また別の娘リッスン Listen (1998年 鹿毛 父サドラーズウェルズ)はフィリーズ・マイルの勝馬。

4代母ラヴ・ラヴィン Luv Luvin’ (1977年 栗毛 父レイズ・ア・ネイティヴ Raise A Native)も15戦2勝ながら、繁殖成績は競走成績を大きく上回るもの。ブリジッドの他に2頭の娘からGⅠ活躍馬が出ています。
即ち、オール・ヴィジョン Or Vision (1983年 栗毛 父アイリッシュ・リヴァー)の産駒にはフォレ賞、モーリス・ド・ギースト賞勝馬で日本でも走ったドルフィン・ストリート Dolphin Street (1990年 鹿毛 牡 父ブルーバード Bluebird)、
オペラ賞勝馬のインサイト Insight (1995年 鹿毛 牝 父サドラーズウェルズ)、
マジシャンと同じアイルランド2000ギニーを制してクラシック馬となったサフラン・ウォルデン Saffron Walden (1996年 鹿毛 牡 父サドラーズウェルズ)と、以上3頭のGⅠホースが出ています。

更に遡れば、5代母ライジング・ベルズ Rising Bells はアメリカのGⅠ馬サイレント・スクリーン Silent Screen の妹であり、更にファミリーは反映して行きます。

以上概観したように、この牝系は要所要所でアイリッシュ・リヴァー、サドラーズ・ウェルズといった大種牡馬との配合によって活躍馬を出して来ました。
今後は、もちろんサドラーズ・ウェルズの後継馬たるガリレオがその地位を受け継いでいくでしょう。マジシャンの全姉に当たるワンダフルも、その名の通り極めて価値の高い繁殖牝馬になることは間違いなさそうです。

ファミリー・ナンバーは、9-b。スイープステークス・メア Sweepstakes Mare を基礎牝馬とする、現在でも最も反映しているファミリーの一つです。

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