フランスもガリレオ
日曜日はフランス・ダービー・デイ。ダービーを含めG戦が5鞍組まれ、凱旋門賞の週末を除けばフランスの競馬カレンダーで最も忙しい一日です。
ここでは先ずダービーを、次いで残りのG戦をレース順に紹介して行きましょう。
フランス・ダービーは俗称で(東京優駿が俗に日本ダービーと呼ばれる様なもの)、正式にはジョッケ・クラブ賞 Prix Jockey Club (GⅠ、3歳牡牝、2100メートル)。good to soft の柔らかな馬場、19頭が出走してきました。この所多頭数が常態化しているフランス・クラシックです。
仏2000ギニー馬スタイル・ヴァンドーム Style Vendome は、陣営がスタミナを疑問視しているため回避。23対10の1番人気に支持されたのは、仏2000ギニーで目が覚める様な末脚を発揮しながら僅かの差で敗れたインテロ Intello 。道中の不利、外枠(17番枠)の不利が無ければ勝っていただろうという評価も出ていました。
続いては本命馬と同じアンドレ・ファーブル厩舎で、これがG戦初挑戦ながら3戦無敗のスカイ・ハンター Sky Hunter が63対10の2番人気。立場は仏2000ギニーにおけるインテロと全く同じです。3番人気(68対10)は仏2000ギニー6着のモランディ Morandi 、4番人気(9対1)がアイルランドからボルジャー師が送り込んだロッホ・ガーマン Loch Garman で、単勝10倍以下はここまで。果たしてフルゲートに近い混戦で有力馬が能力を発揮できるでしょうか。
レースはロッホ・ガーマンのペースメーカーを務めるビヨンド・サンクフル Beyond Thankful が逃げ、今回は10番枠スタートのインテロは巧みに4番手につける理想的な展開。こうなれば末脚には自信のあるインテロ、直線でも鮮やかに抜け、2着以下に2馬身差を付けて期待に応えました。2番人気のスカイ・ハンターも先行策から勝馬を追い、2番手を確保したかに見えましたが、最後に中断から追い込む3番人気モランディが短首差これを捉えて2着。ファーブル厩舎は僅かの差でワン・ツー・フィニッシュを逃しました。
以下ギッシュ3着のムシャウィッシュ Mshawish が4着、アガ・カーンの新星(1戦1勝)シカルプール Shikarpour 5着と伏兵クラスの健闘が続き、ロッホ・ガーマンは10着、仏2000ギニー2着のダスターホン Dastarhon は最下位と奮いませんでした。
英国からの挑戦で最先着したのは、女流調教師アン・ダフィールドが送り込んだウィリー・ザ・ホイッパー Willie the Whipper の6着。女性と言えば、イギリスのヘイリー・ターナーがジョー・ヒューズ厩舎のグレイシアル・エイジ Glacial Age でフランス・ダービー史上で女性騎手として初挑戦しましたが、レース中の不利もあり13着に終わりました。
前日のエプサム・ダービーで大本命ドーン・アプローチ Dawn Approach 凡走で失望したジム・ボルジャー調教師、ここパリでも期待のロッホ・ガーマンがケヴィン・マニング共々大敗。今年の英仏ダービーは期待が大きかっただけに、落胆もさぞやと思われます。
1・3着のアンドレ・ファーブル師は、仏ダービーは1997年のパントル・セレブレ Peintre Celebre 、2010年のロぺ・デ・ヴェーガ Lope de Vega に続く3勝目。意外に少ない気もします。鞍上オリヴィエ・ペリエもパントル・セレブレで制して以来16年振りとなる2勝目。こちらも少ないと感じるほど、仏ダービーは競馬関係者にとって難関と言えるでしょう。
インテロは、上記の様にG戦初挑戦で仏2000ギニーに臨みましたが、この時はマクシム・グィヨンに乗り替わっての3着。その前、ニューマーケットのリステッド戦を含めてデビューからずっとペリエが騎乗してきましたが、仏2000ギニーではスピードに勝ると考えたアノディン Anodin を選んだための乗り替わりでした。
ドイツ産ながら、英ダービーのルーラー・オブ・ザ・ワールド Ruler Of The World と同じガリレオ Galileo 産駒。血統はいずれプロフィールとして紹介しますが、クラシックに強いガリレオ、今年はマジシャン Magician (愛2000ギニー)を含めて早くも3頭目の戴冠です。
この勝利を受け、各ブックメーカーも凱旋門賞のオッズを提示。6対1から8対1がほとんどで、現時点ではオルフェーヴル、ルーラー・オブ・ザ・ワールドに続く3番人気のようです。
以上でダービー・レポートを終え、残るG戦。ダービー前に行われた2鞍は、
ロヨーモン賞 Prix Royaumont (GⅢ、3歳牝、2400メートル)は1頭取り消して8頭立て。前走ロンシャンのリステッド戦を含めて2連勝のラヴァ・フラウ Lava Flow が13対10の1番人気、ファーブル厩舎・ゴドルフィン人気も手伝っていたでしょう。
