パレス・マリスは強かった

今日は最初にクリーヴランドのシスルダウン競馬場から見ていきましょう。オハイオ・ダービー Ohio Derby (GⅢ、3歳、8.5ハロン)、去年は7月7日に行われていますが、今年は3週間ほど遅れての施行。fast の馬場に7頭が出走し、1勝馬ながらGⅠ戦の経験もあるタイトル・コンテンダー Title Contender が2対1の1番人気。ここでは格上と言う評価でしょう。
逃げるモンゴリアン・サタデイ Mongolian Saturday の2番手に付けたタイトル・コンテンダー、直線中程で前を捉えると、4番手から追い上げるブレイヴマン Braveman を1馬身抑えて期待に応えました。更に1馬身4分の1差でハンサム・タイガー Handsome Tiger が3着。
ウェイン・カタラーノ厩舎、シスルダウンのリーディングを走るヘクター・ロザリオ騎乗のタイトル・コンテンダーは、3歳時はボブ・バファート厩舎に所属していた馬。去年の9月29日に初勝利を挙げて以来の勝星となります。去年はBCジュヴェナイル(9頭立て8着)、キャッシュコール・フューチュリティー(11頭立てどん尻)とGⅠ戦にも走っていましたが、新厩舎に移ってからは今期4戦して未勝利。前走チャーチル・ダウンズのアローワンスでも3着まででしたが、ここではメンバー的に上位だったと言えましょう。

続いて夏競馬が本格化したサラトガ競馬場。G戦は3鞍行われましたが、いきなりGⅠのプライオレス・ステークス Prioress S (GⅠ、3歳牝、6ハロン)。馬場は fast 、1頭取り消しがあり6頭立て。GⅡ3勝馬で前走エイコーン・ステークス(GⅠ)3着のカウアイ・ケイティー Kauai Katie が2対5の断然1番人気、GⅠ初制覇を目指します。
ところが大本命のカウアイ・ケイティー、何故かこの日は全くの不発で、3番手を進んだものの精彩なく、まさかのどん尻惨敗。3番人気(5対1)ワイルドキャット・リリー Wildcat Lily の逃げを内ラチ沿いに4番手で追走していた最低人気(21対1)のライトハウス・ベイ Lighthouse Bay が、4コーナーで馬1頭分だけポッカリと開いたラチ沿いを通って抜け出し、ワイルドキャット・リリーを半馬身差し切っての大番狂わせでした。1馬身4分の3差でアイリッシュ・リュート Irish Lute が3着。2番人気(7対2)のソー・メニー・ウェイズ So Many Ways も4着と波乱の要因になっています。
勝馬を管理するジョージ・ウィーヴァー師はルーカス厩舎などで修業した方で、GⅠは2005年にドバイのゴールデン・シャヒーンで経験して以来二度目の快挙。もちろんアメリカでのGⅠは初制覇となります。騎乗したジョセフ・ロッコにとってもGⅠは2勝目。今年5月にティズ・ミズ・スー Tiz Miz Sue でオグデン・フィップス・ステークスに勝ったジョッキーです。ライトハウス・ベイは前走パークス・レーシングで一般ステークスに勝っていたものの、G戦そのものが初勝利。ここは入着のチャンスと考えていた程度でした。それでも通算成績は7戦4勝、2着と3着が夫々一回づつで堅実に走ってきた存在です。

次もGⅠで、ダイアナ・ステークス Diana S (芝GⅠ、3歳上牝、9ハロン)。芝コースは firm 、1頭取り消して5頭立てと少頭数でしたが、GⅠ馬2頭の5度目の対決に注目が集まっていました。4月にジェニー・ワイリー・ステークスを制したセンター・コート Centre Court が6対5の1番人気、2歳時にアルシバイアディーズ・ステークスに勝っているステファニーズ・キッテン Stephanie’s Kitten が3対2の2番人気。
しかし優勝は1番人気でも2番人気でもなく、ブービー人気(6対1)ラーフィング Laughing の逃げ切り勝ち。直線では一旦最低人気(9対1)のサミター Samitar が競り掛けましたが、結局は3番人気(5対1)のドリーム・ピース Dream Peace が迫りましたが頭差2着。半馬身差でステファニーズ・キッテンが3着に入り、センター・コートは最下位敗退。前のプライオレスに続いて本命馬が最下位に敗れるという波乱でした。
アラン・ゴールドバーグ厩舎、ホセ・レズカノ騎乗のラーフィングはアイルランド産。彼の地でステークスに勝った後アメリカに移籍し、ステークスは4勝目ですがGⅠは初制覇。前走はイートンタウン・ハンデ(芝GⅢ)に勝っておりG戦2連勝。去年勝ったマッチメーカー・ステークス(明日モンマス競馬場で開催)との二重登録を済ませており、こちらに回ってきたのが大正解という結果でした。

サラトガの最後はGⅡながら役者が揃ったジム・ダンディ・ステークス Jim Dandy S (GⅡ、3歳、9ハロン)。登録馬の中からヴァイジャック Vyjack が明日のハスケル・インヴィテーショナルに回るため取り消して9頭立て。何と言ってもベルモント・ステークスを制したパレス・マリス Palace Malice がGⅠ以来の出走とあって6対5の1番人気に支持されています。
予定通りドワイヤー勝馬モレノ Moreno が逃げ、パレス・マリスは2番手追走。直線でモレノを捉えて先頭に立った時はややフラつく場面もありましたが、鞍上マイク・スミスが立て直すと、後方から追い上げるウイル・テイク・チャージ Will Take Charge を1馬身寄せ付けず貫録の勝利です。2馬身4分の1差でモレノが3着に粘り、4着以下は5馬身離される堂々たるクラシック馬の凱旋でした。
トッド・プレッチャー師に13対1というサプライズでベルモントをプレゼントしたパレス・マリス、この勝利で着実に成長していることを証明し、夏場のダービーと呼ばれるトラヴァース・ステークスでも中心の1頭となるでしょう。クラシックはラッキーだった、とは言わせない充実ぶりです。

 
最後にデル・マー競馬場からサン・ディエゴ・ハンデキャップ San Diego H (GⅡ、3歳上、8.5ハロン)を。馬場は fast 、6頭立て。去年のハスケル・インヴィテーショナルを制したペインター Paynter が3対5の1番人気に支持されていました。ハスケル・インヴィテーショナルは明日モンマス競馬場で行われますが、今年は大腸炎などいくつかの疾病を併発しての病み上がり、余り無理はせずデル・マーに回ってGⅡを狙う作戦でしょうか。
逃げる最低人気(34対1)バッティ・マン Batti Man の2番手に付けたペインター、直線で外からこれを捉えて勝ったかに思われましたが、1番枠スタートから内ラチ沿いに最後方2頭の一角で待機した2番人気(7対2)のケトル・コーン Kettle Corn が、最後のコーナーで巧みに外を回って外から先行2頭に並び掛け、ペインターに半馬身差を付ける逆転劇です。粘ったバッティ・マンが4分の3馬身差で3着。
ジョン・サドラー厩舎、ヴィクター・エスピノザ騎乗のケトル・コーンは、前日のクーガーⅡ世ステークスにも登録していましたが、そちらを回避してここに出走してきたもの。去年のこのレースは3着、前走ハリウッド・ゴールド・カップでゲーム・オン・デュード Game On Dude の2着した実力馬ですが、G戦勝は2011年12月のネイティヴ・ダイヴァー・ハンデ(GⅢ)以来となる6歳馬。勝星も去年11月ハリウッドのアローワンス戦以来で、4連敗に終止符を打ちました。

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