3強対決のパシフィック・クラシック

8月20日のアメリカ競馬は、G戦の数こそ少ないながらもアメリカを代表する名馬たちが登場、あるいは対決して大いに盛り上がりました。G戦が行われた三つの競馬場から順次レポートして行きましょう。

先ずはニューヨークのサラトガ競馬場から二鞍。最初は8月13日に行われる予定だったものが大雨によって順延されたフォースターデイヴ・ステークス Fourstardave S (芝GⅠ、3歳上、8ハロン)。今年からハンデ戦だったものがステークスに替り、更に今年からGⅠに格上げとなった一戦。13日の段階では10頭が登録していましたが、順延に伴って1頭が回避し、更に当日にも3頭の取り消しが出て6頭立て。フランク・E・キルロー(芝GⅠ)に勝ったリング・ウィークエンド Ring Weekend が5対2の1番人気。
レースは6番人気(8対1)のキング・クリーサ King Kreesa が逃げ、2番手を追走した2番人気(5対2)のトゥーリスト Tourist が第4コーナー手前でこれを捉えると、最後方から追い込む5番人気(5対1)のア・ロット A Lot に1馬身4分の1差を付けて優勝。3番手を進んだ去年の勝馬で4番人気(9対2)のグランド・アーチ Grand Arch が3着に入り、リング・ウィークエンドは後方2番手から末脚に賭けましたが不発、最下位に終わりました。2着入線のハヴィエル・カステラノ騎手からスタートに付いてロザリオ騎手に異議申し立てがありましたが、審議の結果着順通りで確定しています。
これがこのレース4勝目となるウイリアム・モット厩舎、ジョエル・ロザリオ騎乗のトゥーリストは、6月4日の前走サンタ・アニタ競馬場でシューメーカー・マイル(芝GⅠ)で2着していた5歳牡馬。他に3歳時にセクレタリアート・ステークス(芝GⅠ)、4歳時のシャドウェル・ターフ・マイル(芝GⅠ)3着があり、念願のGⅠ戦初勝利です。

続いては、当初から土曜日に組まれていたアラバマ・ステークス Alabama S (GⅠ、3歳牝、10ハロン)。fast の馬場に7頭が出走し、3歳牝馬チャンピオンへの道を突っ走るソングバード Songbird が1対5の圧倒的1番人気。
スタートから飛ばした2番人気(7対1)のゴー・マギー・ゴー Go Maggie Go と、これを楽には逃げさせないソングバードとが終始ハナを争う展開となりましたが、第4コーナー手前で外からゴー・マギー・ゴーを捉えた大本命、直線では後続を引き離す一方のレース運びで、後方2番手から追い込む4番人気(12対1)のゴーイング・フォー・ブローク Going for Broke に7馬身の大差を付けるオッズ通りの大楽勝を演じました。1馬身4分の3差で4番手から伸びた3番人気(11対1)のファミリー・トゥリー Family Tree が3着。
ジェリー・ホーレンドルファー厩舎、マイク・スミス騎乗のソングバードは、これで無敵の10戦10勝。10ハロンは初体験の距離でしたが全く問題にはならず、GⅠ戦7勝目となりました。彼女の次走はパークス・レーシングで9月24日に行われるコーティリオン・ステークス(GⅠ)になる予定です。

次はモンマス・パーク競馬場のモンマス・オークス Monmouth Oaks (GⅢ、3歳牝、8.5ハロン)。こちらも馬場は fast で、1頭が取り消して6頭立て。今年5月のデビューから2連勝中のテジャーナ Tejana が8対5の1番人気。ステークスもG戦も初挑戦です。
そのテジャーナがスタートからハナに立ってレースを引っ張りましたが、2番手に上がって本命馬をマークしていた3番人気(2対1)のアンブライドルド・モー Unbridled Mo が直線で追い上げ、同じく4番手から伸びた2番人気(9対5)のモー・ダムール Mo d’Amour との3頭が並ぶ叩き合い。結局真ん中を通ったアンブライドルド・モーが、内を通るテジャーナを首差捉えて優勝。外のモー・ダムールは4分の3差及ばず3着でした。向正面で結果6着となったモー・グリーン Mo’ Green に騎乗していたアントニオ・ガラード騎手が進路妨害でモー・ダムールのフアレズ騎手に対して異議を申し立てましたが却下、着順通りで確定しました。
トッド・プレッチャー厩舎、パコ・ロペス騎乗のアンブライドルド・モーは、3戦目で初勝利を挙げてから3連勝。ステークスもG戦も初挑戦での快挙です。