2番人気(19対5)プラネット・ブルー Planete Bleue が逃げ、最後方から進んだ6番人気(18対1)エリューセラ Eleuthera が抜け出しての番狂わせ。1馬身半差でオリオン・ラヴ Orion Love が2着、更に2馬身でダンス・イン・ザ・パーク Dance In The Park 3着。ラヴァ・フラウは7着に終わり、ファーブル厩舎としては幸先の悪いスタートになったのですが…。
フィリップ・デメルカステル厩舎、エディー・アルドゥイン騎乗のエリューセラは、これが今期8戦目というタフな馬。ペネロープ賞4着、クレオパトラ賞3着と順調に順位を上げ、3度目の挑戦でG戦初勝利となりました。
続いてサンドリンガム賞 Prix Sandringham (GⅡ、3歳牝、1600メートル)。7頭立て。前走ニューマーケットの1000ギニーに挑戦して7着と敗れたワッタ・ネイム What A Name 、レース後にフケ(発情)だったことが判明し、今回はと13対10の1番人気。
ここもファーブル厩舎・ゴドルフィンのホワイト・ウェイヴス White Waves が逃げ、ワッタ・ネイムが一旦は先頭に立って楽勝かと思われましたが、脚が止まって6着敗退。優勝は先行抜け出しの2番人気(19対5)ピース・バーグ Peace Burg でした。首差でトパーズ・ブランシュ Topaze Blanche が2着、3着は1馬身半差で3番人気(5対1)のケンホープ Kenhope 。
ジャン=クロード・ルジェ厩舎、クリストフ・スミオン騎乗のピース・バーグは、2歳時にオマール賞(GⅢ)に勝っており、G戦は2勝目。1番人気に押されたマルセル・ブーサック賞(GⅠ)で4着に敗退し、シーズン初戦のアンプルーダンス賞(GⅢ)でもワッタ・ネイムの4着と後塵を拝していました。ギニーを回避しての復活。
ここからはダービーの後で行われたG戦2鞍、
シャンティー大賞典 Grand Prix de Chantilly (GⅡ、4歳上、2400メートル)は9頭立て。去年の仏ダービー馬サオノア Saonois が出走してきましたが、33対10で2番人気。2対1の1番人気に支持されたのは、前走ロンシャン競馬場のリステッド戦を含めて4連勝中のナウ・ウィー・キャン Now We Can 。何やら一時流行った文言を馬名に持つ馬ですが、所謂上がり馬の4歳、G戦初挑戦で鼎の軽重が問われます。
レミュス・ド・ラ・トゥール Remus de la Tour の逃げを外から2番手で追走したナウ・ウィー・キャン、ゴール前では5頭が横一線で雪崩れ込む混戦を頭差抜けてG戦初勝利です。これで5連勝。2着は凱旋門賞4着というタイトルが付いて回るハヤ・ランダ Haya Landa で久々の好走。以下短首差で逃げたレミュス・ド・ラ・トゥールが3着、ハナ差で社台のピリカ Pirika 4着、更に首差でダンス・ムーヴズ Dance Moves が5着。サオノアは勝ち負けには加われずブービー8着と惨敗し、ダービーがフロックと言われても仕方のない成績です。
ニコラス・クレメント厩舎、ティエリー・テュイレ騎乗のナウ・ウィー・キャンは、既に紹介したように5連勝となる新星。GⅡに勝ったことで、次はGⅠ狙いでしょう。スケジュールから見てサン=クルー大賞典辺りが有力か。
最後はグロ=シェーヌ賞 Prix Gros-Chene (GⅡ、3歳上、1000メートル)。9頭立ての1番人気(5対2)は、前走サン・ジョルジュ賞(GⅢ)を制したキャットコール Catcall 。
レースは英国(ティム・イースタービー厩舎)から挑戦したハミッシュ・マクゴナガル Hamish McGonagall が逃げましたが、最後の直線で大きく寄れてミルザ Mirza の進路を妨害。6着で入線した同馬は、影響を受けて4番手入線のミルザのあと8着に降着。6着と7着は繰上りというアクシデントがありました。
波乱に関係なく先行から抜け出したのは、2番人気(41対10)のスピリット・クォーツ Spirit Quartz 。後方から追い込んだ本命キャットコールに半馬身差を付けていました。3着は4分の3馬身差でガマース Gammarth 。
勝ったスピリット・クォーツは、イギリスからロバート・カウエル師が送り込んだ5歳馬で、ジェイミー・スペンサー騎乗。パレス・ハウス・ステークス、テンプル・ステークスと5着が続いていましたが、今回はチークピースを初めて装着したのが奏功した由。勢いを駆ってロイヤル・アスコットのキングズ・スタンド・ステークス挑戦を宣言し、20対1のオッズが出されました。
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