シリュス、全盛期に戻る

このブログにとって最も忙しい週末を迎えました。この土日、即ち今日と明日の朝は海外電子競馬新聞と睨めっこ、今から気分は鬱状態です。

さて土曜日のヨーロッパ、ロンシャン競馬場は10月第1週の凱旋門賞フェスティヴァルに突入し、アスコット競馬場も第1次10月開催の当日。従来ならイギリスからスタートするレポートですが、今回は枯葉舞うフランスから行きましょう。

ロンシャン競馬場、凱旋門賞前日はGⅡが4鞍並ぶ前夜祭。このスタイルもすっかり定着してきたようですね。レース順に行きましょう。如何にも秋のロンシャンらしく馬場は soft 、日本なら重馬場と考えて間違いありますまい。
最初はショードネー賞 Prix Chaudenay (GⅡ、3歳、3000メートル)。8頭が出走してきましたが、人気も結果も一月前に行われたリュテース賞(GⅢ)のビデオ・テープになりました。同じコース、同じ距離、同じ条件、違うのはランクがⅢからⅡに上がっただけと言う状況で、今回の1番人気(イーヴン)は前回の勝馬ヴァリラーン Valirann です。

リュテース賞では4頭がゴール板をほぼ一戦で通過しましたが、今回も全く同じ結果。しかも人気通りと言うことで、優勝はヴァリラーン、首差で2番人気(14対5、リュテース賞の本命で3着)のモンクレール Montclair 、短頭差で3番人気(15対2、リュテース賞2着)ラッキー・ルック Lucky Look の順。4着もハナ差の接戦で、勝馬と同じアガ・カーンの所有馬ダーバダール Darbadar が入っています。
アラン・ド・ロワイヤー=デュプレ厩舎、クリストフ・スミオン騎乗のヴァリラーンは、これでG戦連勝を含めて4連勝。デビュー戦の2着が唯一の敗戦と、ほぼパーフェクトな戦績となり、仏セントレジャーの中心になることは間違いなさそうです。但し、このクラスは接戦が続きます。

続いてダニエル・ウィルデンシュタイン賞 Prix Daniel Wildenstein (GⅡ、3歳上、1600メートル)。1頭取り消しても17頭立てと多頭数。難解なレース、1番人気(9対2)は英国のジョン・ゴスデン師が送り込んだグレゴリアン Gregorian 。前々走ハンガーフォード・ステークス(GⅡ)の勝馬で、前走もパーク・ステークス(GⅡ)3着と好調。

しかしグレゴリアン、レース半ばまでは快調に進んでいましたが、追い出してからは精彩を欠いて8着敗退。これもゴール前5頭が雪崩れ込む大接戦で、優勝は中団から追い込んだ12番人気(269対10)のポリアンナ Pollyana の大波乱でした。短首差でピントゥリッチオ Pinturicchio (23対1)が2着、短頭差3着はシエニカ Siyenica 。そのあとも短首、首差と、5頭がほぼ1馬身の中に納まってしまうほどの際どい勝負です。
ディディエ・プロドム厩舎、フラヴィアン・プラット騎乗のポリアンナは、前走パレ・ロワイアル賞(GⅢ)の3着馬ですが、4ヶ月の休養明けと言うことで人気の盲点になっていた4歳馬です。勝たれて見ればコース・スペシャリストで、ロンシャンではこれで7戦5勝、着外は初体験の5着一度だけと言う特別な存在でもありました。

三つ目はロワイアリュー賞 Prix de Royallieu (GⅡ、3歳上牝、2500メートル)。1頭取り消しの9頭立て。去年の凱旋門賞で5着に入り、今期は前走コリダ賞(GⅡ)5着のイエロー・アンド・グリーン Yellow and Green が14対5の1番人気。

ここでも本命馬は期待に応えられず、6着敗退。2頭出しで臨んだアガ・カーンの一角ミラ Mila が逃げ、寮友8番人気(12対1)のエビーザ Ebiyza が抜けると、2番人気(23対5)シャルネッタ Chalnetta との熾烈な叩き合いになります。最後は頭差でシャルネッタが先着しましたが、長い審議に。最終的には先着馬の進路妨害と判定され、1着はエビーザと発表され、シャルネッタは2着降着となりました。1馬身差でガルヴォーン Galvaun が3着。
勝ちを拾ったエビーザは、ショードネー賞に続いてアラン・ド・ロワイヤー=デュプレ厩舎、こちらは同じクリストフでもルメールが騎乗していました。同馬はレース前までは未勝利で、今回が初勝利であると同時にG戦初制覇。前走サン=クルーのリステッド戦(2400メートル)で3着していた3歳馬。ロック・オブ・ジブラルタール Rock of Gibraltar 産駒ながら2400メートルの距離、重馬場で能力を発揮するタイプでしょう。

土曜日最後のGⅡ戦は、ドラー賞 Prix Dollar (GⅡ、3歳上、1950メートル)。13頭と出走馬が揃い、今期は中々リズムに乗れないながら実績ではピカ一のシリュス・デ・ゼーグル Cirrus des Aigles が7対5の1番人気に支持されていました。日本から遠征したステラウインド(Stellar Wind)も武豊を背に注目されましたが、16対1の6番人気とまずまずの評価でしょう。

