日本フィル・第293回横浜定期演奏会

昨日は今年最後の日フィル横浜定期。風が強く気温以上に体感温度が寒く感じられる中、みなとみらいホールに出掛けました。桜木町界隈は、クリスマスの飾り付けで大賑わい。
12月定期は「第9」と相場が決まっている横浜、翌日行われる二日目共々完売となった公演。私にとってもこれが今年最後のコンサートで、当ブログの演奏会カテゴリーも最後の更新となります。

ワーグナー/ジークフリート牧歌
     ~休憩~
ベートーヴェン/交響曲第9番ニ短調「合唱付き」
 指揮/広上淳一
 ソプラノ/佐藤亜希子
 アルト/金子美香
 テノール/錦織健
 バリトン/ベンノ・ショルム
 合唱/東京音楽大学
 コンサートマスター/扇谷泰朋
 ソロ・チェロ/菊地知也

一昨年に続いて広上の第9を横浜で聴くのは二度目、男声陣もその時と同じですから、感想はごく簡単に。

アルトの金子美香は2010年に同じ日フィルの第9(インキネン指揮)で聴きましたが、ソプラノの佐藤亜希子は私は初めて聴く人。藤原歌劇団に所属し、背の高い美人。今年9月には藤原の椿姫でヴィオレッタに抜擢された由で、張りのある声、今後更なる活躍が期待されるソプラノです。声もそうですが、奇抜な衣裳が目を惹きましたね。

個人的なことを言えば、今年は出会いよりも別れが多かった一年。去年は客席で共に第9を聴いた友人や、舞台に乗っていた知人楽員の姿も無く、どことなく寂しさの同居した第9でした。
今年数多く接してきた広上マエストロのベートーヴェンも、これが締め。いつも以上にアンダンテ・マエストーソの深い音楽が胸を打って感動的に響きます。

前半は、今年生誕200年を迎えたこともあってかワーグナーの私的な一品。広上のワーグナーはあまり聴く機会に恵まれませんが、ジークフリート牧歌は確か首席に就任する前の京都で、今年は仙台フィルの定期でも取り上げたはず。東京では初めてと思われ、私も初体験でした。
中間部というか、3拍子に代わる個所で若干テンポを速める演奏は、改めてこの作品が三部形式で構成されているのでは、と考えた次第。もちろん初演時の13人(15人という説も)ではなく、弦楽器を12型に膨らませての演奏。しっとりとした雰囲気が、後半の大曲と好対照を成す選曲でもありましょう。
ジークフリート牧歌は愛妻コジマの誕生日、即ち1870年の12月25日(キリストと同じ)に初演された作品で、時期的にも相応しいでしょう。

更に言えば、ワーグナーにとってベートーヴェンの第9は因縁浅からぬ大曲。実際に演奏を聴いていなかった当時にスコアを写譜し、ピアノ版に編曲したこともありましたね。(これは小川典子が録音していました)
指揮者としても伝説に残る解釈を試みたことでも知られ、バイロイト音楽祭で演奏されることもしばしば(フルトヴェングラーの有名な録音)。転じて第9を祝祭の機会に演奏する習慣が生まれ、日本に渡っては年末に第9の風物詩となったのも、ワーグナーという存在があったからこそでしょう。第9の前にワーグナーの管弦楽作品というのは、真に時宜を得たプログラムと気付きました。

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