7月13日の熱戦

連日の猛暑と寝不足、歳に似合わぬ忙しさから当欄は些かバテ気味。土曜日のアメリカ競馬は5場から11レースのG戦と盛りだくさんで、映像を見ているだけで頭がボーッとしてきました。
ということもあり、結果のレポートも頭脳の限界状態。雑な所、間違っているところもあるでしょうが、何とか結果だけは正確に記録しておこうと思います。

最初のベルモント・パーク競馬場は開催フィナーレを迎え、サラトガの夏競馬を前に最後のG戦、マンノ・ウォー・ステークス Man o’War S (芝GⅠ、3歳上、11ハロン)が行われました。馬場は good 、8頭が出走し悲願のGⅠ初制覇を目指すボイステラス Boisterous が3対2の1番人気。
レースは芝の長距離とあって淡々と進み、フォーク・シンガー Folk Singer が単騎の逃げに持ち込みましたが、5番手を進んだボイステラスが順当に抜け出し、2着トゥワイライト・エクスプレス Twilight Express に2馬身4分の1差を付けて人気に応えました。半馬身差3着にはイクスクルーシヴ・ストライク Exclusive Strike 。
クロード・マゴーヒー厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のボイステラスは、本来なら2連覇を目指す予定だった同厩のポイント・オブ・エントリー Point of Entry が故障で戦線離脱したためにピンチヒッターとして登場したもの。前走モンマス・ステークス(芝GⅡ)に続く連勝で、GⅠタイトルを初めて手にすることになりました。シーズン後半はマゴーヒー陣営のエースとしての活躍が期待されます。

続いてアーリントン競馬場は芝戦のフェスティヴァル、最初は長距離のスターズ・アンド・ストライプス・ステークス Stars and Stripes S (芝GⅢ、3歳上、12ハロン)。馬場は firm 、6頭が出走し、G戦に2連勝中のダーク・コーヴ Dark Cove が3対5の1番人気に支持されています。
逃げるアイオヤ・ビッグタイム Ioya Bigtime を2番手で追走したダーク・コーヴ、直線で逃げ馬を捉えると、後方から追い込む2頭を1馬身4分の3差抑えて人気に応えました。接戦の2着はハナ差でサントレイサー Suntracer が先着し、ザ・ピザ・マン The Pizza Man が3着。アイオヤ・ビッグタイムが4着。勝時計の1分27秒39はコース・レコード更新、この距離のレースが少ないという事情もあるのでしょう。
マイケル・メイカー厩舎、ロージー・ナプラヴニク騎乗のダーク・コーヴは、去年の4月にメイカー師がクレーミング戦で入手した馬で、4月のエルクホーン・ステークス(芝GⅡ)、5月のルイヴィル・ハンデ(芝GⅢ)に続く長距離G戦のハットトリック達成です。

続いて第57回モデスティー・ハンデキャップ Modesty H (芝GⅢ、3歳上牝、9.5ハロン)。8頭が出走、アーリントン・オークス(GⅢ)勝馬のラ・ティア La Tia が2対1の1番人気に支持されていました。
しかし優勝は8対1の伏兵オーサス Ausus 、4番手から抜け出し、アーテマス・キッテン Artemus Kitten に2馬身4分の1差。逃げたラ・ティアは頭差で3着に終わっています。
ダニエル・ぺイツ厩舎、ジェームス・グレアム騎乗のオーサスは4連敗に終止符を打ち、G戦初勝利となります。前走アーリントン・マトロン(GⅢ)では4着しており、G戦でもそこそこ走っていた存在でした。

三つ目のアメリカン・ダービー American Derby (芝GⅢ、3歳、9.5ハロン)は、今年99回目を迎える伝統の一戦ですが、去年GⅢに降格され、更に今年は距離も11ハロンから短縮されての開催。徐々にステイタスは下がってきました。今年は1頭が取り消して10頭立て。8対5の1番人気は、これもノン・グレードに格下げされたアーリントン・クラシックで2着のアドミラル・キッテン Admiral Kitten 。
レースは3頭が横一線でゴール板を通過する大接戦。写真判定の結果、最内を通った9番人気(12対1)のインフィナイト・マジック Infinite Magic が頭差で制する波乱。アドミラル・キッテンは又しても2着と惜敗し、ハナ差3着にストーミー・レン Stormy Len 。
リチャード・メッティ厩舎、チャニング・ヒル騎乗のインフィナイト・マジックは、英国のジェレミー・ノセダ厩舎でキャリアをスタートさせた馬。イギリスではポリトラックで5戦2勝、アメリカに転じた当初はグレアム・モーション師が管理していましたが、現在のメッティ厩舎では今回が初勝利、G戦初制覇でもあります。前走ヒル・プリンス・ステークス(芝GⅢ)は6着と奮わず、人気が無かったのも当然でした。