そのステラウインド、ダッシュ良く飛び出してハナを切りましたが、1ハロンほど走ったところでペリエ騎乗のプランテール Planteur が先頭を奪い、ステラウインドは中団に控えます。これも中団、6番手を進んだシリュス・デ・ゼーグル、漸く闘争心に火が点いたのか、直線で一気に抜け出すと、あとは鞍上クリストフ・スミオンが手綱を抑える余裕で圧勝。2着マンドゥール Mandour に1馬身4分の3差を付けていました。3着は更に4馬身差がついてプティ・シュヴァリエ Petit Chevalier 。ステラウインドは7着と、ほぼ人気通りの結果となりました。
お馴染みコリーヌ・バランド=バルブ夫人の調教するシリュス・デ・ゼーグル、今期は度々レポートしているように、去年第2位の実績が泣くような内容が続いていましたが、前走クープ・ド・メゾン=ラフィットで初勝利。今回は今年の憂さを晴らすような圧勝劇で、ドラー賞3回制覇の新記録樹立となりました。スミオン騎手は“その気になれば12馬身差で勝てたさ”と断言するほど。全盛期に戻った、と見て良いと思われます。コリーヌ夫人もチャンピオン・ステークス遠征を明言、オッズは4対1にまで上がりました。

以上が土曜日のロンシャンですが、スミオン騎手がG戦に2勝。彼に夢を託すオルフェーヴル陣営にとっても朗報でしょう。
もう一つ「朗報」と表現するのは憚られますが、日本でも報道されているように、凱旋門賞の有力候補だったノーヴェリスト Novellist の出走取り消しが発表されています。理由は発熱で、ドイツ勢は去年もデインドリーム Danedream がドイツに蔓延した伝染病で直前に回避しており、2年連続での不運に見舞われました。
ここまでの展開は全てがオルフェーヴル、いや日本馬が勝つべく進んでいるようで、逆に恐ろしいような気さえしてきました。シナリオ通り歴史が塗り替えられるのか、決戦はあと一日です。

序のような形になってしまいましたが、アスコット競馬場の3鞍も取り上げましょう。英国も馬場は重く、good to soft の公式発表。後に soft にまで悪化していたようです。
最初はコーンウォリス・ステークス Cornwallis S (GⅢ、2歳、5ハロン)。2頭の取り消しがあり、12頭立て。2歳の短距離戦ということで、クラシックより来年の短距離馬を探す一戦。サンダウンの5ハロン戦で新馬勝ちしたばかりのアウター・スペース Outer Space が2対1の1番人気に支持されていました。

そのアウター・スペースも人気に応えるべく好走しましたが、遥かに上回っていたのが、2番人気(9対2)だったホット・ストリーク Hot Streak の方。アウター・スペースに5馬身差を付ける大勝です。半馬身差でキックボクサー Kickboxer が3着。
ケヴィン・ライアン厩舎、ジェイミー・スペンサー騎乗のホット・ストリークは、デビューから2連勝したあとサイレニア・ステークス(GⅢ)5着、前走ミル・リーフ・ステークス(GⅡ)3着と着実に力を付けてきた馬。スペンサーはロンシャン騎乗の申し出を蹴っての騎乗で、判断の正しさを証明した形です。来週のミドル・パーク・ステークスにも登録があり、最後はオーナーの判断に委ねられましょう。

続いてカンパーランド・ロッジ・ステークス Cumberland Lodge S (GⅢ、3歳上、1マイル4ハロン)。ここは実力伯仲の7頭立てとなり、小頭数ながら人気の割れる一戦。1番人気は3対1で2頭が並び、1頭は去年のオーストラリア遠征でGⅢに勝ち、今年も豪州遠征から戻ったゲートウッド Gatewood 。そしてもう1頭が前走グッドウッドのハンデ戦を重い負担重量で制したゴスペール・コアー Gospel Choir 。

しかし結果は小波乱。これも2頭が分け合った微差2番人気(4対1)のワン・ツー・フィニッシュとなりました。しかも両馬ともゴドルフィン所有、サイード・ビン・スロール厩舎とあってダブルのワン・ツー・フィニッシュでもあります。勝馬はシルヴェストル・デ・スーザが騎乗したシークレット・ナンバー Secret Number 、2馬身半差2着はキーレン・ファロンが乗ったロイヤル・エンパイア Royal Empire 。更に2馬身半差でゲートウッドは3着、ゴスペル・コアーは5着敗退です。
3番手から抜けたシークレット・ナンバーは、出走馬中唯1頭クラシックに参戦した経歴があり、前走セントレジャーの6着馬。ここまで未勝利、初勝利にしてG戦初制覇とは言いながら、クラシック・レースの権威ここにあり、という結果です。因みにセントレジャーを制したリーディング・ライト Leading Light は明日の凱旋門賞にも出走する予定で、超穴馬的存在であることを忘れてはいけませんね。
スロール師によれば、重馬場がこの馬には適していたとのことで、今後は未定ながら冬はドバイで過ごすことになりそう。一方2着のロイヤル・エンパイアにはもっと大胆な計画があり、メルボルン・カップ遠征が視野とのこと。良馬場が合う同馬には、この時期のメルボルンが硬い馬場になる傾向であることを見越しての遠征となりそうです。

最後にベングー・ステークス Bengough S (GⅢ、3歳上、6ハロン)。シーズン末期の短距離戦らしく、18頭の多頭数。去年の2着馬で、英国に転じて長い豪州産馬ソウル Soul が4対1の1番人気。

しかしソウルは6着に終わり、優勝は6番人気(9対1)のトロピクス Tropics 。3馬身半差で4番人気(8対1)のミュージック・マスター Music Master が2着、更に1馬身4分の3差で2番人気(13対2)のフーフ・イット Hoof It 3着。
ディーン・アイヴォリー厩舎、ロバート・ウィンストン騎乗のトロピクスは、前々走ニューマーケットのリステッド戦に勝ち、前走エア・ゴールド・カップ(ハンデ戦)では26頭立ての23着と大敗していた5歳せん馬。これが6勝目と堅実に走るタイプで、G戦はもちろん初勝利となりました。

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください