エクセルシオ、和と洋のコラボレーション
演奏会のレポートで当ブログを訪問されている方には初めて告白することになりますが、小欄は4月初めに急病で入院。その間のコンサートを棒に振ってしまいました。
昨日は退院して初めての、4月としても最初の演奏会に出掛けました。病み上がりの身には相応しい内容と思ったもので・・・。
コンサート会場は横浜市栄区の区民センターで、愛称「リリスホール」。私は初めて本郷台に降り立ちました。本郷台は京浜東北線で大船の一つ手前、この路線は私の通学・通勤路線でしたが、この駅は多分初めてです。
湘南の山間を切り拓いた街で、駅の周りには高層マンションが立ち並びます。モダンなのかレトロなのか、チョッと取り留めのない印象を持つ風景でしたね。コンサートは以下のもの。
モーツァルト/弦楽四重奏曲第14番ト長調K387「春」
幸松肇/弦楽四重奏のための「東北地方の4つの民謡組曲」
~休憩~
幸松肇/弦楽四重奏のための「日本列島民謡の旅」
ヴィヴァルディ/ヴァイオリン協奏曲集「四季」より「春」と「夏」
ピアソラ(幸松肇編曲)/弦楽四重奏のための「ブエノスアイレスの四季」より「秋」と「冬」
クァルテット・エクセルシオ
今年結成20年を迎えるエク、今年最初の、というか20年シーズン最初の単独コンサートでもあります。
リリスホールはすり鉢の底に舞台がある様な作りで、客席の一列一列が階段で区切られる構造。音は恐らく階上にまで良く届くと思われ、見る方は通常のホールより前の席が低く、実に舞台の見通しが良いもの。どんなに背の高い方が前に座っても邪魔にならないという利点があります。
会は先ずクァルテットの定番たるモーツァルトからスタート。久し振りに聴くナマ演奏に感慨深いものがあります。特に387はハイドン・セットの中でも最も好きな作品だけに、楽章が進むにつれどんどんと演奏に惹き込まれていきました。正に病からの癒しには、これほど相応しい音楽は無いでしょう。
このあとからはコンサートのタイトルでもある和と洋のコラボレーション。今年のスピーチを務める吉田有紀子ヴィオラが司会を務めながら進行します。
休憩を挟んで前後に演奏されたのは、弦楽四重奏博士として知られる幸松氏の日本民謡アレンジ。後半の開始には幸松氏自身にインタヴュー、作曲の経緯と今後について語られました。
切っ掛けは石井志都子氏(日フィルでよく聴きましたっけ)のからの依頼だつたというのも驚きですが、これまで3集12曲を仕上げ、今回のために書き下ろした1曲も以て最後にしたいとか。そう言わずにもう少し続けてくださいナ。はい、拍手!
ということで今回取り上げられたのは、これまでの3集から演奏会の主旨に合わせて組み替えたもの。具体的に曲名を書き残しておくと、
「東北民謡」集は1.さんさ時雨(第1集の第1曲)、2.南部牛追い歌(第2集第2曲)、3.最上川舟歌(第3集第3曲)、4.会津磐梯山(第2集第4曲)。
「日本列島」は1.箱根八里(第3集第1曲)、2.よさこい節(今回のための書き下ろし、世界初演でしょうか)、3.おてもやん(第2集第3曲)、4.ソーラン節(第1集第2曲)の順。
途中で大友肇チェロが語っていたように、これらは単に日本民謡を四重奏で演奏できるようにアレンジしたものではなく、民謡を素材にした作曲とも言えるもの。彼らの真摯な演奏スタイルが作品に新たな輝きを加えていたと思います。
最後は四季にポイントを合わせたプログラムの締めくくりとして、イタリアとアルゼンチンの四季。ヴィヴァルディは、こういうアレンジもあったのかと思われる4本の弦によるダイナミックな編曲版(編曲者は調べていません)。
一方のピアソラは、幸松氏のアレンジによるもの。最後の冬には春の訪れを思わせるメロディーが登場し、コンサート全体を締め括りました。
アンコールが一つ、幸松作品から八木節(第2集第1曲)。前後に掛け声も入る楽しい作品で、やはりこれが最大の拍手を集めていました。
全体は2時間20分ほど。本郷台までは乗車時間だけで50分と遠く、座っているだけ(吸われるだけましだろ、と叱られそうですが)でも体力を消耗します。
軽い気持ちで出かけたコンサートでしたが、内容はタップリ、やはり体力の衰えを感じてしまう午後でした。もっとリハビリしないと今後のコンサートは覚束なくなるぞ。
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