Noriko’s Day
書こう書こうと思っていましたが、あれこれ忙しく今日になってしまいました。
9月7日、ミューザ川崎シンフォニーホールで行われたワンデー・スペシャル・イベントの紹介です。
ホールアドバイザーを務める小川典子が、ミューザの改修再開場を祝って企画した全く新しいタイプのコンサートです。
小川本人は朝の9時から夕方(夜)7時まで出ずっぱりのワンデー・コンサート。全体は4部分で構成され、一般の聴き手には第2部から第4部までの通し券が用意されていました。希望者には第1部の参観も可能とのこと。
その四部とは、
第1部 午前9時半開始 モーニング・マスタークラス
第2部 午後1時開演 ランチタイム・コンサート
第3部 午後4時開演 アフタヌーン・リサイタル
第4部 午後6時半開演 イブニング・ラブソング
第1部は、小川も教授を務める英国ギルドホール音楽院の教授二人による本場の公開レッスンということで、事前に選ばれた3人の受講生にローナン・オホラ教授がレッスンを付けるというもの。
小川は通訳として、また解説を担当したようですが、私は参観しませんでしたので、内容は不明です。
ということで第2部以降を鑑賞。夫々に小川の音楽家としての姿勢が貫かれたもので、改めて彼女の活動の多彩さ、エネルギーに感服した一日となりました。3回とも休憩の無い、1時間ほどの内容。
細部には詳しく触れませんが、演奏されたのは以下の作品たちです。
≪ランチタイム・コンサート≫
ベートーヴェン/交響曲第7番
ラヴェル/ラ・ヴァルス
ピアノ/ローナン・オホラ、小川典子
第1部で教鞭を取った二人によるピアノ・デュオ。第1ピアノをオホラ、第2を小川が担当。音楽院では、オホラは小川の上司に当たるのだとか。
サン=サーンスの「動物の謝肉祭」から水族館がアンコールされました。
≪アフタヌーン・リサイタル≫
ドビュッシー/前奏曲集第1集~「沈める寺」
ラヴェル/亡き王女のためのパヴァーヌ
ラヴェル/「鏡」~「哀しい鳥たち」
ラヴェル/高雅で感傷的なワルツ
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第23番「熱情」
ピアノ/小川典子
リサイタルそのものは4時から始まりましたが、その前にゲストを招いてのプレトークが行われました。その名も「典子の部屋」と題し、ゲストは女優のかたせ梨乃。
内容は「大物女優の素顔・・・役者、そしてピアノ」と、何やら三面記事風でしたが、要するに小川は聞き役に徹し、聞き上手の側面も。
かたせはピアニストの役柄を演じた時からピアノにのめり込み、現在でもレッスンを欠かさないとか。その切っ掛けが小川の御母堂に手ほどきを受けたというのが縁の始まりだそうです。
さすがは大物女優、とてもその年齢とは思えません。トークの中で年齢をあっさりと披露してしまった女優に、小川は大層勇気を貰ったとかで、自分の生年月日を暴露した自著の宣伝もシッカリとしていましたね(笑)。
リサイタルは、東日本大震災によって損壊した川崎シンフォニーホールの復活までに思いを致した内容でのプログラミング。
危機の時代に支えとなるのは、やはりベートーヴェンでしょう。そのことを強く確信させる演奏でした。
アンコールは、小川の活動の本拠でもあるイギリスの作品から、エルガーの「愛の挨拶」。
その愛が、第4部にそのまま引き継がれるという憎い演出。
≪イブニング・ラブソング≫
ハイドン/人魚の歌
シューベルト/菩提樹
シューマン/くるみの木
リスト/3人のジプシー
武満徹/MIYOTA
武満徹/うたうだけ
武満徹/見えないこども
武満徹/小さな空
プーランク/愛の小径
クウィルター/真紅の花びらがまどろめば
レオポルディ/ヘルナルスの小さなカフェ
サティ/ジュ・トゥ・ヴ
グァスタヴィーノ/バラと柳
ガーシュウィン/サムワン・トゥ・ウォッチ・オーバー・ミー
ソプラノ/鮫島有美子
ピアノ/小川典子
鮫島の歌曲リサイタルでもあるこの回は、「世界の愛の歌」と副題が付いたもの。鮫島がトークを挟みながらコンサートが続きます。
いつもはマイクを手放さない小川も、今回は聞き役。彼女の中にいつもは喋りすぎるから、偶には聞き役、という気持ちが働いたのかどうかは判りませんよ。
そして鮫島のトークが巧いのなんの。女優顔負けの間を良く吟味した語り口に感心します。
小川が歌曲の伴奏を務めるのは鮫島に限るそうですし、小川と出会わなければ武満を歌うことは無かったという、人の絆の大切さ。
「うたうだけ」という歌は、つい先日のプロムスでピーター・ゼルキンがピアノ・ソロにアレンジしたものをアンコールで取り上げたばかり。この辺りにも「繋がり」を感じるじゃありませんか。
そしてアンコールも、やはり武満の「翼」。
一日ホール貸切公演で、当日限定の小川セレクトによる英国紅茶とビスケットのセットも販売されていました。
終演後は懇親会。小川と鮫島がファンとの交流を深め、長い一日が幕を下ろしました。
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