復活? アーリントン・クラシック

今週のアメリカ、月曜の5月27日がメモリアル・デイの休日に当たり、大きなレースは月曜が主体です。
ということで土曜日は4つの競馬場でG戦が組まれ、GⅠはありません。いつもより静かな土曜日を順に取り上げていきましょう。

先ずはベルモント・パーク競馬場のシープスヘッド・ベイ・ステークス Sheepshead Bay S (芝GⅡ、3歳上牝、11ハロン)。雨が続いて通常の芝コースは使えず、内にも設置されている芝コースが使われました。他よりは広いベルモント競馬場ならでは。それでも soft に悪化した馬場、8頭立ての1番人気(9対5)は前走ボーゲイ・ステークス(GⅢ)で初めてG勝馬となったヘッソナイト Hessonite 。
レースは、雨ばかりか風も強い中ミナクシ Minakshi の逃げで始まります。中団から徐々に進出したヘッソナイトは結局バテて6着敗退。優勝は前半後方2番手のインコースを経済的に回った5番人気(10対1)のタンネリー Tannery 。直線でもそのまま内ラチ沿いに抜け、スタートで出遅れて最後方を進んだアニアズ Aniaz の追い込みを1馬身抑えての番狂わせ。1馬身4分の1差3着に逃げたミナクシが粘り、人気上位馬総崩れの波乱となりました。風邪が強かったことも波乱の原因で、巧く風を避けた2頭のワン・ツー・フィニッシュです。
アラン・ゴールドベルク厩舎、ルイス・サエズ騎乗のタンネリーは、アイルランド産馬でこれがアメリカでの初勝利。去年アイルランドでエステート・ステークス(GⅢ)を制して以来の勝星で、去年の秋にアメリカに転じてから5戦目での勝利となりました。前走ベルモントの一般ステークスでは、今回は4着に終わったジュリーズ・ラヴ Julie’s Love の4着。雪辱を果たしたことにもなります。

続いては、珍しく第3レースと早目のスタートとなったハリウッド・パーク競馬場からアメリカン・ハンデキャップ American H (芝GⅡ、3歳上、8ハロン)。こちらはニューヨークとは一転して好天 firm の芝コース。改めてアメリカは広いと思います。6頭が出走、GⅡ2勝馬で去年のBCマイル3着のオビアスリー Obviously が2対5の断然1番人気。加えて去年の仏2000ギニー馬ルカイヤン Lucayan がアメリカ・デビューを迎え、ディープの初年度産駒バロッチ Barocci も出走とあって中々興味ある一戦となりました。ルカイアンは7対1で3番人気、バロッチは8対1の4番人気で続きます。
スタートから先手を取った大本命オビアスリー、そのまま後続を寄せ付けず2着以下に2馬身半差を付ける貫録勝ちです。バロッチが2番手で直線に入り本命馬を追いましたが、アメリカ初戦のルカイヤンが直線でバロッチを捉えての2着、格の違いでしょうか。バロッチは首差交わされての3着。
マイク・ミッチェル厩舎、ジョセフ・タラモ騎乗のオビアスリーは、デル・マー・マイル、アロヨ・セコ・マイルに続きGⅡ3勝目。前走は短距離戦(サン・シメオン・ステークス、6.5ハロン、芝GⅢ)での試走でしたから、本来の1マイルで本領発揮。今年もBCマイルに再チャレンジするのは間違いないでしょう。

ケンタッキー・ダービーの舞台だったチャーチル・ダウンズ競馬場からは、これも芝コースのルイヴィル・ハンデキャップ Louisville H (芝GⅢ、3歳上、12ハロン)。馬場は firm 、9頭立て。僅かの差で1番人気(2対1)に支持されたのは、去年のベルモント・ステークス3着馬のアティガン Atigan 、芝コース初挑戦で結果にも注目が集まります。
芝の長距離戦とあってペースはスロー、2番手スタートからアル・カスール Al Qasr が流れを作ります。アティガンは後方3番手の位置で様子を窺いますが、より積極的に動いたのは同じ2対1で2番人気のダーク・コーヴ Dark Cove 。スタートから4~5番手の外に付け、3~4コーナーの中間でスパートすると直線は先頭で入り、アティガンの追い込みを半馬身抑えての優勝。これも後方のナジャール Najjaar が一旦は2番手に上がりましたが、最後でアティガンにハナ差交わされての3着。4着以下は6馬身半差離される3頭勝負でした。
マイケル・メーカー厩舎、ロージー・ナプラヴニク騎乗のダーク・コーヴは、前走エルクホーン・ステークス(芝GⅡ)に続くG戦2連勝。3年前に4戦目で未勝利を脱した時も芝コースでしたが、その後はG戦で中々勝星に恵まれなかった1頭。芝の長距離スペシャリストとしての存在感が増してきたようです。

