オークスへ、ダービーへ

2月22日、2月最後のアメリカ競馬G戦デイは、3つの競馬場で合計8鞍のG戦が行われています。

先ずは先週雪で順延されたローレル・パーク競馬場のバーバラ・フリッチー・ハンデキャップ Barbara Fritchie H (GⅡ、3歳上牝、7ハロン)から。先週は10頭が出走する予定でしたが、登録も枠順も全てやり直しとなりました。
先週もレポートしたように、フィラデルフィア(パークス・レーシング)で馬ヘルペスが流行しているため、当初登録のあったフィラデルフィア本拠の2頭は遠征許可が下りず、別の2頭もローテーションを変更して今回は登録せず。逆に新たな1頭が参戦を表明し、最終的には7頭で行われました。人気は割れましたが、結局は前走ガルフストリームの一般ステークスに勝ったセントリック Centrique が9対5の1番人気。馬場は fast 。
レースは3番人気(5対2)のマイ・ワンディーズ・ガール My Wandy’s Girl がハナに立ちましたが、直ぐに2番人気(2対1)のラ・ヴェルダ La Verdad が先頭を奪ってマイ・ワンディーズ・ガールは2番手に控える展開。直線、マイ・ワンディーズ・ガールが外からラ・ヴェルダを1馬身捉えて優勝、本命セントリックは3番手追走も首差届かず3着まで。前に行った人気3頭による決着となりました。
マイケル・ハッション厩舎、ラジーヴ・マラー騎乗のマイ・ワンディーズ・ガールは、去年のこのレースの2着馬。3歳後半まではプエルト・リコで走り、現地のGⅠ戦に2勝している5歳馬。3歳時にガゼル・ステークス(GⅠ)3着、去年はバーバラ・フリッチーの他にラフィアン・ステークス(GⅡ)でも2着していました。アメリカではこれが2勝目、もちろん北米のG戦は初制覇です。

続いてフロリダのガルフストリーム・パーク競馬場、クラシックのトライアルを含めてG戦は3鞍です。最初は牝馬のクラシック戦線ダヴォナ・デール・ステークス Davona Dale S (GⅡ、3歳牝、8.5ハロン)。8頭が出走し、トッド・プレッチャー厩舎の2頭が中心と見做されていました。中でも3戦無敗、前走フォワード・ギャル・ステークス(GⅡ)を逃げ切ったオンリーフォーユー Onlyforyou がイーヴンの1番人気。二つのコーナーを回る距離には初挑戦ですが、ここを克服してオークスを目指したいところ。馬場は fast 。
ゲートでイラつく素振りのあったオンリーフォーユーでしたが、巧くスタートして何時もの様にハナに立ちます。2番手を進んだオーレリアズ・ベル Aurelia’s Belle に競り掛けられるシーンもありましたが動ぜず、3番手追走から追い込むハウス・ルールズ House Rules を2馬身4分の1差寄せ付けず期待に応えました。更に半馬身差でオーレリアズ・ベルが3着、4着以下は11馬身以上の大差。プレッチャー厩舎の2番手で2番人気(3対1)のストップチャージングマリア Stopchargingmaria は不可解な5着凡走です。
このレース4勝目となるトッド・プレッチャー厩舎、この日5勝目となる絶好調ハヴィエル・カステラノ騎乗のオンリーフォーユーは、去年の11月とデビューが遅かった馬。これで無敗記録を「4」に伸ばし、クラシックに向けて視界良好と言ったところでしょう。

ガルフストリームの二つ目は、古馬による芝コースのマイル戦カナディアン・ターフ・ステークス Canadian Turf S (芝GⅢ、4歳上、8ハロン)。firm の馬場、1頭が取り消して11頭立て。ガルフストリームの芝コースではパーム・ビーチ・ステークス(芝GⅢ)を含めて2戦2勝のライディリュック Rydilluc が7対2の1番人気に支持されていました。
レースは4番人気(5対1)のミスター・オンライン Mr. Online が逃げ、ライディリュックは2番手でこれをピタリとマーク。直線に入って先頭に立つかと思いきや、意外に伸びず一杯。替って内ラチ沿いをスルスルと抜け出してきたのが、前半3番手に控えていた2番人気(9対2)のリロード Reload 。ゴール直前で粘るミスター・オンラインを首差捉えての優勝です。1馬身4分の3差3着には中団から伸びたサルト Salto が入り、ライディリュックは5着に沈みました。
クロード・マゴーヒー厩舎、又してもハヴィエル・カステラノが勝利に導いたリロードは、前走のアローワンス戦は芝コース初体験での勝利、これがG戦初勝利で、通算成績は17戦5勝となります。