アーリントンの最後はアーリントン・ハンデキャップ Arlington H (芝GⅢ、3歳上、10ハロン)。二股を掛けて登録していたサントレイサーがスターズ・アンド・ストライプスに回ったため7頭立て。GⅠ馬のデューラハン Dullahan が2対1の1番人気に支持されていました。
しかし優勝は2番手から外目を通って伸びた3番人気(3対1)のラヒーストラーダ Rahystrada 、タマレーン Temeraine に半馬身差を付け、首差3着に本命デューラハン。
バイロン・ヒューズ厩舎、ロージー・ナプラヴニク騎乗のラヒーストラーダは、史上初となるアーリントン・ハンデ3勝目。2010年、2012年に続く快挙です。去年はこの日マンノ・ウォーを制したボイステラスを破っての優勝。前走モンマス・ステークス(芝GⅡ)では、そのボイステラスの4着に敗れていました。ナプラヴニクはスターズ・アンド・ストライプスに続きG戦ダブル達成。男の騎手達に混じっての活躍には目を瞠るものがありますね。
 

ナイター競馬のコロニアル・ダウンズ競馬場からはオークスとダービー。good の芝コースで行われたヴァージニア・オークス Virginia Oaks (芝GⅢ、3歳牝、9ハロン)は、1頭取り消して10頭立て。
2番手を追走した穴馬(19対1)ネリー・キャッシュマン Nellie Cashman が、猛追する本命(2対1)プレイア Praia を半馬身抑えての番狂わせでした。ハナ差で2番人気(5対2)で逃げたスリー・ハーツ Three Hearts が最後まで粘り3着惜敗。
勝馬を管理するフランシス・アボット調教師にとってもG戦初勝利。鞍上はフォレスト・ボイス騎手。前走ペンシルヴァニア産馬限定の未勝利戦に圧勝したとは言え、7戦目でのこと。急成長が見込まれそうな新星のオークス制覇でした。

一方のヴァージニア・ダービー Virginia Derby (芝GⅡ、3歳、10ハロン)は10頭立て。出走馬中2頭しかいないG勝馬の1頭ライデルーク Rydelluc (3月のパーム・ビーチ・ステークス勝馬)が5対2の1番人気。
しかしレースは大混戦。3頭がゴール板を同時に通過し、真ん中に挟まれた人気薄(7対1)ウォー・ダンサー War Dancer が頭差抜け出していました。2着は2番人気(3対1)のチャーミング・キッテン Charming Kitten 、3着も頭差で3番人気(7対2)のジャック・ミルトン Jack Milton 。ライデルークは直線で挟まれる不利があったのか、一気に後退して8着同着に終わっています。勝ったウォー・ダンサーは6番手から徐々に進出したもので、最後の末脚が最も切れたジャック・ミルトンは惜敗の部類でしょう。
トーマス・マクピーク厩舎、アラン・ガルシア騎乗のウォー・ダンサーは、前走インディアナ・パークの一般ステークスで2着だった馬。もちろんこれがG戦初勝利となります。

デラウエア・パーク競馬場からは2鞍。デラウエア・オークス Delaware Oaks (GⅡ、3歳牝、8.5ハロン)は fast の馬場に9頭立て。ブラック=アイド・スーザン・ステークス4着のマラクーヤ Maracuya が6対5の1番人気に支持されていました。
しかし本命馬は先行争いに加わり、一旦は先頭に立ったものの失速し7着大敗。優勝は終始先行グループに付けていた4番人気(9対1)ダンシング・アフリート Dancing Afleet 。終始逃げ、一旦は本命馬に交わされながらも再び先頭を奪い返した3番人気(9対2)イル・サン・モリ― Ile St. Molly を半馬身差捉える逆転劇です。1馬身4分の3馬身差で2番人気(3対1)のテル・ア・グレート・ストーリー Tell a Great Story が3着。
ティモシー・リッチー厩舎、ジョシュア・ナヴァロ騎乗のダンシング・アフリートは3連勝。3戦目に6月13日の未勝利戦で初勝利、続く6月24にはクレーミング戦を制して、これがG戦初勝利。通算では5戦3勝3着1回となります。

