戻ってきたGⅠ戦
7月20日のアメリカは4つの競馬場で5つのG戦と比較的少ないレポートですが、内GⅠは3鞍と豪華な一日。順を追って取り上げていきましょう。
最初はアーリントン競馬場から。アーリントン・オークス Arlington Oaks (GⅢ、3歳牝、9ハロン)は、fast の馬場、1頭が取り消して6頭立て。2連勝中の新星スカイ・ガール Sky Girl が2対1の1番人気に支持されていました。
そのスカイ・ガールは積極的にレースを進め、2番手から早目に先頭に立ちましたが、直線では後方待機組に差されて3着に終わります。優勝は前半後方2番手、一旦は最後方に下がりながらも3頭分の外から鋭く伸びた2番人気(5対2)のマイ・オプション My Option 。これも追込みのフリヴォラス Frivolous をやや楽に首差抑えての優勝です。2馬身4分の1差でスカイ・ガールが3着。
クリス・ブロック厩舎、エドゥアルド・ペレス騎乗のマイ・オプションは、G戦こそ初勝利ながら6戦4勝2着2回となるパーフェクトに近い成績。2歳時にはイリノイ・デビュタント・ステークスに勝ってイリノイの2歳牝馬チャンピオンに選出されていた馬です。前走同じアーリントンの一般ステークス(パープル・ヴァイオレット・ステークス)では2着に敗れていましたが、照準を合わせたG戦を見事に射止めた形でしょう。
次にサラトガ競馬場のG戦は2鞍、最初のシュヴィー・ハンデキャップ Shuvee H (GⅢ、3歳上牝、9ハロン)、何故か去年は施行されず、2年振りの施行となります。good とやや柔らかいダート・コースに1頭が取り消して6頭立て。前走GⅠ(オグデン・フィップス・ハンデ)で2着した後少し間隔を空けたオーセンティシティー Authenticity が1対2の断然1番人気。
レース前、ゼニヤッタ Zenyatta の半妹ということで血統的に話題のエボルイサンテ Ebolouissante がステークス・デビューということもあって興奮、ロージー・ナプラヴニクを振り落して逸走するアクシデントがありました。ナプラヴニクは直ぐに再騎乗しましたが、スタートは出遅れ、結局競馬にはなりませんでした。
一方、ハプニングには動じぬオーセンティシティー、スローで逃げるシー・アイランド Sea Island をしっかり2番手でマークし、直線でこれを捉えると、内から追い込むフラッシー・アメリカン Flashy American を1馬身抑えて堂々期待に応えています。2馬身4分の1差でシー・アイランドが逃げ粘り3着。
トッド・プレッチャー厩舎、ジョン・ヴェラスケス騎乗のオーセンティシティーは、去年は全休して棒に振りましたが、今期はチャーチル・ダウンズのラ・トロワイエンヌ・ステークス(GⅡ)に次いで二つ目のG戦勝利。通算成績を9戦4勝2着3回3着1回とし、そろそろGⅠのタイトルが欲しい所でしょう。
さてこれからはGⅠ戦を続けてレポートして行きます。
サラトガのGⅠは、コーチング・クラブ・アメリカン・オークス Coaching Club American Oaks (GⅠ、3歳牝、9ハロン)。僅か5頭立て。しかも有力視される2頭は何れもトッド・プレッチャー厩舎の馬とあって独占の趣も感じられます。6対5で1番人気に支持されたアンリミテッド・バジェット Unlimited Budget は、ベルモント・ステークスで果敢に牡馬に挑戦して6着だった馬。一方2対1で2番人気のプリンセス・オブ・シルマー Princess of Sylmar は、ご存知38対1という大穴でケンタッキー・オークスを制した馬。果たしてどちらに軍配が挙がるでしょうか。
5頭立てと言うこともあってレースは一団。3番人気(5対2)のマイ・ハッピー・フェイス My Happy Face が逃げ、スタートでやや出遅れたアンリミテッド・バジェットは最後方からの競馬。遅れを取り戻すべく早目に仕掛けた本命馬は3番手まで上がったものの、無理が響いたか後退して最下位に敗退。一方前半は最後方に控えたプリンセス・オブ・シルマー、第4コーナーは抑え切れない勢いで先行馬を捉えると、後は独壇場。鞍上が気合を入れるためムチを入れたこともあって、逃げ粘って2着したマイ・ハッピー・フェイスには6馬身の大差が付いていました。1馬身4分の3差でマラソン・レディー Marathon Lady が3着。