最後は、その芝コースが有名なアーリントン競馬場から3鞍。先ずはアーリントン・メイトロン・ステークス Arlington Matron S (GⅢ、3歳上牝、9ハロン)。fast のポリトラック・コース、1頭取り消しての8頭立て。混戦のメンバーで5対2の1番人気に支持されたのは、ステークスでの入着経験があるだけのオーサス Ausus 。
2番人気(4対1)ロッタ・ラヴィン Lotta Lovin が逃げ、2番手をマークした伏兵(8対1)インポージング・グレース Imposing Grace が外から並び掛け、更に後方からシスターフード Sisterhood と本命オーサスが追い込む4頭の争い。結局はインポージング・グレースが半馬身シスターフードを抑えて優勝し、首・首でロッタ・ラヴィン、オーサスが3・4着。小波乱でしょうか。
今アーリントン開催でリーディングを走るウェイン・カタラーノ厩舎、今回が同馬に初めてとなるチャンニング・ヒルが騎乗したインポージング・グレースは、前走チャーチル・ダウンズのラ・トロワイエンヌ・ステークス(GⅡ)6着を含め、ここまでの6戦が全てダート・コースでした。アーリントンのポリトラックは、これで4戦2勝2着1回となり、コースの利も影響したのでしょう。いずれにしてもステークスは初勝利となります。

アーリントンの二つ目は、今年第19回を迎えるハンシン・カップ Hanshin Cup (GⅢ、3歳上、8ハロン)。度々紹介しているように、阪神競馬場との姉妹競馬場提携を記念する一戦。1頭取り消しの9頭立て。ここも確たる中心馬は無く、5対2の1番人気に支持されたセルーニ Seruni は一般ステークスの勝馬。マイク・スミス騎乗の人気でしょうか。
逃げ馬が多い中、ネイツ・マインシャフト Nates Mineshaft とハンマーズ・テラ― Hammers Terror がハナを争って後続を引き離します。大外枠発走ながら早目に3番手に付けた伏兵(8対1)ホギー Hogy が3~4コーナー中間でスパートすると、後方から追い込む2番人気(3対1)ミスター・マルティ・グラ Mister Marti Gras に1馬身半差を付けて優勝。ここも小波乱となりました。5馬身4分の3の大差がついてハンマーズ・テラ―が3着逃げ残り。
スコット・ベッカー厩舎、クリストファー・エミー騎乗のホギーは、クレーミング戦でジョー・バンド厩舎から移籍してきた4歳せん馬。前師の元で一般ステークスに2勝していましたが、G戦は今回が初勝利となります。前走はキーンランドの短距離G戦(シェイカー・タウン・ステークス、芝GⅢ、5.5ハロン)6着ですから、人気が無かったのも当然でしょう。

そして最後はアーリントン・クラシック・ステークス Arlington Classic S (芝GⅢ、3歳、8.5ハロン)。今年リステッド戦から格上げされた一戦。以前からシカゴ三冠、あるいは中部アメリカ三冠レースの第1弾として人気があった芝戦で、アメリカン・ダービー、セクレタリアート・ステークスと続く伝統のクラシック路線。1983年から1987年まではGⅠにランクされるほど重要なレースでしたが、その後ステイタスを落としていました。今年のG戦への復帰で、過去の栄光を取り戻す第一歩になるでしょうか。芝コースは good 、12頭立てとメンバーは揃いました。9対5の1番人気は、前走チャーチル・ダウンズでアメリカン・ターフ・ステークス(芝GⅡ)2着のアドミラル・キッテン Admiral Kitten 。
しかしレースはここでも波乱となりました。伏兵(40対1)ゲフェスト Gefest 、同(57対1)ベルズ・ビッグ・バーミー Bells Big Bermie などが激しく先行を争い、ゴールでは後方グループが一気に追い詰める激戦。1馬身だけ抜けた7番人気(13対1)のジェネラル・エレクション General Election が先頭でゴールインしましたが、写真判定では4番手で入線したゲフェスト陣営の調教師(ホーマイスター)と騎手(ドロチェンコ)から1着馬と3番手で入線したドーセット Dorsett に対して異議申し立て。内のジェネラル・エレクションが外に寄れ、外のドーセットが内に刺さったためゲフェストの進路が狭くなったことに審議が行われ、次々と関係騎手が裁決に呼ばれます。
最終的に、1着入線のジェネラル・エレクショの勝利で確定、1馬身差2着に本命アドミラル・キッテンが食い込みましたが、頭・首差の3着と4着は着順が入れ替わり、ゲフェスト3着、ドーセット4着で確定しています。
初めての芝コースと、長い審議を乗り越えたジェネラル・エレクションは、ケリン・ゴーダ―厩舎、ジョセフ・ロッコ騎乗。これがG戦初勝利でもあります。前走キーンランドのポリトラック・コースで行われたレキシントン・ステークス(GⅢ)では2着。今回は巧く内を衝いて抜け出したものの、最後は外に寄れてアクシデントの原因の一つになってしまいました。

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