デラウエアのもう一鞍はロバート・G・ディック・メモリアル・ステークス Robert G. Dick Memorial S (芝GⅢ、3歳上牝、11ハロン)。本来は芝コースで行われるはずでしたが、前日の纏まった雨のためダートコースに変更。G戦格付けからは外される筈ですが、一応結果だけ記録しておきましょう。
当初は10頭が登録していましたが、ヨーロッパ起源の馬が5頭も取り消して予定の半分となる5頭立て。全く性格が異なるレースとなり、1番人気(4対5)のトレジャード・アップ Treasured Up が期待に応えて優勝しています。2着は1馬身4分の3差でエンジェル・テラス Angel Terrace 、3着に5馬身4分の3差でイクスプレイナブル Explainable 。
アルバート・ストール厩舎、シャウン・ブリッジモハーン騎乗のトレジャード・アップは、未勝利馬だった頃以来のメイン・コースでの競馬。5月にはチャーチル・ダウンズの一般芝コースステークス(11ハロン)でステークス初勝利を果たしていました。

最後はハリウッド・パーク競馬場。毎年この時期に行われてきたGⅢのハリウッド・ジュヴェナイル・チャンピオンシップ・ステークス Hollywood Juvenile Championship S でしたが、今年からリステッドに格下げ。ここでは詳しく取り上げません。
そこで最初にエイ・グリーム・ハンデキャップ A Gleam H (GⅡ、3歳上牝、7ハロン)はGⅡながら勝馬にはBC・フィリー・アンド・メア・スプリントへの優先出走権が付与される一戦だけに、3頭取り消しの5頭立てでも豪華キャストが揃いました。即ちGⅠ馬が3頭、ラ・ブレア・ステークス勝馬のテディーズ・プロミス Teddy’s Promise が6対5の1番人気に支持され、翌年のラ・ブレア覇者ブック・レヴュー Book Review とヴァニティー・ハンデ勝馬のバイラーマ Byrama が3対1で並ぶ2番人気。
結果は、離れた4番手からレースを運んだブック・レヴューが外から鋭く伸びて快勝。2馬身半差でテディーズ・プロミスが2番手で粘り込み、頭差でバイラーマが最後方から3着に追込み。
ボブ・バファート厩舎、ラファエル・ベハラノ騎乗のブック・レヴューは、4歳馬になってからの初勝利。去年の年末にラ・ブレアを制しましたが、2月中旬に本命で臨んだサンタ・マリア・ステークス(GⅡ)で2着に敗れで実戦を遠ざかっていました。秋に向けて幸先良い始動、目標はもちろんBCでしょう。

最後はアメリカン・オークス American Oaks (芝GⅠ、3歳牝、10ハロン)。かつてシーザリオが勝ったこのオークスも、愈々今回が最終回となります。8頭立ての1番人気(6対5)に支持されたエモリエント Emollient は初めての芝コース、期待に応えてレースのフィナーレを飾ることが出来るでしょうか。
レースはウェルザイマー兄弟のサリッチ Sarach の逃げ。名手マイク・スミス騎乗のエモリエントは、ペースがスローなのを察知して早目に2番手に上がります。ジャドモント・ファームの勝負服を付けた本命馬とウェルザイマー勝負服の逃げ馬は、恰もヨーロッパの競馬の様。芝でも順当に実力を発揮したエモリエント、2着エモーショナル・キッテン Emotional Kitten に半馬身差を付けて期待に応えました。3着は4分の3馬身差でトピック Topic の順。
勝馬を管理するのは、ニューヨークから遠征してきたウイリアム・モット厩舎。騎乗したマイク・スミスは、去年のレディー・オブ・シャムロック Lady of Shamrock に続きオークス2連覇です。春のキーンランドでアシュランド・ステークスに勝ったエモリエント、GⅠはこれで2勝目となりました。

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