ヴェラザーノ復権

メインが土曜日に集中するアメリカ競馬ですが、先週は7月28日の日曜日に大レースが集中していました。特にモンマス・パーク競馬場はG戦5連発の豪華版で、今日のレポートはここから始めましょう。

最初は、第5レースに組まれた第47回マッチメーカー・ステークス Matchmaker S (芝GⅢ、3歳上牝、9ハロン)。firm の芝コース、ダート変更時のみの登録馬1頭と、前日のダイアナ・ステークスに回ったラーフィング Laughing (見事に勝ちましたね)が取り消しての7頭立て。前走オール・アロング・ステークスを含めGⅢに2勝、新たにジョン・ヴェラスケスとコンビを組むプレッチャー厩舎のチャンネル・レディー Channel Lady が2対1の1番人気。
レースはフランス産のミナクシ Minakshi がスローペースに落として逃げ、チャンネル・レディーは2番手追走。しかしこの日は本命馬の機嫌が悪かったのか、直線ではズルズル後退する一方で6着大敗。替って前を一気に捉えたのが、チャンネル・レディーをマークするように4番手を進んだ2番人気(5対2)のスターストラック Starstruck 。1馬身4分の1差でネイプルズ・ベイ Naples Bay が2着に追い込み、逃げたミナクシが4分の3差で3着。
ラリー・ジョーンズ厩舎、ロージー・ナプラヴニク騎乗のスターストラックは、アイルランドからの移籍馬でガリレオ Galileo の娘。去年はダンダルクのポリトラック・コースでハンデ戦に勝っていましたが、アメリカではこれが4戦目。米デビューのアローワンス戦に次ぐ2勝目でG戦は初勝利となります。今回はブリンカー装着が功を奏しました。

続いて第6レースのモーリー・ピッチャー・ステークス Molly Pitcher S (GⅡ、3歳上牝、8.5ハロン)。メイン・コースは fast 、1頭取り消しがあり5頭立て。前走1番人気で臨んだオグデン・フィップス・ハンデ(GⅠ)は5着に敗れたものの、適距離に戻ったジョイフル・ヴィクトリー Joyful Victory が3対5の断然1番人気。
スタートこそ2番手だったジョイフル・ヴィクトリー、クラブハウス・ターンでは先頭に立つと、そのまま後続を突き放しての逃げ切り勝ちで見事期待に応えました。2着ワイン・プリンセス Wine Princess とは7馬身半の大差。更に7馬身4分の1差が付いて3着はレディー・サムライ Lady Samuri の順。
ラリー・ジョーンズ厩舎、ロージー・ナプラヴニク騎手はマッチメーカーに続きG戦ダブル。ジョーンズ師は2010年のジャスト・ジェンダ Just Jenda に続きモーリー・ピッチャー2勝目となります。前回は短距離に使って失敗した陣営、今後はスプリントは避け、BCレディーズ・クラシックを目標とするローテーションを歩みます。

一息空けて第9レースがモンマス・カップ・ステークス Monmouth Cup S (GⅡ、3歳上、8.5ハロン)。去年は7月7日に行われましたが、今年はハスケル・デイの祭典に組み込まれての開催となりました。7頭立て。去年のフロリダ・ダービー馬で、今年もアリシェバ・ステークス(GⅡ)を快勝しているテイク・チャージ・インディー Take Charge Indy が3対5の圧倒的1番人気。
その大本命を不運が襲ったのは向正面、先頭に立ってレースを優位に進めていた矢先でした。左前脚を故障したテイク・チャージ・インディ、鞍上ゲーリー・スティーヴンスは馬を止め、直ぐに手術のために競馬場を離れます。アクシデントにより展開は大幅に変化、3番手を進んでいた3番人気(7対1)のパンツ・オン・ファイア Pants on Fire が自然に先頭に立ち、後方から追い込む2番人気(5対2)のヒム・ブック Hymn Book に1馬身4分の3差で優勝。更に半馬身差でポンツィ・シェーム Ponzi Scheme が3着。テイク・チャージ・インディーのその後の経過については、これを書いている現在では報道されていないようです。なお、このアクシデントについて審議が行われましたが、妨害などによるものではないためそのまま確定しています。
ケリー・ブリーン厩舎、パコ・ロペス騎乗のパンツ・オン・ファイアは、一昨年のルイジアナ・ダービー(GⅡ)とペガサス・ステークス(GⅢ)の勝馬で、久し振り、3度目のG戦勝利となりました。

再び一般戦を挟んで第12レースとして行われたのが、オーシャンポート・ステークス Oceanport S (芝GⅢ、3歳上、8.5ハロン)。1頭取り消して10頭が出走し、今期タンパ・ベイ・ステークスを含めて芝のGⅢに2勝しているスイフト・ウォリアー Swift Warrior が5対2の1番人気に支持されていました。
しかし、レースは1番枠スタートの3番人気(4対1)シルヴァー・マックス Silver Max の鮮やかな逃げ切り勝ち。直線では後続との差が詰まるどころか更に広げ、2着に抜けてきたハウ・グレート How Great (ハットトリック産駒)に5馬身4分の3差を付けていました。1馬身4分の3差3着に2番人気(3対1)のハドソン・スティール Hudson Steele が入り、スイフト・ウォリアーは3着争いにも敗れて6着敗退。
デール・ロマンス厩舎、ロビー・アルバラード騎乗のシルヴァー・マックスは芝コースを得意としていますが、ここ2戦はダートで結果が出ず、5月のターフ・クラシック(芝GⅠ)4着以来となる芝戦でした。去年はトランシルヴァニア(芝GⅢ)、アメリカン・ターフ(芝GⅡ)、ヴァージニア・ダービー(芝GⅡ)、アーリントン・クラシック(芝リステッド)に勝っており、本来の芝なら簡単に負かせる馬ではありません。

