ヴァリアン師にダービー候補
昨日の土曜日、遂にイギリスとアイルランドで平場シーズン最後のパターン・レースが行われました。当ヨーロッパ競馬ブログの対象はフランスを残すのみとなります。
さて英国最後のGⅠでもあるドンカスター競馬場からは、来年のダービーに強力な候補が誕生したというニュースから紹介して行きましょう。レーシング・ポスト・トロフィー Racing Post Trophy (GⅠ、2歳、1マイル)。
シーズン最後とあって馬場は soft 、重馬場の巧拙も重要なポイントになりそう。11頭が出走し、ここ2年連続でこのレースを制しているエイダン・オブライエン厩舎が3頭を送り込んできましたが、それらを抑えて7対2の1番人気に支持されたのは、2戦無敗のキングストン・ヒル Kingston Hill 。前走ニューマーケットでオータム・ステークス(GⅢ)を制した期待馬です。
レースはオブライエン軍団の1頭ブオナロッティ Buonarroti の逃げ、キングストン・ヒルは4~5番手のスタンド側で待機します。ジョセフ・オブライエンが選んだ1勝馬センチュリー Century (6対1、3番人気)が最後方で重馬場に喘ぐ中、気を見て仕掛けたキングストン・ヒルの末脚は抜群、一気に先頭に立つと、後方から追い込むもう1頭のオブライエン組ヨハン・シュトラウスの追い込みを4馬身半突き放して圧勝。見事1番人気に応えました。更に2馬身半差3着にはジョニー・ムルタの自己管理馬アルトライスティック Altruistic が食い込み、センチュリーは前の馬から32馬身も遅れて最下位入線です。
師匠マイケル・ジャーヴィスの引退を受け、2011年の4月にここドンカスターで初めて管理馬を出走させたロジャー・ヴァリアン師にとって、これが牡馬で制したGⅠ戦は初めてのこと。騎乗したアンドレア・アズテニは、この馬場で驚異の瞬発力を発揮したキングストン・ヒルを、“私が乗った最高の馬”と絶賛しています。オーナーのポール・スミス氏は、実はクールモアの主催者の一人であるデリック・スミス氏の子息。親子でのワン・ツー・フィニッシュでもありました。
5週間前にデビューしたばかり、前走ニューマーケットのGⅢを制した時点でレーシング・ポスト・トロフィー挑戦を決定し、1万7500ポンドの追加登録料を支払っての参戦、1着賞金15万ポンド弱を獲得したのですから、倍返しどころじゃありませんね。
先のG戦勝ちでダービーに20対1のオッズが出ていましたが、この日の圧勝を受けてスカイベット社はオッズを7対1に切り上げています。更に陣営がスピードも強調したことから、2000ギニーにも8対1のオッズが加えられました。
一方敗れたオブライエン陣営は悲観とは真逆の対応。ライアン・ムーア騎乗で2着に来たヨハン・シュトラウスにはダービー候補としての素質を見出しましたし、ペースメーカーとなったブオナロッティも最後まで優勝争いに加わっての5着。また陣営で最も期待していたセンチュリーは大惨敗でしたが、敗因は馬場状態にあることは明らか。ほとんど競馬をしていないので、この敗戦は無視しても良さそうです。
続いてニューバリー競馬場の2鞍、こちらも馬場は heavy という最も重い状態になっていました。
先ずはホーリス・ヒル・ステークス Horris Hill S (GⅢ、2歳、7ハロン)。11頭が出走し、5対2の1番人気に推されたのは、フランスからアンドレ・ファーブル厩舎がオリヴィエ・ペリエ騎乗で臨むガリウェイ Galiway 。サン=クルーの新馬戦(1600メートル、soft の馬場)を楽勝したばかりの新星です。
コーダイト Cordite の逃げを中団でマークしたガリウェイ、直線で抜けたものの、更に上回る脚で抜け出したのが2番人気(3対1)のパイピング・ロック Piping Rock 。ガリウェイに2馬身4分の3差を付けていました。更に4分の3馬身差でブービー人気(25対1)のデイ・オブ・コンケスト Day Of Conquest が3着。
勝馬を管理するリチャード・ハノン師は、このレース5勝目、3着馬も調教しています。騎乗したのはパット・ダブスで、騎乗停止中のヒューズ騎手からの乗り替わりでした。パイピング・ロックはアスコットでデビュー勝ちしたあと、前走ソールズベリーの一般ステークスにも勝ち、これで無傷の3連勝。2000ギニーに20対1のオッズが出されています。
英国最後のG戦は、セント・サイモン・ステークス St Simon S (GⅢ、3歳上、1マイル4ハロン5ヤード)。8頭立ての1番人気(7対4)は、前走アスコットのリステッド戦に勝った3歳馬のニコラス・キャニオン Nicholas Canyon 。
レースはゴドルフィンの2頭が引っ張り、マスターストローク Masterstroke の逃げ。2番手追走の3番人気(5対1)プリンス・ビショップ Prince Bishop が後退する中、2番人気(9対2)のキュバニータ Cubanita が抜け、中団から追い込むニコラス・キャニオンを1馬身4分の3差を押さえての優勝。5馬身の大差が付いてカクテル・クィーン Cocktail Queen が3着に入り、プリンス・ビショップは前の馬から56馬身も離される再開、不良馬場ならではの結果でしょう。
レイフ・ベケット厩舎、ジム・クロウリー騎乗のキュバニータは、前走チェスターのリステッド戦が2着。今期はG戦に2度使われて5着・3着、夏場の高速馬場を回避し、ここまで待っての今期初勝利となります。去年もシーズン末期にドンカスターのリステッド戦に勝った4歳馬。
最後はアイルランドの最終G戦。レパーズタウン競馬場で行われたキラヴュラン・ステークス Killavullan S (GⅢ、2歳、7ハロン)です。こちらも馬場は soft 。7頭が出走し、リストウェルの新馬戦(2着に16馬身)とカラーのリステッド戦に連勝したシャイニング・エメラルド Shining Emerald が4対5の1番人気。
しかし勝ったのは、2頭出しで臨んだオブライエン厩舎の一角クラフツマン Craftsman (7対1、3番人気)の逃げ切り勝ち。1馬身差の2着争いは、最後に追い上げたやはりオブライエンのミケルマス Michaelmas (3対1、2番人気)が短頭差で本命シャイニング・エメラルドを捉えてエイダン・オブライエン師のワン・ツー・フィニッシュに終わりました。人気上位3頭が1着から3着までを占めましたが、人気通りには収まらないという結果です。
クラフツマンは、2戦目でリストウェルで未勝利を脱し、前走ナースのナーサリー戦で3着。2頭のうちでは格下と思われていました。騎乗したのは、ドンカスター遠征中のジョセフに替ってマイケル・ハッセー君。今年1月にチームに加わった若手で、今回はボス(エイダン・オブライエン)の指示通り先頭に立ってのG戦初勝利です。
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