最後はデル・マー競馬場の3鞍。先ず firm の芝コースで行われたデル・マー・オークス Del Mar Oaks (芝GⅠ、3歳牝、9ハロン)は、1頭が取り消して10頭立て。サン・クレメンテ・ハンデ(芝GⅡ)に勝っているモカット Mokat が3対1の1番人気。
レースは7番人気(13対1)のレディー・ヴァロー Lady Valeur の逃げで始まりましたが、2番手に付けていた4番人気(5対1)のステイズ・イン・ヴェガス Stays in Vegas がこれを交わし先頭で直線。一旦は安全圏に入ったかに見えましたが、前半7番手辺りに待機していた2番人気(7対2)のハーモナイズ Harmonize が外から追い込み、最後方から連れて追い上げた5番人気(9対1)のデックド・アウト Decked Out を頭差抑えての鮮やかな差し切り勝ち。ステイズ・イン・ヴェガスもハナ差で3着に粘り込む大接戦でした。
ウイリアム・モット厩舎、何とこれがデル・マー初体験というジュニア・アルヴァラード騎乗のハーモナイズは、2歳時にキーンランドのジャスミン・ステークス(芝GⅢ)をトラック・レコードで制していた馬。今期はエッジウッド・ステークス(芝GⅢ)3着があり、GⅠ戦は初勝利となります。

続いては日本中央競馬界がスポンサーとなっているデル・マー・ハンデキャップ Del Mar H (芝GⅡ、3歳上、11ハロン)。勝馬にはBCターフへの優先出走権が与えられます。12頭が出走してきましたが、7月17日のエディー・リード・ステークス(芝GⅡ)で大接戦を演じた3頭が再び顔を合わせ、その時2着だったアシュレイラヴズシュガー Ashleyluvssugar が5対2の1番人気。
長丁場とあってペースはゆったり。最初の正面スタンド前で先頭に立ったアシュレイラヴズシュガーがそのまま後続を引き離して逃げ、最後はスパートから懸命に粘るところ、2番人気(7対2)のメタボス Metaboss が後方2番手から猛追。写真判定となりましたが、本命馬がメタボスを辛うじてハナ差抑えて人気に応えています。1馬身差で10番人気(40対1)のテキサス・ライアノ Texas Ryano が4番手から伸びて3着。
ピーター・ユールトン厩舎、ゲーリー・スティーヴンス騎乗のアシュレイラヴズシュガーは、去年のチャールズ・ウィッティンガム・ステークス(芝GⅡ)とサン・ルイ・レイ・ステークス(芝GⅡ)に続く三つ目のG戦勝で、今期は3戦目での初勝利となる5歳牡馬です。もちろん権利を得たBCターフに向かうことになるでしょう。

最後は注目のパシフィック・クラシック Pacific Classic (GⅠ、3歳上、10ハロン)です。こちらも勝馬にはBCクラシックへの優先出走権が付与されるとあって9頭が参戦。しかし話題は3強対決で、去年牡馬を蹴散らして快勝したGⅠ戦10勝の怪物6歳牝馬のビホールダー Beholder 、一昨年の二冠馬でGⅠ戦5勝の5歳馬カリフォルニア・クローム California Chrome 、去年の3着馬でサンタ・アニタ・ダービーを制している4歳馬ドルトムント Dortmund の頂上決戦。人気はカリフォルニア・クロームがイーヴンの1番人気で、ドルトムントが2対1で2番人気、ビホールダーは3対1の3番人気で続きます。他の6頭にもG戦勝馬が揃っていましたが、殆ど無視されている状況。
レースも話題の3頭がスタートからゴールまで独占する形で、カリフォルニア・クロームがハナに立ち、これをビホールダー、ドルトムントの順に追走。最後まで順位は変わりませんでしたが、着差はカリフォルニア・クロームがビホールダーに5馬身差を付ける圧勝。ドルトムントは2馬身4分の1差の3着に終わり、ビホールダーの2連覇は成らず。カリフォルニア・クロームはこの相手でもほとんど持ったまま、キャンターに近い走りでそのチャンピオン振りを証明して見せました。
アート・シャーマン厩舎、ヴィクター・エスピノザ騎乗のカリフォルニア・クロームは、今期これで無傷の5連勝。サン・パスカル(GⅡ)から始動し、ドバイでワールド・カップ(GⅠ)を含めて2勝、帰国してからも前走サン・ディエゴ・ハンデ(GⅡ)でドルトムントを破っていました。アメリカのGⅠ戦は2014年以来、5勝目となります。

 

 

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