そしてメインは、第13レスとなる第46回ハスケル・インヴィテーショナル Haskell Invitational (GⅠ、3歳、9ハロン)。芝コースの3歳最強馬決定戦と言う性格の一戦です。7頭が出走し、無敗で臨んだケンタッキー・ダービーで14着と思わぬ大敗を喫したヴェラザーノ Verrazano の名誉回復に期待が集まってイーヴンの1番人気。プリークネス勝馬でベルモントも2着のオックスボウ Oxbow も出走してきましたが、こちらは3対2の2番人気と本命の座を譲っていました。
クラシック馬オックスボウが果敢にハナに立ってレースを引っ張りましたが、直線入口まで。3番手から2番手と徐々に順位を上げたヴェラザーノが、直線では本領を如何なく発揮しての圧勝。2着のGⅠ(ノーフォーク・ステークス)馬パワー・ブローカー Power Broker にレコードとなる9馬身4分の3の大差を付けていました。更に6馬身と決定的な差が開いてマイクロマネージ Micromanage が3着、オックスボウは写真判定の結果ハナ差で4着に終わっています。
1着と3着は共にトッド・プレッチャー師の管理馬。勝馬にはジョン・ヴェラスケス、3着にはジョー・ブラーヴォが騎乗していました。2着のパワー・ブローカーは、このレース4連覇を目指したボブ・バファート師の管理馬で、ロージー・ナプラヴニク騎乗。プレッチャー師はこのレース、2006年のブルーグラス・キャット Bluegrass Cat 、2007年エニー・ギヴン・サタデイ Any Given Saturday に続き3度目の優勝となります。
ウッド・メモリアルに続き二つ目のGⅠを手にしたヴェラザーノは、1月1日にデビュー勝ちしてから4連勝。ダービー大敗のあとは残る2冠をパスし、前走ペガサス・ステークス(GⅢ)に勝ってここに照準を定めてきました。これで7戦6勝、敗れたのはダービーのみ。あとは3歳チャンピオンの座を射止めるだけでしょう。

さてサラトガ競馬場ではアムステルダム・ステークス Amsterdam S (GⅡ、3歳、6.5ハロン)が行われています。fast の馬場に7頭立て。前走ウッディー・スティーヴンス・ステークス(今年からGⅡに降格)を鮮やかに差し切ったフォーティー・テイルズ Forty Tales が5対2の1番人気。
スタートの良かったミコ・マルガリータ Mico Margarita を交わして逃げたメンター・ケイン Mentor Cane が、第4コーナーで大きく膨れて先頭を離脱。前半6番手を進んだ本命フォーティー・テイルズが直線で予定通り末脚を発揮し、二の脚を使って盛り返したミコ・マルガリータに4分の3馬身差を付けて期待に応えました。1馬身差でサリュートス・アミーゴス Salutos Amigos が3着。
こちらもトッド・プレッチャー師の管理馬で、騎乗したのはジョエル・ロザリオ。フォーティー・テイルズはこれでステークス3連勝、G戦も2連勝となり、念願のGⅠ制覇を掛けて8月24日のキングズ・ビショップ・ステークスを狙うでしょう。

最後はやはりカリフォルニアから、デル・マー競馬場のビング・クロスビー・ステークス Bing Crosby S (GⅠ、3歳上、6ハロン)。勝馬にはBCスプリントの優先出走権が与えられるレースで、日曜日二つ目のGⅠ戦です。GⅠ馬が3頭も揃う中、9対5の1番人気に支持されたのは、やはりGⅠ(サンタ・アニタ・ダービー)馬でプリークネス5着以来となるゴールデンセンツ Goldencents 。古馬とは初対戦ながら、ここ数日今年のクラシックで活躍した馬が好走していることからも人気を集めていました。
レースは3番人気(3対1)の一角で5歳のGⅠ(キャッシュコール・フューチュリティー)馬コンマ・トゥー・ザ・トップ Comma to the Top が先手を取りましたが、伏兵(33対1)コーチ・ボブ Coach Bob が交わして逃げる速いペース。前が塞がり内で我慢する場面もあったゴールデンセンツが直線で外に出し、鋭く追い上げましたが、4番手から早目に先頭に立ったこれも3番人気(3対1)のポインツ・オフザベンチ Points Offthebench が頭差で凌いでの逆転劇。3馬身4分の1差3着に2番人気(5対2)のジミー・クリード Jimmy Creed (マリブー・ステークスGⅠ勝馬)が入り、コンマ・トゥー・ザ・トップは5着敗退。
ティム・ヤクティーン厩舎のポインツ・オフザベンチは当日記初登場の馬ですが、ここまで7戦5勝となる4歳せん馬で、G戦は初挑戦。鞍上に名手マイク・スミスを得たことが大きかったと思いますが、本命馬が内に包まれてやや仕掛けが遅れたことにも助けられた感がありましょう。今期は3連勝でいきなりGⅠ馬のタイトルと、BCへの優先出走権を獲得しました。

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