未来のチャンピオン開催
今週の土曜日、英国はシーズン最後のニューマーケット開催を迎えました。ニューマーケットでは11月初めにファイナル・ミーティングもありますが、そこではG戦は行われません。
パターン・レースが組まれるものとしては最後の開催、その名もフュチャー・チャンピオンズ・デイ。G戦6鞍の内4鞍は2歳戦という、正に来年のチャンピオンを目指す馬たちの舞台でもあります。レース順に行きましょう。
最初はチャレンジ・ステークス Challenge S (GⅡ、3歳上、7ハロン)。この日の馬場は good to soft 、所により soft と重い状態で、これを嫌う馬の取り消しが目立ちました。
ここは人気になると思われたチーム・オブライエンのダーウィン Darwin が雨を理由に取り消して9頭立て。今期G戦に3勝、前走GⅠメイトロン・ステークス5着のフィエソラーナ Fiesolana が3対1の1番人気に支持されました。
アンスガー Ansgar の逃げから残り1ハロンで先頭に立ったフィエソラーナ、ドイツから遠征してきたアマリーロ Amarillo に2馬身差を付けて期待に応えています。更に2馬身半差でリブランノ Libranno が3着。
ウィリー・マクリーリー厩舎、ウイリアム・リー騎乗のフィエソラーナは、6月にレパーズタウンのバリーオーガン・ステークス、7月にはフェアリーハウスでブラウンスタウン・ステークス、8月にもティッペラリーでフェアリー・ブリッジ・ステークスを制していましたが、何れもGⅢ戦、GⅡ勝は今回が初めてとなります。
続く2レースは何れも2歳のGⅠ戦、6ハロンと7ハロンに未来のチャンピオンが集います。先に行われたのがミドル・パーク・ステークス Middle Park S (GⅠ、2歳、6ハロン)。3頭取り消しがあり10頭立て。前走ラウンド・タワー・ステークス(GⅢ)を含め2戦2勝、チーム・オブライエンのグレート・ホワイト・イーグル Great White Eagle が2対1の1番人気。同じくアイルランドから遠征してきたフェニックス・ステークス(GⅠ)勝馬のスディルマン Sudirman がこれを追って2番人気(4対1)、アイルランド色の濃いミドル・パークとなりました。
しかし今回ばかりはアイルランド勢に運が味方せず、グレート・ホワイト・イーグルは後方のまま8着、スディルマンも好位追走から伸びず5着と敗退してしまいます。
優勝は5番人気(8対1)アステア Astaire の逃げ切り勝ち。半馬身差で3番人気(5対1)のホット・ストリーク Hot Streak が2着に追い込みましたが、1・2着共にケヴィン・ライアン厩舎の管理馬で、波乱のワン・ツー・フィニッシュでした。更に1馬身半差でジャスティス・デイ Justice Day が3着、これも22対1(8番人気)という番狂わせです。
ニール・カランが勝馬に、ジェイミー・スペンサーは2着馬に騎乗したライアン陣営、師のレース後のコメントは、勝馬については来季、7ハロンから1マイルを狙い、2着馬はスプリントに向かう予定とのこと。勝馬には、2000ギニーは距離不安もあることから、33対1のオッズが出されています。陣営にとっては朗報ばかりではなく、カラン騎手にはムチの過剰使用により6日間の騎乗停止処分が課せられました。
アステアは、前走ジムクラック・ステークス(GⅡ)の勝馬。ジムクラック/ミドル・パークのダブルは、ライアン/カランのコンビにとっては2005年のアマデウス・ヴォルフ Amadeus Wolf 以来の2度目の快挙となります。2代母がチーヴリー・パーク・ステークスとマルセル・ブーサック賞に勝ったデッド・サーテン Dead Certain の半妹というファミリーでもあり、1マイルは何とか守備範囲に収まりそうな血統でしょう。
次いでデューハースト・ステークス Dewhurst S (GⅠ、2歳、7ハロン)。ここは取り消し馬は出ませんでしたが、当初から登録は6頭。前走カラー競馬場のフューチュリティー(GⅠ)を制したチーム・オブライエンのウォー・コマンド War Command が10対11の2倍を切る1番人気に支持されていましたが、唯一の敗戦(フェニックス・ステークスの3着)を喫した相手スディルマンがミドル・パークで凡走したという不安を孕んだのも事実でしょう。
本命のペースメーカーを務めるフレンドシップ Friendship が逃げ、2番手を進んだウォー・コマンドは最後の1ハロンで先頭。これに4番人気(20対1)ケーブル・ベイ Cable Bay が迫ってヒヤリとさせる瞬間もありましたが、何とか1馬身4分の1差を付けて優勝。1馬身半差3着には、2番人気(15対8)でシャンペン・ステークス(GⅡ)勝馬のアウトストリップ Outstrip が入りました。
