リングの合間のトリスタン

7月27日のプロムスは、リングの最後の2演目の間に行われた、何とも凄いトリスタンとイゾルデでした。最早ロンドンはバイロイトと化したような趣です。
リングが終われば今年のプロムスに於けるワーグナー200年祭は終了かと言えばそうではなく、この後もタンホイザー、パルシファルの全曲演奏会が控えているという具合。ネットで聴くだけのファンにとっても実にへヴィーな日々ではあります。

今回のトリスタンには日本の藤村実穂子がブランゲーネで参加するのも聴きどころ。当初の発表ではソフィー・コッホがクレジットされていましたから、何かの事情で交替したものと思われます。
それはトリスタン役も同じで、事前に発表されていたペーター・ザイフェルトからディーン・スミスに変更、これも理由などは公表されていないと思います。

代役だとしても日本の誇るワーグナー歌手がプロムス(確かデビューじゃないでしょうか)に登場するのですから注目しない訳にはいきません。
と思ってBBC3に繋ぐと、ライヴ中継前の番組の最後がオン・エアされてきました。これがまた日本を代表するピアニスト小川典子が案内役を務めるサタデイ・クラシックスという番組。ドビュッシー、バッハ、武満などの作品が取り上げられます。これも一週間に限って聴くことが出来ますから、小川ファンならずとも是非聴きたいもの。
なお、番組の最後には小川が7月31日のプロムスに出演することも紹介されています。

http://www.bbc.co.uk/radio/player/b01pyfft

話を戻して、昨日のプロムスです。

≪Prom 19≫
ワーグナー/楽劇「トリスタンとイゾルデ」(演奏会形式)
 BBC交響楽団
 指揮/セミョーン・ビチュコフ
 BBCコーラス、BBCシンガース
 ロバート・ディーン・スミス(トリスタン)
 クワンチュイ・ユーン(マルケ王)
 ヴィオレッタ・ウルマーナ(イゾルデ)
 ボーツ・ダニエル(クルヴェナル)
 デヴィッド・ウイルソン=ジョンソン(メロート)
 藤村実穂子(ブランゲーネ)
 エドワード・プライス(舵取り)
 アンドリュー・ステープルス(羊飼い/水夫)

夕方5時に始まって夜も更けた11時に終了する演奏会。演奏者はもちろんですが、聴いているファン、特にアリーナで立っている人にも相応の体力が要求されます。
中でも第2幕の愛の二重唱、それに続くマルケ王の詰問、更に第3幕のトリスタンの譫妄の場面など、いつ終わるとも知れない長丁場にジッと聴き入る聴き手の集中力にも感心させられました。私などはスコアを見ているから付いて行けるようなものの、耳だけでは到底無理でしょう。

それにしても素晴らしいトリスタンです。警告の歌を歌う藤村は、恐らくアルバート・ホールの高い場所で歌っているものと想像され、二人の恋人との距離感もキチンと出ていました。
ビチュコフも堂々たる指揮振りですが、一際感心したのはティンパニの名演。決め所でのパ~ンと乾いた音から、愛の死での抑制の効いた響きまで、ほとんど天才的な妙技だと思いました。どんな人なのか顔を見てみたい。

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