最後は牡馬のクラシック戦線に繋がるファウンテン・オブ・ユース・ステークス Fountain of Youth S (GⅡ、3歳、8.5ハロン)。去年の勝馬オーブ Orb がケンタッキー・ダービーを制したこともあり、注目の一戦です。1頭取り消して12頭立て、オーブを管理したマゴーヒー師が送るトップ・ビリング Top Billing が2対1の1番人気。1月25日のアローワンス戦を勝っただけですが、最後方からのごぼう抜き圧勝と、厩舎人気もあったのでしょう。
レースはスタートから4番人気(9対2)ワイルドキャット・レッド Wildcat Red と2番人気(3対1)ジェネラル・ア・ロッド General a Rod の激しい先頭争い、2頭が後続を大きく引き離してのマッチレースの様相を呈しました。しかし両馬の争いは最後まで続き、終始リードを守っていた内のワイルドキャット・レッドが、外のジェネラル・ア・ロッドを頭差凌いでの優勝。トップ・ビリングも後半良く伸びて前に迫りましたが、2馬身及ばず3着。2着馬で惜敗したジェネラル・ア・ロットはカステラノ騎乗、一日7勝目は成りませんでした。
ホセ・ガロファッロ厩舎、ルイス・サエズ騎乗のワイルドキャット・レッドは、既に2月初めにGⅢのハッチェソン・ステークスを制していた馬。これで6戦4勝、この競り合いを我慢して距離も克服したことから、オーブに続きダービー制覇の可能性も出てきました。50ポイントを獲得し、次走はフロリダ・ダービー(GⅠ)になるでしょう。ところで競り合った2頭は、お正月のガルフストリーム・パーク・ダービー(一般ステークス)でも競り合い、その時はジェネラル・ア・ロッドに軍配が挙がっていたライヴァルでもあります。

一日4鞍のG戦が組まれていたのがフェア・グラウンズ競馬場。最初は牝馬クラシックに繋がるレーチェル・アレキサンドラ・ステークス Rachel Alexandrs S (GⅢ、3歳牝、8.5ハロン)、4着までにケンタッキー・オークス出走権50-20-10-5ポイントが加算される一戦です。出走馬も豪華メンバーが揃い、ハリウッド・スターレット(GⅠ)勝馬のストリーミング Streaming が3対2の1番人気、BCジュヴェナイル・フィリーズの覇者リア・アントニア Ria Antonia が2対1の2番人気で続き、両GⅠ馬の一騎打ちと思われました。馬場は fast 。
本命ストリーミングが逃げ、リア・アントニアは後方2番手から。しかしストリーミングは伏兵(85対1)アーミー Army に絡まれて後退。リア・アントニアも鞍上の懸命な左ムチにも反応無く、3~4番手を進んだ4番人気(4対1)のアンタパブル Untapable が先頭に立つと、後は後続を一方的に引き離す圧勝。2着3番人気(3対1)ゴット・ラッキー Got Lucky に9馬身半の大差を付けていました。首差でシャノン・ニコール Shanon Nicole (11対1、5番人気)が3着に入り、ストリーミングはドン尻7着、リア・アントニアも4着に敗れる波乱。
スティーヴン・アスムッセン厩舎、ロージー・ナプラヴニク騎乗のアンタパブルは、2歳時にポカハンタス・ステークス(GⅢ)に勝っていた馬で、BCジュヴェナイル・フィリーズは8着と大敗したものの、ハリウッド・スターレットは3着と名誉を挽回していた存在。父が今年絶好調のタピット Tapit であることも忘れてはなりません。これで5戦3勝3着1回、この後はフェア・グラウンズ・オークスに向かうのが自然なローテーションでしょう。フェア・グラウンズ・オークスはここ9年の勝馬の内、5頭がケンタッキー・オーク馬になっている重要な一戦。GⅠ馬の巻き返しも含めて大注目のレースになるでしょう。