いつも同馬に騎乗しているマイク・スミスがデラウェア・ハンデに出張のため、今回はハヴィエル・カステラノ騎乗。プレッチャー師は、2001年のトゥイードサイド Tweedside 、2004年アシャド Ashado 、2007年オクターヴ Octave 、2010年のデヴィル・メイ・ケア Devil May Care に続き5度目のCCAオークス制覇となりました。一つ前のシュヴィーも勝ったプレッチャー、この日はG戦ダブルと総なめの快挙でもあります。この勝利で、プリンセス・オブ・シルマーのケンタッキー・オークスは決してフロックでは無かったことが証明されたとも言えるでしょう。
続いてはデラウエア・パーク競馬場のGⅠ戦。デラウエア・ハンデキャップ Delaware H (GⅠ、3歳上牝、10ハロン)が今年からGⅠに格上げされました。と言うより、24年振りにGⅠに戻ったと紹介すべきでしょう。1973年から1989年までずっとGⅠに格付けされてきましたが、1990年以降去年までGⅡに格下げされていた伝統ある夏場の牝馬のための重賞。fast の馬場、プレッチャー厩舎がサラトガと二重登録していたオーセンティシティー(シュヴィーを快勝)を取り消したため5頭立て。去年の勝馬でBCレディーズ・クラシックの覇者ロイヤル・デルタ Royal Delta が圧倒的な2対5の1番人気に支持されていました。
競馬はやって見なければ判らない、と言いますが、これほどの圧勝を見ると断然本命も止むを得ないかなと思ってしまいます。ニューヨークを断って騎乗したマイク・スミスを背にしたロイヤル・デルタ、スタートから無理せずハナに立つと、後はアナウンサーが笑いながら実況するような一人旅で、何と2着シーズ・オール・イン She’s All In (25対1の最低人気)に10馬身4分の3差を付けていました。4分の3馬身差3着に入ったエンド・ホワイ・ノット And Why Not もブービー人気(23対1)とあって、大本命に勝負を挑んだ2番人気(セントリング Centring)と3番人気(サマー・アプローズ Summer Applause)は共々最下位争いの有様です。
着差の10馬身4分の3差は、これまでのデラウェア・ハンデの記録だった1960年のクィル Quill が付けた9馬身を上回る新記録で、オッズも1975年のスーザンズ・ガール Susan’s Girl 、1976年のオプティミスティック・ギャル Optimistic Gal 、2006年のフリート・インディアン Fleet Indian と並ぶ配当の低さ。例として挙げた馬は全て歴史に残る名牝で、デラウエア・ハンデ連覇はロイヤル・デルタが6頭目。GⅠに相応しい一戦となりました。調教するのは、もちろん名伯楽のウイリアム・モット師。愛馬と同じ2連覇、2度目の優勝です。
最後にカリフォルニア州のデル・マー競馬場。伝統の夏開催は7月17日に開幕していましたが、G戦は昨日が最初。しかもいきなりのGⅠとなるエディー・リード・ステークス Eddie Read S (芝GⅠ、3歳上、9ハロン)です。firm の芝コース、仏ギニー馬ルカイヤン Lucayan が取り消して9頭立て。既にGⅠに勝っているジェラニモ Jeranimo が5対2の1番人気に支持されていました。
3番人気(9対2)のフェド・ビズ Fed Biz と英国産馬スリム・シェイディー Slim Shady が激しく先頭を争う縦長の展開。度胸良く最後方で待機していた本命ジェラニモでしたが、徐々にポジションを挙げると、直線では外を回っての鮮やかな差し切り勝ち。2着ヴァガボンド・シューズ Vagabond Shoes (23対1、ブービー人気)に1馬身半差を付けて期待に応えました。3着は更に半馬身差で早目先頭のフライ・レクシス・フライ Fly Lexis Fly (37対1、最低人気)。フランスから移籍したディープインパクト産駒バロッチ Barocci も直線で見せ場を作りましたが、惜しくも5着。2番人気(3対1)に支持されたフランス移籍のGⅢ馬ソーファスト Sofast は最下位敗退。
マイケル・ペンダー厩舎、ラファエル・ベハラノ騎乗のジェラニモは、去年のシューメーカー・マイルに続いて二つ目のGⅠ制覇。2011年のこのレースでは2着しており、前走連覇を狙ったシューメーカー・マイル4着からの巻き返し。その前のターフ・クラシック(芝GⅠ)7着は、敗因が重馬場とハッキリしているだけに、馬の実力はGⅠ馬に相応しいものと言えましょう。
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