シーズン最後の2歳牝馬GⅠ戦

当ブログのアメリカ競馬レポートは、ブラッドホース社の電子版をベースにし、若干の知見を加味して更新しています。
ところで今週の初めにブラッドホースの紙面が刷新され、今回が変更後最初のレポートとなります。未だ慣れないこともあって、馬場状態についての公式発表を見つけられません。これまでと違い、分かった範囲での報告となることをお断りしておきます。

さて今週はフロリダとカリフォルニアからのレポート、先にフロリダはカルダー競馬場の3鞍から行きましょうか。最初はトロピカル・ターフ・ハンデキャップ Tropical Turf H (芝GⅢ、3歳上、9ハロン)。当初12頭の登録がありましたが、次のレースと掛け持ちしていた2頭の他に1頭が取り消して9頭立て。前走ニッカーボッカー・ステークス(芝GⅢ)で4着したテトラドラム Tetradrachm が2対1の1番人気に支持されていました。ニッカーボッカーを制したザー・アプルーヴァル Za Approval がBCマイルで2着したことから、同馬にも期待が掛かったのでしょう。馬場状態は good だったようです。
レースはハイコー Heiko が逃げ、これを2番人気(5対2)のバッド・デット Bad Debt が突く展開。テトラドラムは3番手に付け、直線では内ラチ沿いに進路を取って追い上げます。しかし4番手でマークしていた3番人気(9対2)のスピーキング・オブ・ウイッチ Speaking of Which が先行2頭の外に回すと、鋭く伸びて内から来るテトラドラムを1馬身抑えての優勝。4分の3馬身差でバッド・デットが3着に入り、ほぼ人気通りで決着しました。
クリストフ・クレメント厩舎、ジョー・ブラーヴォ騎乗のスピーキング・オブ・ウイッチは、去年までアイルランドでデルモット・ウェルド師が管理していた4歳馬。アイルランドではガリニュール・ステークス(GⅢ)に勝っており、去年11月に渡米。アメリカ初戦のトゥワイライト・ダービー(芝GⅡ)でいきなり2着し、今年6月にモンマス芝コースのアローワンス戦でアメリカ初勝利。そのあとマン・ノウォー・ステークスでGⅠに挑戦するも着外、4ヶ月休養して臨んだ前走アケダクトの芝一般ステークス5着を叩かれ、今回がアメリカでのG戦初勝利。ヨーロッパとアメリカでG戦勝馬のタイトルを獲得したことになります。

カルダーの二つ目は、ダート・コースのフレッド・W・フーパー・ハンデキャップ Fred W. Fooper H (GⅢ、3歳上、9ハロン)。一つ前のトロピカル・ターフと二重に登録していた2頭がこちらに回り、10頭立て。馬場は fast だったようです。実は掛け持ちだった2頭は、去年のこのレースで1着同着だったライヴァルで、その1頭で実績上位のツァバ Csaba がイーヴンの1番人気。もう1頭のドゥクドゥク Ducduc は34対1と、6番人気に過ぎません。
アイム・ステッピン・イット・アップ I’m Steppin’ It Up が逃げ、ツァバは4番手追走。直線では馬3頭分の外から末脚を伸ばし、早目に内から先頭に立った3番人気(9対2)のヴァリッド Valid を1馬身4分の1差し切って期待に応え、このレース2連覇を達成しました。更に4分の3馬身差でオン・ザ・ルース・アゲン On the Loose Again が3着に入り、去年は後方一気で勝馬と並んだドゥクドゥクは、今回は後方のまま最下位敗退です。
フィリップ・グリーヴス厩舎、ルイス・サエズ騎乗は去年と同じコンビ。勝馬はカルダーに滅法強く、ここでは11戦9勝の好成績。前走もここカルダーのアローワンス戦で、2着に7馬身差以上の楽勝を演じたばかりでした。今年5月にも一般ステークスに勝っており、去年のトロピカル・パーク・ダービーなど、カルダー競馬場では5つ目のステークス勝利となります。