勝馬を管理するエイダン・オブライエン師にとっては、2001年ロック・オブ・ジブラルタール Rock of Gibraltar 、2009年のベートーヴェン Beethoven に続き、これが3度目のデューハースト制覇。また騎乗したジョセフ・オブライエンは初勝利となります。ロイヤル・アスコットではコヴェントリー・ステークス(GⅡ)に勝ったウォー・コマンド、これで5戦4勝としてシーズンを終えるでしょう。ジョセフは“馬場を気にしていた。明らかにギニー・タイプで、馬場は固ければ固いほど良い。”という見解。2000ギニーのオッズは8対1に上がりました。
3代母グリ・ヴィテッス Gris Vitesse はジャック・ル・マロワ賞の勝馬、血統からもギニーの適性が証明されていると思います。
この日4つ目のG戦も2歳馬のためのもの、ロックフェル・ステークス Rockfel S (GⅡ、2歳牝、7ハロン)は牝馬版デューハーストと言えましょうか。1頭取り消して8頭立て。前走オー・ソー・シャープ・ステークス(GⅢ)2着で初黒星を喫したライトニング・サンダー Lightning Thunder が8対11の1番人気に支持されています。
レースはザワンダオブユー Thewandaofu の逃げ。ライトニング・サンダーは伸びず、替って後方から持ったまま先頭に立った2番人気(5対1)アル・サキーラ Al Thakhira の圧勝に終わりました。3馬身4分の1差が付いて2着には最低人気(33対1)のブロッケード Blockade が食い込み、4分の3馬身で3番人気(7対1)ヴァロニア Valonia が3着。ライトニング・サンダーは4着敗退。
マルコ・ボッティ厩舎、マーチン・ハーレー騎乗のアル・サキーラは、ヤーマス競馬場の新馬戦(6ハロン)にデビュー勝ちしたばかり。ボッティ師は距離が1ハロン伸びたことを心配していたそうですが、全く問題になりませんでした。1000ギニーは1マイルの距離に多少不安があるものの、14対1のオッズが出されています。オーナー・サイドはBC挑戦を希望しているそうですが、全てはその後の馬の状態を見てからとなるでしょう。
続いても2歳戦のオータム・ステークス Autumn S (GⅢ、2歳、1マイル)。ここも1頭が取り消して8頭立て。先週のニューマーケットで一般ステークス(7ハロン)に勝ったチーム・オブライエンのオクラホマ・シティ Oklahoma City が6対5の1番人気。
そのオクラホマ・シティがスタンド側の先頭に立って逃げ切りを図りましたが、後方に待機した3番人気(15対2)キングストン・ヒル Kingston Hill の鮮やかな差し切り勝ち。2馬身差でオクラホマ・シティが逃げ粘り、更に1馬身差で最低人気(16対1)のトラス・オア・デア Truth Or Dare が3着。
ロジャー・ヴァリアン厩舎、アンドレア・アトゼニ騎乗のキングストン・ヒルは、ニューバリーで7ハロンの新馬戦をデビュー勝ちしたばかり。出走馬中唯1頭の無敗記録を守り、ダービーに20対1のオッズが出されています。
最後はダーレー・ステークス Darley S (GⅢ、3歳上、1マイル1ハロン)。何と5頭が出走を回避しても13頭と多頭数。ハンデ戦ばかり3連勝中のショート・スクィーズ Short Squeeze という3歳馬が9対4の1番人気に支持されていました。
しかし結果はここも大波乱。スタンド側を先頭で走った11番人気(25対1)のハイランド・ナイト Highland Knight が逃げ切り、これをゴール前猛追した7番人気(16対1)テイルズ・オブ・グリム Tales of Grimm が際どい写真判定の結果短頭差で2着。1馬身差3着のチャプター・セヴン Chapter Seven も5番人気(14対1)という番狂わせに終わりました。人気のショート・スクィーズは5着。
アンドルー・ボールディング厩舎、デヴィッド・プロバート騎乗のハイランド・ナイトは、前走バースの条件ステークスでも5着と目立たなかった存在。ただ、その前はG戦に連続して挑戦し、それなりに走ってはいた6歳せん馬です。5月初旬にハックスレー・ステークス(GⅢ)で2着したあと夏場を休養に充て、8月中旬のソヴリン・ステークス(GⅢ、4着)から再始動したのが良かったとのこと。冬場はドバイ遠征で一旗揚げよう、というのが陣営の狙いのようです。
かなりの取り消しがあり、結果も荒れたニューマーケット。やはり馬場状態が大きく結果を左右したと見なければなりませんね。
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