スティーヴ・ドラウン、久々のGⅠ

ヨークのイボア開催は3日目、前日の雨で good to soft まで一気に馬場が柔らかくなっていました。この日はG戦が3鞍。
最初のロンスデール・カップ Lonsdale Cup (GⅡ、3歳上、2マイル88ヤード)は7頭立て。長距離戦は勢力分布が中々定まらず、前走アスコット・ゴールド・カップの2着馬シメノン Simenon が15対8の1番人気に支持されていました。

そのシメノンがジョニー・ムルタの手綱の下で絶妙な逃げを打ちますが、余り離れずにこれを追走した3番人気(4対1)のアージーマー Ahzeemah が並び掛け、最後は2頭の叩き合い。外のアージーマーが頭差で先着していました。3着は2馬身4分の3差が開いて去年の勝馬で2番人気(9対2)のタイムズ・アップ Times Up 。
アージーマーは、その馬名からも想像できるようにゴドルフィンの所有馬でサイード・ビン・スロール厩舎、シルヴェストル・デ・スーザが騎乗していました。スーザ騎手はムチの過剰使用で2日間(9月6日と8日)の騎乗停止処分を受けています。同馬は前走グッドウッド・カップ(GⅡ)が2着、ドバイのGⅢには勝っていますが、ヨーロッパのG戦は初勝利。ここまで1・2着を外していないという堅実な4歳馬で、来年はアスコットのゴールド・カップを目指します。その前にメルボルン・カップに参戦する可能性もある由。
父はデュバウィ Dubawi 。陣営によれば、デュバウィ産駒に共通しているのは勝つことへの執念だそうで、特にこの馬にはその性向が強いとのこと。長距離界のスターに成れるでしょうか。

続いてストレンソール・ステークス Strensall S (GⅢ、3歳上、1マイル208ヤード)。ここも7頭立てですが、人気は拮抗。6対4の1番人気から最低人気の9対1まで、どの馬が勝ってもおかしくないメンバーが並びました。その1番人気はスタウト厩舎、ハーリッド・アブダッラー氏のパヴロスク Pavlosk 。2連勝でGⅠの頃ネーション・ステークスに挑戦するも9着、前走オーク・トゥリー・ステークス(GⅢ)は5着の3歳馬です。

2番人気(5対1)のアーチビショップ Archbishop が逃げましたが、パヴロスクは掛かり気味で能力を出し切れず4着敗退。早目に抜け出した9対1のシティー・スタイル City Style がソラを使う所に4番人気(8対1)のダナダナ Danadana が追い詰めてのゴール。写真判定の結果、シティー・スタイルが首差でダナダナを凌いでいました。2馬身4分の3差でこれも9対1のガブリアル Gabrial が3着。荒れたとは言え、馬券の配当は大したものではありません。
今年7歳のシティー・スタイルは、又してもゴドルフィンの馬。こちらは新しいチャーリー・アップルビー厩舎ですが、騎乗したのはロンスデール・カップと同じスーザ騎手。ブラジル人の同騎手はG戦ダブル達成。アップルビー師はこの日、ニューマーケットでの出走馬が多いためにそちらに張り付いていました。
シティー・スタイルにとっては、何とこれが英国での初勝利。これまでアメリカ、ドバイ、シンガポールなどで走っており、常に飛行機に乗っているため今が冬なのか夏なのかが判らないのだとか。次はフランスに飛んでドラー賞を目指す計画だそうです。

最後に、開催最後のGⅠ戦となるナンソープ・ステークス Nunthorpe S (GⅠ、2歳上、5ハロン)。馬場が重くなったため3頭が取り消し、それでも17頭と多頭数が揃いました。短距離界もステイヤーに劣らず混戦ですが、ここまでの実績から南アフリカのGⅠスター、シェイ・シェイ Shea Shea が3対1の1番人気。今回はフランキー・デットーリを鞍上に迎えたことも人気の要因でしょう。ライヴァルのソール・パワー Sole Power はキングズ・スタンドでシェイ・シェイを破っていますが、前走ジュライ・カップでは4着だったライヴァルの後塵を拝する5着。4対1の2番人気で続き、下馬評では2頭の一騎打ちという評価でした。

結果も2頭の争いになるかと思われましたが、両馬の半馬身前を駆け抜けたのが、何と40対1の伏兵(並んだ15番人気)ジワーラ Jwala という馬。2着争いはシェイ・シェイがハナ差でソール・パワーを抑えていました。
改めて出馬表を探すほど眼中になかったジワーラ(読み方が良く判らないので、こう読んでおきます)は、ロバート・カウエル厩舎、スティーヴ・ドラウン騎乗。ドラウン騎手に脚光が当たることは実に久し振りで、GⅠ勝は2007年にサーキーズ・シークレット Sakhee’s Secret でジュライ・カップに勝って以来のこと。今年41歳、特に去年は自宅で倒れた際に誤診があったとのことで、ほぼ1年間を棒に振った経緯がありました。

4歳牝馬のジワーラは、前々走が同じヨーク競馬場でのリステッド戦優勝。前走グッドウッドのキング・ジョージ・ステークス(GⅡ)に挑戦しましたが、ゲート内で動転して17頭立ての最下位に終わっていました。次走アベイ・ド・ロンシャン賞が引退の花道になるとのことでしたが、彼女の半姉エアウェイヴ Airwave は2002年のチーヴリー・パーク・ステークス(GⅠ)の勝馬。姉妹揃ってGⅠ馬ということで、繁殖牝馬としての勝ちの方が高いとも言えるでしょう。

一方またしても惜敗に終わったシェイ・シェイ、デットーリによれば、やはり馬場が渋ったことでスピードが減殺されたのが敗因とのこと。この馬もアベイに向かう可能性は残されていますが、凱旋門賞デイのロンシャンは馬場が重くなるのが毎年のこと。出否は天気予報をチェックしてから、ということになりそうです。
ところで、デットーリもこのレースでのムチ過剰使用が指摘され、9月6日と8日の2日間の騎乗停止処分が課せられました。

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