最後はマイ・チャーマー・ハンデキャップ My Charmer H (芝GⅢ、3歳上牝、9ハロン)。オーバーフローの16頭の登録がありましたが、最終的には5頭の取り消しがあって11頭立て。予備登録に甘んじていた2頭も滑り込むメンバーとなりました。5対2の1番人気に支持されたのは、去年のこのレースの2着馬で、やはり去年芝コースのGⅢ(ノーブル・ダムゼル・ステークス)に勝っているネイプルズ・ベイ Naples Bay 。去年の雪辱に期待が掛かったのでしょう。
レースはローズ・トゥー・ゴールド Rose to Gold が逃げ、ネイプルズ・ベイは控えて前半は後方3番手。3番手を追走していた伏兵(42対1、9番人気)ヴァリアント・ガール Valiant Girl が直線で内ラチ沿いギリギリを衝いて進出、2番手から抜けた2番人気(7対2)アンジェリカ・ザパタ Angelica Zapata を半馬身差し切っての大波乱。首差で3番人気(5対1)のストラスネイヴァー Strathnaver が続き、ネイプルズ・ベイはインコースを衝いたものの7着敗退に終わりました。
グレアム・モーション厩舎、マシュー・リスポリ騎乗のヴァリアント・ガールは、去年まで英国でロジャー・チャールトン厩舎に所属していた馬。イギリスでは5戦1勝の成績を残して今年からモーション厩舎に転じ、アメリカでは9戦3勝。8月にモンマスの芝コースで一般ステークス(オムニバス・ステークス)に勝ちましたが、続くフラワー・ボウル・インヴィテーショナル(芝GⅠ)ではさすがに荷が重く、8頭立てのドン尻負け。前走キーンランドの芝一般ステークスでも7着と奮わず、ここでは人気を落としていました。騎乗したリスポリ、ウンベルトと親戚関係があるかは不明ですが、これがG戦初勝利。前走フーパー・ハンデでもヴァリッドで2着していた若手です。

続いてハリウッド・パーク競馬場に移りましょう。このコースも残り僅かとなってきました。今年第32回を以て歴史を閉じるハリウッド・スターレット・ステークス Hollywood Starlet S (GⅠ、2歳牝、8.5ハロン)は、全米シーズン最後の2歳牝馬GⅠ戦。8鞍あるGⅠはここまで全て勝馬が異なる混戦で、ここにもGⅠ馬は出走してきませんでした。BCジュヴェナイル・フィリーズ出走組からは3頭が参戦し、最も成績が良かった3着馬ロザリンド Rosalind が8対5の1番人気。彼女は同じGⅠのアルシバイアディーズでも2着しており、GⅠに最も近い存在であることは間違いないでしょう。
レースは1戦1勝で2番人気(5対2)のテイスト・ライク・キャンディー Taste Like Candy が逃げ、大外枠発走のロザリンドは後方2番手のやや苦しい展開。逃げ馬を2番手で追走していた5番人気(10対1)のストリーミング Streaming が遂には交わし、そのままテイスト・ライク・キャンディーを1馬身半差突き放しての逆転劇。1馬身4分の1差3着にBC8着だったアンタパブル Untapable が入り、ロザリンドも大外から脚を伸ばしましたが4着まで。
ボブ・バファート厩舎、マーチン・ガルシア騎乗のストリーミングは、2着馬と同様に新馬戦に勝ったばかり。同じハリウッドで新馬→GⅠと大飛躍を遂げましたが、3代母がケンタッキー・オークス馬ブラッシュ・ウィズ・ブライド Blush With Bride 、母の兄弟には2頭のクラシック馬(ベルモント・ステークスのジャジル Jazil と、やはりベルモントとケンタッキー・オークスを制したラグス・トゥー・リッチズ Rags to Riches)の他に、彼のカジノドライヴもいるというエリート中のエリート。勝ってみれば当然の良血馬でした。バファート師はこのレース、1998年のエクサレント・ミーティング Excellent Meeting 、2001年のハビブティ Habibti に続く3勝目で、最後の勝利調教師でもあります。ガルシア騎手は初勝利。

この日最後のレポートは、バヤコア・ハンデキャップ Bayakoa H (GⅡ、3歳上牝、8.5ハロン)。1頭が取り消して9頭が出走し、今年G戦に3勝しているフィフティーシェイズオブヘイ Fiftyshadesofhay がイーヴンの1番人気。
ところがフィフティーシェイズオブヘイはスタートを失敗し、クラブハウス・ターンでも前から被せられる不利があって後方2番手からの苦しい展開。本命馬の苦戦にも恵まれ、楽な逃げとなった3番人気(7対1)のブロークン・ソード Broken Sword が後続を5馬身引き離し、そのままリードを保っての逃げ切り勝ち。フィフティーシェイズオブヘイは懸命に順位を挙げ、逃げ馬を追いましたが、最後は4馬身4分の1差届かず2着まで。不利が無ければ勝てたかは判らないほどの勝馬の圧勝でした。更に5馬身半の大差が付いてウォーレンズ・ヴェネダWarren’s Veneda が3着。
ジェリー・ホーレンドルファー厩舎、同馬に初めて跨ったジョエル・ロザリオ騎乗のブロークン・ソードは、G戦初挑戦での初勝利。去年のデビュー戦がいきなりステークスでの優勝で、前走ゴールデン・フィールズのタペタ・コースでクレーミング戦に勝ったのが2勝目。連勝でホーレンドルファー師にバヤコア・ステークス3勝目を齎しました。師はここ4年でこのレース3勝、2010年のワシントン・ブリッジ Washington Bridge 、去年のレディー・オブ・フィフティー Lady of Fifty と、いずれも師を含むオーナー・グループの持ち馬での3勝です。

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