二つ目はフェア・グラウンズ・ハンデキャップ Fair Grounds H (芝GⅢ、4歳上、9ハロン)。馬場はやや渋って good の発表、2頭が取り消して7頭立てで行われました。ステークス3連勝を目指すダディー・ノーズ・ベスト Daddy Nose Best が6対5の1番人気。
レースは5番人気(14対1)のスカイリング Skyring が逃げましたが、向正面で2番人気(9対5)のジェントルマンズ・キッテン Gentleman’s Kitten がスパート、スカイリングに7馬身もの差を付けて大逃げを打ちます。3番手以降も大きく離れる珍しい展開となりましたが、流石にジェントルマンズ・キッテンは急速にバテて後退、前半は後方2番手の位置に付けていたスカイリングと同じ5番人気(14対1)のポトマック・リヴァー Potomac River が大外から一気に追い上げ、鞍上が直線でムチを落としながらもゴール寸前でスカイリングをハナ差で差し切っていました。1馬身差3着に4番手を進んでいた本命だディー・ノーズ・ベストの順。
ホセ・カメーヨ厩舎、フアン・ヴァルガス騎乗のポトマック・リヴァーは、去年11月末のリヴァー・シティー・ハンデ(芝GⅢ)でも45対1で大穴を開けていた5歳馬。当時はセルジオ・パエス厩舎に所属していましたが、今年は新たな環境に転じてのG戦2勝目となりました。

次のリズン・スター・ステークス Risen Star S (GⅡ、3歳、8.5ハロン)は、ダービーへのトライアルでもちろんポイント対象。勝馬から4着まで夫々50-20-10-5ポイントが加算されます。登録は出走制限を上回る16。制限内の1頭が取り消し、1頭が選に漏れてのフル・ゲート14頭立て。先月のルコント・ステークス(GⅢ)を圧勝したヴィカーズ・イン・トラブル Vicar’s in Trouble が2対1の1番人気に支持されています。
レースは1番枠スタートのアルバーノ Albano が先頭に立ってあわやの逃げ切り勝ちと見えた時、前半6~7番手に待機していた4番人気(5対1)のインテンス・ホリデー Intense Holiday が大外から抜け出し、ゴール直前でアルバーノをハナ差捉えての鮮やかな差し切り勝ち。ヴィカーズ・イン・トラブルも中団から早目に2番手に上がりましたが、5馬身半引き離されての3着に終わっています。
トッド・プレッチャー厩舎、名手マイク・スミス騎乗のインテンス・ホリデーは、念願のG戦初勝利。8月のモンマスで未勝利戦に勝って以来2勝目ですが、前走ホーリー・ブル・ステークス(GⅡ)3着を含めてG戦では何度も入着してきた馬。今回の50ポイントを加算して合計53ポイントは、一気にダービー候補のトップに立つ快挙。ポイント・システムの良さであり、怖さでもありましょう。

そして最後にマインシャフト・ハンデキャップ Mineshaft H (GⅢ、4歳上、8.5ハロン)。9頭が出走し、G戦4勝のプレイヤー・フォー・リリーフ Prayer for Relief が2対1の1番人気。6歳馬ながら、3歳時にはウエスト・ヴァージニア・ダービー(GⅡ)、スーパー・ダービー(GⅡ)、アイオワ・ダービー(GⅢ)と三つのダービーを制した実力馬です。
レースは2番人気(4対1)グランド・コンテンダー Grand Contender が逃げ、プレイヤー・フォー・リリーフは4番手追走。しかし直線で伸びたのは3番手に付けていた5番人気(6対1)の伏兵ブラデスター Bradester で、2着グラウンド・トランスポート Ground Transport に1馬身4分の1差を付けていました。更に1馬身4分の3差でフォーデュパイ Fordubai が3着。プレイヤー・フォー・リリーフは6着敗退です。
エディー・ケナリー厩舎のブラデスターは、これがステークス初勝利。前走アローワンス戦に続く連勝ですが、ステークス出走は去年10月のインディアナ・ダービー(GⅡ)2着以来2度目でした。騎乗したロージー・ナプラヴニクは、レーチェル・アレキサンドラに続きこの日G戦2勝目。

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