セシル調教師の逝去と

昨日はアイルランドのレパーズタウン競馬場でG戦が2鞍行われましたが、その前に・・・。

日本では大きく報道されていないようですが、ここ数日ヨーロッパのスポーツ関係紙は英国の至宝サー・ヘンリー・セシル調教師逝去のニュースが連日のように報じられています。
名馬フランケル Frankel の調教師として我が国でも知られていると思いますが、長年に亘る胃癌との闘病生活を送り、6月11日(火)の朝、70年の生涯を閉じました。

師はパーシャ Parthia やメルド Meld でクラシックを制した継父サー・セシル・ボイド=ロシュフォールの元で修業を積み、継父の引退を受けて1969年に開業。いきなりウルヴァー・ホロウ Wolver Hollow でエクリプス・ステークスを制し衝撃的なデビューを果たします。
クレペロ Crepello やロイヤル・パレス Royal Palace などの名馬を育てたサー・ノエル・マーレスの娘ジュリアと結婚、マーレス師の本拠となっていたウォーレン・プレースをも相続して英国一の調教師として競馬界に君臨してきました。
90年代の半ばに大馬主であるシェイク・モハメドと対立して一時厩舎は退潮期を迎えましたが、その晩年にはフランケルを出して名誉回復。惜しまれつつの死去となりました。

BHAは急遽セシル未亡人であるジェーン(マーレスの娘とは離婚、後妻に当たります)に短期免許を交付し、昨日(6月13日)が夫人の名前(レディー・セシル)で競走馬を送り出す最初の日でもありました。その中には、レパーズタウンに遠征してきた1頭も含まれます。

ということでレパーズタウンのイヴニング開催、最初はバリーコーラス・ステークス Ballycorus S (GⅢ、3歳上、7ハロン)。馬場は good to yielding 、6頭立て。去年の愛2000ギニー3着馬リプライ Reply が、前走ナースのリステッド戦に勝ったこともあって11対10の1番人気。
レースは2番人気(7対2)リリーズ・エンジェル Lilly’s Angel が巧みに逃げ、ゴール前は1馬身以内に4頭が犇めく大接戦となりました。優勝は3歳馬で4番人気(13対2)のレイティール・モール Leitir Mor 。2番手を追走し、一旦3番手に下がったものの巻き返しての勝利です。首差でリリーズ・エンジェルが逃げ粘り、短頭差でイエロー・ローズバド Yellow Rosebud が3着。リプライは4番手から一つ伸びきれず5着敗退です。

ジム・ボルジャー厩舎、ケヴィン・マニング騎乗のレイティール・モールは、今年の2000ギニーでドーン・アプローチ Dawn Approach のペースメーカーを務めて9着だった馬。前走グリーンランズ・ステークス(GⅢ)では自身のクラスに戻って8着でしたが、ここでは適距離の7ハロンで実力を発揮したと言えるでしょう。
次走は、来週に迫ったロイヤル・アスコット(セント・ジェームス・パレス・ステークス)で再びドーン・アプローチのペースメーカーを務める予定。去年のデューハースト・ステークス(GⅠ)ではドーン・アプローチとのワン・ツー・フィニッシュを決めているだけに、単なるペースメーカーとして無視するわけにはいかないでしょう。

続いてはバリオーガン・ステークス Ballyogan S (GⅢ、3歳上牝、6ハロン)。12が出走してきましたが、何と言っても注目はレディー・セシル調教師の名前で英国から遠征してきたティックルド・ピンク Tickled Pink 。シーズン初戦にニューマーケットでアバーナント・ステークス(GⅢ)を制した4歳馬で、セシル師への敬意もあってか6対4の1番人気。鞍上も英国から主戦騎手トム・クィーリーが駆け付けての参戦です。レース前、ジョッキーが勢ぞろいした所でセシル師への1分間の黙祷が捧げられ、レースがスタート。

果敢に先頭に立ったティックルド・ピンクでしたが、却って標的にされた感もあり、内と外から次々に強襲、最後は敢えて馬場の悪い内ラチ沿いを通った5番人気(10対1)フィエソラーナ Fiesolana が抜け出してのG戦初勝利。1馬身4分の1差で2番手追走のボストン・ロッカー Boston Rocker が2着、更に4分の3馬身差でハンキー・パンキー Hanky Panky が3着。ティックルド・ピンクは運も無く5着敗退に終わりました。これが競馬でしょう。
勝馬を管理するウィリー・マクリーリー調教師は、これが初めてのG戦優勝。騎乗したコーム・オダナヒューは、オブライエン厩舎の馬でGⅠにも勝っている腕達者です。この日は馬の特質を活かしたコース取りが奏功したと言えましょうか。フィエソラーナは3歳までフランスのジャン=クロード・ルジェ厩舎に所属していた馬。4歳の今期からアイルランドに移籍し、前走はカラーのリステッド戦に勝っていました。

アイルランドでは結果が出なかったセシル厩舎ですが、この日は5か所の競馬場に管理馬を出走、ノッティンガム競馬場とヤーマス競馬場で夫々勝ち、厩舎にとってダブルを達成しています。
ビューティー・パーラー Beauty Parlour を含め、名門セシル厩舎の今後は未定。師の葬儀の後には一般にも公開されるセレモニーが予定されているとのこと。来週のアスコットでも、セシル師が過去に8勝しているクィーンズ・ヴェーズが、セシル師の功績(ロイヤル・アスコット75勝)を讃える記念レースに指定されることが決まっています。

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